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平井のエッセイ・歴史系

NAISEIの行方~伊達稙宗とかいう逆行転生者の顛末~

作者: 平井敦史

初投稿です。よろしくお願いします。

 NHKの番組「英雄たちの選択」。毎週欠かさず、というほどではないですが、ちょくちょく観ています。

 2021年11月17日の放送で取り上げられていたのは、独眼竜(どくがんりゅう)伊達政宗(だてまさむね)曽祖父(ひいじいさん)に当たる伊達稙宗(だてたねむね)という人物でした。何となく名前を聞いたことはある、という程度であまり詳しくは知らなかったのですが、すごい人物だったみたいですね。


 福島県の伊達郡桑折町(だてぐんこおりまち)にある桑折西山城(こおりにしやまじょう)。存在自体は知られていたものの、生い茂った木々に隠されてごくごくありふれた中世の山城跡だと思われていたのが、近年になって発掘調査が進み、すさまじく時代を先取りした城だったことがわかってきたそうです。関東の雄・北条氏が築いた山中城などに顕著にみられる畝堀(うねぼり)という技法(空堀の途中に土を盛って敵兵の移動を妨げる)が使われていたりとかね。千田(せんだ)先生相変わらず楽しそう。

 山中城の築城が1560年代、稙宗が桑折西山城に居を構えたのが1530年代ですから、30年ほど先行しているわけです。


 それだけではなく、従来の山城は(いくさ)の時に立て籠もるためのもので普段は麓の館で生活するのが普通だったのを、城の本丸に館を構えてそこで生活し政務を執る形式にするとか、領内各地にそれぞれの拠点を構えていた家臣たちを城下に集め、城下町を形成するとか、信長が推し進めたようなことをこれまた30年ばかり先取りしていたのです。


 桑折西山城を本拠に選んだ(それ以前の本拠は福島県伊達市の梁川城(やながわじょう))ことについても、築城自体は鎌倉幕府成立前後まで遡るようですが、奥州街道と羽州街道の分岐点に位置する交通の要衝であり、要害堅固さよりも経済・流通を重視するという視点を持っていたようです。


 それから、稙宗は「塵芥集(じんかいしゅう)」という分国法(ぶんこくほう)も制定しています。

 当時、戦国大名たちの中で、自分の領国の中だけで通用する法令、いわゆる「分国法」を定めた人は少なくないのですが、その中でもこの塵芥集は条文数171ヶ条と、群を抜いています。その内容たるや、確かに大事だろうと思われることから、え、そんなことまで?と言いたくなるような細かいことまで、ありとあらゆることが詰め込まれています。中には落とし物センターの定めなんてものまであったりして微笑ましいです。


 まあそんな具合で、色々と時代を先取りした(し過ぎた?)人物で、さらには確認されているだけでも21人もの子をもうけ、その子たちを近隣の勢力に嫁がせたり養子に入れたりして精力を、もとい、勢力を広げました。

 成人した子だけでその人数! 何人の妻妾を抱えていたのかはわかりませんが、ハーレムにも程があるだろ。


 何だかねぇ。お前どこの逆行転生者だよ、と言いたくなる気持ちもご理解いただけるのではないでしょうか。

 そう、「なろう」の歴史カテゴリでお馴染みの、現代人が歴史上の人物に転生して……というアレですよ。

 まあ、石鹸や清酒を作ったり椎茸を栽培したりはしなかったようですが。


 しかし、番組を見ながら、「城下町の形成とか、信長の時代の東海や畿内で社会的な土台ができていたからこそ可能だったことで、この時代の東北地方でやって上手く行くのかよ」などと思っていたら、やはり軋みは生じていたようで、稙宗は息子の晴宗(はるむね)および彼を担いだ家臣一同に背かれ、東北一円を揺るがす「天文(てんぶん)の乱」と呼ばれる大乱を引き起こしてしまい、最終的には隠居を余儀なくされます。

 そのきっかけは、越後上杉氏との提携を強引に進めようとしたことだったようですが、それまでの稙宗の先進的すぎるやり方への反発も大きかったのは間違いありません。


 やはり、戦国時代に逆行転生したとしても、時代背景を無視して先進的すぎるNAISEIを導入し無双するのは難しいのだろうな、と思った次第。

 皆様も、万が一戦国時代に逆行転生なさった際にはお気を付けください。


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― 新着の感想 ―
[一言]  太閤立志伝Ⅴでめちゃめちゃ時間をかけてスカウトに行った記憶が……!  伊達家のかたがたはパラメータが高くて、伊達家とか相馬家がうまい具合に滅ぶと仕事放り出して駈けつけてました。
[良い点] 『信長の野望』で、伊達稙宗が出てきましたがね。 あれは、どう考えても時代逆行転生チート野郎でした。 すっげぇ助かりましたけど。 最後まで、僕が直卒する部隊には加えていましたけど。 ゲーム内…
2021/11/20 08:44 退会済み
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