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だから僕は人間を辞めた  作者: プリン伯爵『虹色魔導師は目立ちたく無い』発売中!


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第15話 嘘と銃口

蛍の部屋はどこぞの工場かと思えるくらいに様変わりしていた。

至る所に見たこともない機械が設置されており、寝る場所すらないように見える。


「おいおい……どこで寝てるんだよ」

「寝ていない」

頼んでからずっと眠っていないとの事だが、本当に人間かと疑ってしまうな。


「とにかく兵器が完成するまで僕はここでお前を守るぞ」

「勝手にしろ。邪魔だけはしてくれるなよ」

そう言うと蛍はまた作業へと戻った。

ストイックな男だ。


絶対にこのビルには新人類を入れさせやしない。

僕はライフル片手に窓から外を眺める。


眼下に見えるのは煙が立ち昇る光景ばかりだった。

夕焼けが少しだけセンチメンタルな気分にさせてくれる。


誰かの為に、誰かの役に立ちたい、そんな思いから始めた便利屋業。

今や便利屋どころか人類存続の為に、世界の為に役に立とうとしている。


ギャンブルにのめり込みろくな人生を送ってこなかった僕だが、やっと誰かの役に立てると思うとこの為に生きてきたのだろうかと考えてしまう。


正直長良と出会えたのは奇跡だった。

彼女も彼女なりの理由があったのだと思うが今となってはどうでもいい。

長良と出会えてなければ、今頃眼下で逃げ惑う民間人の一人だっただろう。



理沙もあの時助けただけの関係だったが、今では庇護欲からか彼女も守りたいと強く感じている。

恋、というやつではない。

単純に理沙のような純粋な人間は守るべき存在だ。



僕には両親がいない。

幼い頃に事故で命を落とした。

あまり覚えていないがあの時も確か自動運転の車が突っ込んできて、僕を庇って亡くなったはずだ。

そう思うと新たな技術や科学の発展は必ずしも良いものとは限らないのではないだろうか。



「おい」

僕が黄昏れていると不意に蛍から声を掛けてきた。


「ん?どうした?」

「このビルに近付く新人類が二体いるぞ」

なんだって?

いやそれよりどうやって知ったんだ?


「これを見ろ」

「これは?」

「新人類に必ず埋められているチップの位置を表示させるレーダーだ」

蛍から投げ渡された物は四角いタブレットだった。

こんな物が存在するなんてな。

僕はチップを埋められているんだろうか。

もしそうなら、今このレーダーに映っているはずだ。


恐る恐る画面を覗くとこのビルに近付く二つの点。

僕は画面に映っておらず少しだけホッとした。

長良は僕の身体にチップを埋めなかったようだ。



「これって何処かに売ってるのか?」

「そんな訳があるか。俺が作ったやつだ」

まあ、そうだよな。

こんな物売られてたら新人類がプライバシーの侵害だなんだと騒ぎ立てていただろうし。


いや、待て待て。

蛍はシレッと言ったがこれって凄い発明なんじゃないのか?


「これってさ……どんな仕組みなんだ?」

「言っても分からんだろうお前には。……チップから発せられる微弱な電磁波だけを拾う仕組みだ」

分からないと言いつつもわかりやすく教えてくれる蛍はやはりいい奴だ。

僕にも理解できるように掻い摘んで説明してくれる所、優しい奴だよほんと。


「お前の出番だぞ」

「そうみたいだな。ちょっと行ってくる」

僕はライフルを構えながら部屋を出た。

廊下には誰もおらず、既に殆どの住人が避難しているようであった。

この辺りの避難場所となれば軍事基地か、もしくは地下シェルターだろう。

大きなショッピングモールとかだと大体地下に巨大な避難場所を設けている。

核戦争が起きた時に備えて用意されていた設備が、まさかここで使われるとは思わなかっただろうな。



エレベーターで一階まで降りると、丁度二人の新人類がビルの中に入ってきたタイミングだった。


「ん?何だお前は」

「人間……ではないな」

やはり僕が人間だとは思われていないらしい。

同志がどうしてこんな所にいるのだと二人共首を傾げている。


「あー、ここは僕が見ておいたよ。誰もいなかったから出ようとしてた所なんだ」

「なに?そんなはずはないだろう。ここに人間が何人か籠もっていると通信があったじゃないか」

「えっと、僕が来た時にはもう居なかったから多分入れ違いで逃げられたかもしれない」

「有り得ん。ここにいるのは人間の中でも特別扱いされている男だ。確実に捕まえろとボスが言っていただろ」

不味いぞ、話を合わせられない。

多分こいつらの言っている人間というのは蛍の事だ。

発明という分野においては一目置かれているそうだし、恐らく人間の中でも殺害せずに捕まえろと指示が出ているようだ。


「いや本当だって。僕が信じられないか?」

こうなったらとことん演技で彼らをよそにやるしかない。

僕は構えていたプラズマライフルを見せつけた。


「それは……何だ?レーザーライフルにしては少し形が違うようだが」

「これは新人類研究所から盗んできた物だ。一般には出回っていない武器だぞ」

「研究所から……?待て、お前どこのグループに所属している。デルタか?アルファか?」

「デ、デルタだ」

やばいぞ、グループの名前なんて分からない!

当てずっぽうだが当たったか?


「デルタか……なんでそんなエリートがこんな俺達のエリアにいるんだよ」

「それだけ重要人物だからだろ。僕も命令を受けただけだからな」

ふう、なんとか話は繋がったみたいだ。

それにしても緊張するな。

迂闊な事を言えば二人と戦う事になるだろうし、僕は自慢じゃないが戦闘には向いていない。

喧嘩すらまともにした事がないんだ。


理沙が攫われた時よくあの男と戦えたもんだよ。

女の子の前だったから、ってのも大きいのかもしれないな。


とにかく彼らを追い出せればそれでいい。

すると二人のうち一人が僕に話し掛けてきた。


「おい、デルタだったら識別番号くらい教えてくれないか」

識別番号……だと。

そんなもの知らないし、新人類には一人ずつ番号が割り振られているのか?

僕が黙っていると流石に怪しいと思ったのか一人が銃を向けてきた。


「怪しいぞお前。大体デルタの連中がこんな所に居るはずがない。今頃軍事基地を潰しにかかっているはずだからな」

デルタってグループは精鋭集団ぽいな。

軍事基地を攻めるくらいだから戦闘型新人類かもしれない。


「クソッ!先手必勝!」

もうこれ以上は嘘を突き通せないと判断し僕は銃を構えている男に向けてプラズマライフルの引き金を引いた。


風切音と共に男に着弾したプラズマ弾は、簡単に貫通にビルの壁すらを突き破った。


胴体に空いた穴から遥か後方まで見通す事ができ、あまりの威力に僕は言葉を失った。



やがて胴体を貫かれた男はそのまま倒れ動かなくなった。


「な、何してくれてんだお前!」

「そっちこそ!人間を誰彼構わず襲いやがって!」

もうなりふり構っていられないと僕は再度引き金を引き、発射する。


またも風切音と共に男の身体に穴が空いた。


威力が大きすぎるとは聞いていたが、新人類を貫き、ビルの壁を貫き、外に止まってある車も貫き、そのまた後ろにあるビルの壁をも貫いている。

確かにこれでは認可は降りないのは当たり前だ。

威力が大きい以前に、使い勝手が悪すぎる。


それに二度発射したからかエネルギーは半分を切っていた。


「燃費悪すぎるだろ……」

四発撃てばエネルギーは空になる。

念の為エネルギーパックは複数個持ってきてはいるが、これでは集団で襲い掛かってこられたら太刀打ちできない。


まあいい、とにかく危険は去った。

新人類を一撃で葬る事もできると分かった事だし、当面は安全だろう。


ただ、プラズマライフルだけでは心許ないなと、僕は倒れて動かなくなった彼らの銃を奪い、蛍の部屋へと戻って行った。

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