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第23話 年末に集う家庭を省みない遊戯者たち

―― 西暦2056年 12月31日 ――


 所謂いわゆる、大晦日であり、多くの者達が自宅や実家で年末の番組を眺めている一方で、運営を含めて不明瞭な部分の多いアクション型RPGにはまり、身内との時間よりも趣味を優先させた者達が続々と仮想世界に没入ダイブする。


 二十余名に及ぶ彼らは怪物に喰い殺される臨死体験もいとわない稀有けうな猛者であり、その転移先は旧市街から数キロほど進んだ地点、過去に放棄された屋外変電所を飲み込んだ森の付近であった。


『さて、 皆も集まったようだし、ブリーフィングを始めるね』

『総員、傾聴けいちょう!!』


 瀟洒しょうしゃな鋼鉄のドレスをまと小さな女王(パルムレギナ)の宣言に応じて、副官を勤める騎士の械人カイジン断裁乙女ハルバード” が全員に注意を促せば、仲間同士で語り合う雑多な声が鳴りを潜め、一瞬の静寂が生まれる。


 耳を澄ませる者達の中には、汎用型AIの現身アバターたるクリムと融合を果たし、大爪付きの追加装甲を右腕に備える黒犬ブラックドッグの姿もあった。


ずは今年最後の日にせ参じてくれたともがら達へ感謝を! 狙うは第三次鉄樹の森攻略戦で煮え湯を飲まされた “刃翼持つ人型の巨獣”、ヴァルバドの首一つ!』


『『『うおぉおおぉ――ッ!!』』』


 既に第四次攻略戦ということで… 因縁や想い入れのある古参も多いのか、湧き上がる喊声かんせいに包まれた黒鉄の械人が面食らい、並び立つ白銀の械人と肩をすくめ合う。


 仮面の下で苦笑を浮かべた二人は初参加(ゆえ)の温度差も仕方ないと受け入れ、周囲の静まりなど待って続けられる女王の言葉へ意識を戻した。


『前回、持ち回りで助攻じょこうに入ってくれたギルド、“ねこ鍋商店街” や、“宴華えんか” と複数方向から仕掛けるけど細かい取り決めはなし、早いもの勝ちね。ただ……』


 戦力の逐次ちくじ投入を避けるため、互いに漁夫の利を求めて足踏みするのは止めようとだけ、事前に取り決めたと械人姿の乃亜は言及する。


 他にも幾つかの留意事項が伝えられた後、半歩進み出た断裁乙女ハルバードの独断と偏見で組分けが行われ、戦力的均衡が取れているとおぼしき四人一組の六個分隊が作られた。


『状況開始! 第三及び第四分隊は旧変電所の一次側送電線、第五と第六分隊は二次側送電線へ進出、十分後に第二と第一分隊が中央の変圧器に向けて出立する!!』


 号令一下、騎士鎧を思わせながらも、淑女しゅくじょ然としたフォルムのボディアーマーを着込んだ械人が声を張り上げれば、古参の者達が其々《それぞれ》の仲間を取りまとめ、課された役割を果たすべく動き出す。


『お嬢達の囮ということで… 第三分隊、出るぞ!』

『こっちの露払いもよろしく、うちらは後塵こうじんを拝するからね』


『なるほど、俺達も第六分隊の後続にまわるか』

『…… 早くいけよ、決められた通り』


 銘々《めいめい》に軽口を叩き合い、総勢十数名の械人らが分隊単位で森に突入していく。


 彼らの後姿を黒犬ブラックドッグの仮面越しに見遣みやりつつ、想像よりも組織立った統制のある様子に対して、史郎は密かに感心の吐息を漏らした。



―― 参考情報 ――


通称:パルムレギナ(広瀬 乃亜)

分類:貴人系

武器:連発式のデリンジャー

技能:定位反射による状況把握・高速思考

特技:自身を媒介とした情報網の構築

位階:第一段階


通称:ハルバード(鈴宮 琴音)

分類:機人系

武器:戦斧

技能:腕力及び脚力の強化

特技:直接触れている無機物の質量改変

位階:第一段階

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