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ガルデ村!少年少女の淡い夢 第二話

 椅子に座るのは女性と、ラズロとリムの三人だけだった。家に入る際、ラズロはまたセトが口を滑らせるのではないか、と懸念し、先ほど歩く卵焼きがいましたよ、と嘘をついて外に閉めだした。現在セトは村で歩く卵焼きを探している。

「病気がはじまったのは黒い雲が村に現れ、日の光がなくなってからすぐです。魔王が世界を脅かしていた五年前までと同じ。またあの魔王のせいで、村が……」

 女性は涙ぐんで訴えた。

「この村には魔法が使えるものがいる、という噂を聞きました。それは本当ですか?」

 ラズロが聞くと、女性はびくりと肩を震わせた。目を丸くして、し、と口に人差し指をあてる。

「彼は魔王の手下かもしれません。もし聞かれていたら、殺されてしまうかも……」

 その瞳は恐怖に怯えている。どうやら噂はほんとうのようだった。

 ラズロとリムはお互いに顔を見合わせて息を呑む。セトが城で出会ったという青年かもしれない。

「その青年は今、どこに?」

「迷いの森の入り口に彼の家があります。あんな不気味なところ、ふつうの人間だったら気が狂ってしまいます」

 その声色には嫌悪感も含まれている。セトが変な感じがする、といっていたのを思い出すラズロ。

「なるほど。病気と彼は関係があるかもしれません。私たちが調査しましょう」

「そんな、危険ですよ。魔法が使えるんですよ。しかも、こんな恐ろしい病気まで蔓延させて……」

「五年前も、彼はこの村にいたのですか?」

 リムはふと疑問を投げかける。

 女性はこくりと頷いた。

「はい。それに、その子の母親も一緒に暮らしていました。ある日、村の子供たちが彼を遊びに誘ったんです。そのときに、突然強い風が吹いて、その子供たちに怪我をさせたんです。おそろしい風だったと、それを見ていた人も言っていました」

 憎むような表情で女性は語った。

 リムは神妙な表情でそれを聞いている。

「その、彼は村にも来るのですね」

「母親が亡くなってしばらくは村までおりてきていましたが、この五年間は見ていませんね。ですが、森で見かけることがあるようなので、生きてはいるようです」

「なるほど」

 と、そこで、部屋の奥から苦しそうな咳が聞こえてきた。

 女性がすみません、と立ち上がり、部屋の奥へと入っていく。

 しばらく待っていた二人だったが、戻る気配がないため、心配そうな顔でお互いに目を合わせた。そして、意を決したように同時に頷く。迷わずリムとラズロは立ち上がり、悪いと思いつつも部屋をのぞき込んだ。

 部屋の中にはベッドに横たわり、苦しそうに顔を歪めた少年と、悲しそうに看病をする女性の姿があった。

「あ、すみません……この子も、心細いみたいで……」

「非常に顔色が悪いですね。熱もあるように見えます」

 ラズロが部屋に入ってきて、少年を心配そうに見つめた。

「ずっと下がらないままで……咳もたまに苦しくなるほど続くことがあって……一体、どうしてこんなことに……」

 女性は目を潤ませて、少年のベッドに顔を伏せた。

「お母さん、お母さん」

 か細い声で、少年が母を呼んだ。

「なあに、どうしたの?」

 母親は顔を上げ、すかさず返事をした。

 手を虚空にのばし、少年は弱々しく笑って呟く。

「あのね、この病気が治ったらね、ニノヒ村の竜を見に行くんだ……お母さん、一緒に竜を見に行こうね……」

「……えぇ、良くなったらね」

 慈しみを込め、悲しみを伏せ、母親は少年の髪を優しくなでる。すると少年は、少し表情が和らぎ、すやすやと寝息をたてた。

「……ごめんなさい。ここにいたらあなたたちも病気になってしまうかもしれません。早く村から出て行った方が良いと思います……」

 女性は振り返らず、二人に言った。

「分かりました。大変なときに押し掛けてしまい、申し訳ありません。息子さん、良くなることを心から祈ります」

 リムはそう言うと、細く力を失った背中にお辞儀をした。

 二人は静かに家を出た。

「彼に会いましょう。説得すれば、病気を治す方法も教えてくれるかもしれません」

 リムの決意は固まったようだ。

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