表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミック2巻発売中】おつかれ聖女は護衛騎士と逃亡生活を満喫する ~今度は聖女をやめてみます!~  作者: ゆいレギナ
第三部 プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/117

初恋の思い出×俺のプロローグ③


 婆様が死んだ。

 それは俺が十七歳、ナナリーが十五歳の時。俺が修道院に行った時は、あんなに元気そうだったのに。それでも齢八十八歳。大往生だったといえるだろう。


 当然、聖騎士見習い中の俺は、訃報を受け取れるはずもなかった。

 気を利かせてくれた自称天才魔導士シャナリー=ガードナー(ナナリーの妹)の遠隔通信により、連絡を受けて。葬儀の日、俺は堪らず修道院を抜け出した。


 葬儀は厳かに行われていた。婆様の知人というのが、全国各地から集まったらしい。その数三百。下手したら国家レベルの葬儀規模に驚いたものの……身を隠すには申し分ない。列席者の隅で、ただただ婆様の冥福を祈ろうとした時――祭事をあげるため、聖女が墓の前へと歩み出る。遠くからでも、見間違えるはずがなかった。


 身長も小型ながら伸びていた。体躯が細いのは相変わらずで、髪はますます伸びたと思う。白と金の豪奢な聖女の正装が、とてもよく似合っていた。本当に、神の御使いであるかのように美しい少女。


 ナナリーだ。


 彼女の祭事は、齢十五歳とは思えぬ堂々たるものだった。天から舞い降りる光の雨は、雨空すらも押しのけ、婆様の墓をあたたかく照らしていた。その幻想的な光景を目の当たりにした為政者たちは、次々と『ぜひ国家聖女に』と言葉を漏らす。


 そうか、ナナリーはちゃんと……。


 婆様を前に、俺が約束を違えるわけにはいかない。

 誰にもバレないように。親にも声をかけずに、その場を後にしようとした時、俺は見てしまった。下がろうと振り返った彼女の目が、空虚だったことに。


 それは、慕っていたおばあさんが死んでしまったゆえか?

 それとも――――


 俺はフードを目深に被って、彼女が退席していく列の最前列へと潜り込む。そして、虚ろなナナリーが俺の前を通り過ぎようとした瞬間――その自然と揺れていた手を一瞬掴んだ。


「おつかれ」


 掛けた言葉は、それだけ。すぐ、手も放す。

 だけど、その一瞬で目を見開いたナナリーは、


「うん」


 と、それだけ答えて、前を歩く司教のあとについていく。

 だけど、俺の目はしっかりと捉えていた。


 彼女の宝石のような瞳に、再び光が宿ったことを。

 涙を必死に堪えようとしていた、十五歳らしい横顔を。


 そして、俺は反対の方向に歩き出す。

 そう遠くないうちに――彼女の隣を歩くのは自分だと、そう誓いを胸に秘め。


 ♢ ♢ ♢


 そして現在。

 俺は知らない場所で目覚めた。


 そばにいたのは白く長い髪が目を引く、俺より少し年下の女。

 なぜこんな田舎臭い場所にいるのか、思い出そうとすれば、頭が痛む。


「貴様は誰だ?」

「……はじめまして。私、ナナリー=ガードナーといいます」


 その白髪の女が、泣きそうな顔で笑った。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ