桜色トマホーク
これはけして一目惚れではない。
「いや、お前それ何に対しての言い訳なんよ?」
「言い訳じゃないやい。純然たる事実なんよ」
「や、別にいいけどさ。その、いつも同じバスになるOLのお姉さんだっけ?」
「そそ。凛とした表情でいつもスマホいじってて、なんかできる人オーラ醸し出してて恰好いいんだわ」
(いや、うん?ネタツイの眺めてるだけかもしれんやろ?ホントこいつ大丈夫か?)
「そっかそっか。まあ別にいいんだよ。でも何で気になりだしたんだっけ?」
「6月23日にお年寄りに席を譲ってるところを見て、何かいいなぁって」
「俺お前から話聞いたの春ぐらいなんだが?」
「四半期は誤差」
「でかくね!?10代の四半期でかくね!?」
「誤差」
「……そっかー。10代のお前がそういうならいっかー」
「それぐらい誤差じゃないと、社会人のお姉さんとか無理だわー。でさ、今度話しかけてみようと思うんだよ」
「また随分積極的だな?」
「俺、顔良いからな!結構イケる気がするんだ!」
「お、……おう。事実かもしれんが顔面殴っていいか?」
「やめて!?告白が遅れちゃう!」
綺麗な顔じゃないと告白できないんかーい。
「当たり前だよ!名前も知らない状態で、頼れるのは見た目だけなんだよ!」
「それもそっか。悪かった」
「殴らないなら別にいいよ」
「すまんな、遅らせて」
「殴りはするのか!?」
「殴るのもやめたげるわ。でもさ……、言っちゃなんだけどお前前好きだったの、誰だっけ?」
「みーちゃんだね!今はどこかで幸せに過ごしてたらいいと思うんだ……」
「うん、俺も知ってる。幼稚園の年長で一緒だった子で、小学から別だったよな」
「どこかで幸せに過ごしていたらいいと思うんだ!」
「ほぼほぼ初恋じゃねーか!?お前の自信どこから出てんだよホント!?」
「ほら、俺顔いいから!」
「クッ、こいつバカだからってそれ根拠で爆進できるのマジ羨ましいんだけど!」
「背中越しにね、熱い視線を感じる時があるんだ!きっとお姉さんも気にしてるんじゃないかと!希望!」
「希望なのか」
「見てないからね!でも使えそうな根拠はトコトンかき集めるよ!肝心な時に動けなかったら悔しいからね!」
このピンク色した脳みそ野郎め。まあ、春になって、花が咲いて。
芽吹いて、葉が茂って、樹木が太くなるもんなんよ。揺るぎないね。倒れる気配がしないね。
ちなみに俺は友達を売ろうか姉を売ろうかで悩んでいる。
……ああ、どっちも売っても売らんでも、これ結論変わらんわ。
ちょっとそこのワシントン君、そこの斧取ってよ?え、ムリ?そっかー。