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共闘!土の神殿 第一話

 マルグリットが仲間に加わり、メンバーは四人と一匹となった。

 巫女の姿のマルグリットとはうってかわり、動きやすい服装に変わった彼女はまた雰囲気が違うように思えた。

「また外に出られるなんて夢みたい! 人間の世界って見たことないものばっかで超面白いよね! 個人的に!」

 うっきうきしながら語るマルグリット。風の神殿で出会ったときとはやはり人格が違う。

「マルグリットさん、もっとお淑やかで厳格な方だと思ってましたけど……ずいぶん雰囲気が違いますね」

 リムが戸惑いながらもおずおずと述べる。

 マルグリットは前をずんずん進みながら、あはは、と苦笑した。

「妖精の国ではそれなりの立場だからね。いろいろ作法とかあるんだけど……そういう堅苦しいのは元々苦手なの」

「なるほど」

 親しみやすさが出てきたのか、リムは表情を柔らかくした。

「お姫様だって、人間の代表だからもっと怖いヒトかと思ってたけど、ぜんぜん、あたしと同じようなふつうの子なのね。ま、そういう偏見ってやっぱだめだよね!」

 マルグリットはそういって日溜まりのように笑う。

 その言葉にリムははっとした様子で、目を開き、そして微笑んだ。

「そうですね、そういう偏見が、きっと人間と妖精の間にあるのです」

「妖精同士だって同じようなものだよ。こういう問題は、どこまでいったって追いかけるしかないのかな……って、個人的にそう思う」

 マルグリットはそう最後に付け足した。

「マルグリットさんは遠くを見据えているのですね」

「マルグリットでいいよ。あたしもみんなのこと、セト、リムって呼びたい。えっと、で、そこのヒトは……」

 マルグリットはラズロを見てそう言いよどんだ。ラズロはあまり発言していないので彼女の中では印象が薄かった。

 ラズロは気を悪くした様子もなく、

「私のことはラズロと呼んでください」

 と微笑んだ。

 その微笑みに、マルグリットは釘付けになり、足を止めてラズロに顔を近づける。

 同じように立ち止まったラズロは少し身をひいた。

「私の顔に、何か?」

「いいや……あたしから見ても綺麗だなーって思う」

「そうですか。褒めていただけるのは嬉しいですけれど、まあ、自分的には苦手な言葉ですね」

「そうなの? 綺麗だねって人間は嫌がるのか……」

「人間全部がそうではありませんよ。大概の人は嬉しいでしょうけど」

「ふーん?」

 マルグリットは首を傾げた。

「そうじゃ。ラズロ、おぬしに風の友から贈り物を預かっておったのだ」

 ラズロが背負う鞄にいつの間にか挿してあった水色の花をくわえて、彼の目前に差し出した。

「贈り物、ですか? セトやリム様ではなく、何故私に……?」

 言いながらも素直に花を受け取る。水色の小さく可憐な花だ。

 それを見てマルグリットは、目をきらきらさせた。

「守護神さまに花を贈られるってすごいことだよ。この旅が終わったら巫女になれるかもね!」

「これは巫女になるための選定という意味だったのですか?」

「そういうわけじゃないけど。ラズロ、しっかしりしてるし、巫女になっても大丈夫そう」

 突然のスカウトにラズロは苦笑しながら首を振った。

「巫女というのは女性が就く役割のものでは? 男の私には務まらないと思いますけど」

 そういうと、マルグリットは目をこれでもかと大きく見開き、さらには開いた口がふさがらないようだった。

 その反応に気付いたセトはうんうんと頷く。

「確かに、俺もだまされたもんな」

「お、男なの……!?」

 マルグリットはわなわなと震えている。そしてその震えを止めるように自分を抱いた。

「人間って恐ろしい……!」


「ラズロが特殊なだけで、人間は怖くないですよ」

「私だけ異常みたいな説明は誤解が生まれます」

 マルグリットは若干ラズロに苦手意識を抱いたようだったが、リムがそうなだめるように説明し、それに鋭い補足をするラズロ。

 リムとマルグリットは仲良く二人並んで前を進んでいく。

 二人の背中を見ながら、少し微笑んだラズロの姿をセトは見逃さなかった。

「嬉しそうだな」

 小さく、ラズロにだけ聞こえるように言う。

 その言葉にラズロはきょとんとした顔をしたが、自分の頬の緩みを自覚したのか、すぐにまた同じように微笑んだ。

「ええ。リムさまがたくさんの新しいことに出会い、見識を広く持つことは喜ばしいことです」

「ふーん?」

 難しいことを言うんだな、とセトは思った。

「そのきっかけを下さったのはセトとの出会いがあったからだと、私は思いますよ」

 優しい声色に感謝をのせて、ラズロはセトに言った。

 セトはそれさえも首を傾げた。

「もともとはとても引っ込み思案で、人見知りで……あんなに小さかったリムさまが、優しいまま、こんなに立派に育っていくとは……」

 ラズロのまなざしは懐かしさと親愛の熱をもつ。

 涙ぐむラズロの背中をセトはバシン、と容赦なく叩いた。

「!? 一体何をするのです」

「はじめて会ったときより、リムが変わったのはよく分かる。でもそれは、ラズロも支えてきたからだと思うぞ。これからだってそうだろ?」

 至極当たり前のことのようにセトは言った。

 ラズロははた、と足を止めた。

 セトは自分の言いたいことが言えて、満足した様子で先をゆく。

 ラズロは三人の背中を見つめながら、寂しそうに微笑んだ。

(私は、あなたたちほど真っ当な人間ではないのですよ)

 自嘲するように思いながら、彼らの背中を追いかけた。


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