悪党達が住まう村✕正直に敵う嘘はなし
その後……は本当に語るまでもないだろう。
凄惨に笑う騎士モドキが高らかに目の前のもの全てを斬り刻み、したたかにほくそ笑む聖女モドキが幻覚の炎で全てを燃やす――既視感なんか気にしちゃあいけない。
てなわけで、阿鼻叫喚の中で粗相してしまった(ばっちかった……)領主さんから、合法的に物資と人手を分けてもらいました。帰りは久々にソファ付きの馬車に乗ったなぁ。荷車には積みきれないほどの物資を乗せて。もちろん貴金属も少し分けてもらってきたよ。売ったらお金になるからね。
「でも、なんかやりすぎた気がする」
「今まであの悪徳領主が巻き上げすぎていた税金を還付してもらったと考えれば、妥当な額だと思いますよ」
「そう……かなぁ?」
でも(珍しく)馬車の中で隣に座るイクスは、金ピカの王冠を手で弄びながらニヤニヤと笑っていて。
……まぁ、イクスがそう言うなら、いっか。
無理やり納得した私はあくびをする。
「俺の膝はいつでも空いてますよ?」
「……肩だけ貸して」
「ご遠慮なさらなくても」
……うっさいやい。
それでも私は眠いから、たくましい腕にもたれかかり、目を閉じる。
イクスは眠くないのかな……ふと浮かんだ疑問を掻き消すためにも。
そして、私はイクスに肩を揺さぶられて起こされる。
うっすら目を開けると、扉窓から眩しい光が差し込んでいた。だけど日の高さから、まだ夜が明けたばかりなのだろう。
珍しいな。イクスだったら、何も言わず眠っている私をお姫様抱っこで運びそうなものなのに……などと、我ながらどーなんだろうという予測を脳内に留めつつ、イクスに尋ねる。
「どーしたの?」
「はっ、お休みのところ申し訳ございません。村が少々騒ぎになっているようでして」
イクスに促され、馬車を降りれば。
場所は村の入口付近。そこで荷馬車含め、我ら忠実なる村人たちがなけなしの武器(というか農具や家事道具?)を持った住人たちに追いやられている様子。
「出てけ! 害がないうちは様子見てたが、子供を傷つけられたとなったらさすがに無理だ! 全員野垂れ死んだとしても、賊なんかの慈悲は受けないっ!」
「今更どーいう風の吹き回しだが知らないけど、見ての通り金目のモノなんて何もないの! これ以上わたしたちから何を奪おうというのよぉ‼」
そう叫ぶお母さんは、眠い目の擦りながら呆然としている女の子を必死に抱きしめていた。その女の子の腕にはよれよれの包帯が巻かれている。あの子……そんな怪我してなかったはずだけど?
とりあえず、このまま見ているわけにもいかないよね!
「あのすみません! 一体どーしたんです……」
「この大嘘吐きめっ!」
何かが飛んできた――と思ったときには、イクスの背中に鼻をぶつけていて。「申し訳ございません」という声が降ってくるけど、私は足元にコロンと転がった石を見逃さないよ。
「イクス、大丈夫?」
「そんな柔にできちゃいませんよ」
「怪我は後でね」
そう言い残し、私は無理やりその女の子へ近づいて。「やめて!」とそのお母さんが子供を隠そうとするけど、私は女の子のそばで屈み、手を握りながら一言答えた。
「私は聖女です」
「え?」
お母さんの腕が緩んだ隙に「ごめんね~」と血の滲む包帯を外せば。そこには刃物が掠った傷。跡と呼ぶにはまだ生々しい赤さに眉間に力が入れば、後ろから忠実なる村人の一人が涙声で行ってくる。
「おらの剣が当たっちまったんでさ……。日中の役人追い払ったときの、他の男の子らが見てたみたいで……それで、夕飯時もう一回見せてと言われただ、おら調子乗っちまって……うしろから近づくその子に気がつかねーで、ちょっと……」
「ちょっとじゃありませんっ!」
お母さんの悲痛な叫び声に、その盗賊さんがビクッと肩を竦める。
……そうだよね。盗賊さんも悪気はなかったんだよね。ここ数週間、私たちから脅されている抜きにしても、一生懸命働いてくれてたもん。でも……いつかはこうなるような気はしてたんだ。
だから、私は唱えるの。
「ナナリー=ガードナーが慈しむ者に、祝福を」
そして、女の子の腕がまばゆい光で包まれるのは一瞬――光が止んだときには、傷は跡すらも残っていない。優しく患部を押して「痛くない?」と尋ねれば、女の子はこくんと首を縦に振ってくれた。
それに笑みを返してから、私は立ち上がる。そして深々と頭を下げた。
「嘘を吐いて申し訳ありませんでした。私の名前はナナリー=ガードナー。アルザーク王国国家聖女を務めていた者です」
その発言に、息を呑むのは村人たちだけではない。盗賊さんたちもまた「そんな偉い人だったんけ?」と唖然としている様子。……ただ一人、剣を地面に置き、私の隣で頭を下げた専属護衛を除いては。
「俺の名はイクス=レッチェンド。ナナリー様の専属護衛を務めている者だ。この度は騙すような真似をして、大変申し訳なかった」
私たち二人の謝罪になかなか返ってくる言葉はなかった。
それもそうだろう。いきなり国家聖女ですなんて言われても……それこそ証拠なんて、今使ってみせた白魔法くらいしかないんだもん。まぁ、川や井戸の水なんかも、ある意味証拠っちゃ証拠なんだけど。
そんな気まずい空気を打ち破ったのは、私が治癒して女の子だった。
「せーじょさまは、あたちたちを助けにきてくれたの?」
「……ううん。違うよ」
もしもそうだったら、素敵な美談になるんだろうけど。
実際は違う。“この村のため”なんてのは大義名分だ。本当は……自分勝手な理由で、私はこの村を私が過ごしやすいように改築していたに過ぎない。
「私はね、聖女のお仕事から逃げてきたの」
短期連載おわったので(下記にリンク貼ってあるので宜しければどうぞ!シニカルチート家政婦令嬢と聖女な生贄王子くんの恋愛モノです)、こちらの連載を再開します。お待たせして申し訳ありませんでした。
しばらく週2〜3回更新を目標にストック作っていく予定です。どうぞ宜しくお願いいたします!





