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第10話 鴨が葱を背負って来た

『くっ、ちょっとは成長したと思ったのに… 褒めて損したわ!!』

『ッ、すまない、分かったから耳元で怒鳴るな』


 仮面の内側に響く、五感の一部が共有されたAI少女の金切り声に眉をしかめ、どうどうと暴れ馬相手のようにいさめるかたわら、械人カイジン状態の史郎がパラメータを見直す。


 全体的に腕力、敏捷性、耐久性も向上しているが、数字だけ眺めても実感はともなわないので、身体を動かそうと一歩を踏み出した。


 直後、イヌ科並みである黒犬ブラックドッグの聴覚が “飛翔音” を捉えたかと思えば、その頭部を穿うがたれて凄まじい衝撃に脳髄まで揺さぶられ、堪え切れず綺麗な新月を仰ぎながら真後ろへ倒れてしまう。


『はぇ、なんで私達、いきなり瀕死なの!?』

『う… あぁ……』


 早々たる敗北と強制ログアウトの危機にあせって、わちゃわちゃと械人カイジンに融合しているクリムが戸惑うも、まったくって状況は好転しない。


 一方、荒野にたおれた獲物を自身に備わった “遠視” の技能で眺めていた狙撃手、遠隔戦闘に特化した “姿なき狩人(インビジブル)” は小首をひねり、現化量子の光となって散らない相手をいぶかしんでいた。


『通称 “黒犬ブラックドッグ” ね、公開情報に記載のある補助AIは見当たらないが… クリームヒルトか。何で、ヘッドショットを喰らったのにまだ消えないんだ?』


 耳通りの良い、所謂いわゆるイケメンな声で仮面越しに呟き、鋭角的な印象を受けるフォルムの部分装甲でおおわれたボディを隠すように、黒のロングコートを羽織った男が顎先あごさきに触れて、疑問を解消すべく思案する。


 しかし、それは数秒ほどで済み、至極単純な理由に帰結したらしく、ひとり廃ビルの角部屋で誰にも見られず、渋い表情を浮かべた。


『要するに死んでないんだな、珍しいこともあるもんだ』


 幾つかの関門を越えて、UnderWorldへ辿り着いたビギナーが最初のログインで飛ばされる場所の一つ、そこに網を張ってローリスク、ローリターンで少額の仮想通貨を奪いつつ、今まで経験値稼ぎしてきたものの過去にない事例である。


 狙撃のおりにボクシングでいうヘッドスリップのような超絶反応を見せていたので、恐らくは威力の一部を受け流して、即死の致命傷を避けたのだろう。


 まぁ、いい勉強の機会になったと言い訳して、仕留め損なった獲物の心臓にアメリカ製の狙撃銃を向け、無造作むぞうさに引き金をしぼり込んでいく。


『これで終わりだ、お前も遮蔽物しゃへいぶつのないところで、まとごとく突っ立てるのが危険だと勉強になっただろう? 感謝してくれよ、新人さん』


 姿なき狩人(インビジブル)に与えられた固有の特技 “無音結界” によって、半径10メートルの静寂を崩すことなく秒速600mの弾丸が放たれ、確実な勝利をもたらそうとするが……


 ほぼ同時に黒犬ブラックドッグ身動みじろぎ、腕楯の代わりとなる大爪付きの追加装甲をかざして、そのふちで紙一重ながらも襲い来る凶弾をしのいでみせた。




―― 参考情報 ――


通称:インビジブル・ハントマン(鳥井 道真)

分類:機人系

武器:大口径ハンドガン・狙撃銃

技能:遠視・銃弾生成(一日の生産数に制限あり)

特技:無音結界(固有)

位階:第一段階

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