城
美佳がまわりと違うと思い出したのは幼稚園のときからだった。なぜか周りと歩調が合わなかった。みんなが友達と一緒にままごとをしている時も、美佳は一人で、砂場で城を作ったり、木陰で絵本を読んでいたりした。当然のように、美佳は周りからいじめられた。周りの子供たちは自分が作った城を壊された。でも、美佳は何も言わず、何回壊されても城を作り直した。自分の大事なものを自分の手で作るように。
美佳はそのころから寝るとき、ベッドの横を馬や猿や象を見るようになった。それらは美佳にやさしく語りかけた。
「ねえ。美佳。今日はなにをして遊んだの?」
「今日はね。砂場で城を作ったの。窓のいっぱいあるお城。」
「そう。美佳は砂でお城を作るのが好きね。」
「うん。好き。」
「わたしたちは美佳の友達よ。」
また、美佳には大事な親友がいた。父親が誕生日に買ってくれた犬のぬいぐるみのサーシャだった。サーシャは賢く、いつも美佳にアドバイスをくれた。
「ねえ。美佳。周りの人とは、友達のふりをするの。ふりをしないと、あなたには「死」が待っているの。」
「ねえ。サーシャ。「死」ってなあに。」
「「死」は永遠の眠り。もう起きられなくなって、ご飯をたべたり、私とお話したりすることもできなくなるわよ。」
美佳はそれを聞いても、「死」はべつに怖くないと思った。サーシャとおしゃべりできないことは悲しいけど、幼稚園の子たちと一緒に何かをすることはもううんざりだった。