第5話 2020年3月27日 日経平均株価先物
俺は完全にCFDにハマっていた。
ちょっと日経平均先物が吹き上がったら、すかさずCFDで売りを入れて値下がりを待つということを繰り返していた。
日本政府というか日本銀行は株式買い上げによる株価維持オペレーションを連日繰り返しているようだったが、日銀以外は海外の投資家も含めて売り一色で、俺は売り建をする度に利益を積み上げていた。
CFDが扱う商品はいくつかあるが、俺はその中でも最もメジャーな日経平均先物指数をターゲットにしていた。
もちろん、アメリカのダウやイギリス、ドイツの株価指数も売り買いはできるし実際に何回かは売り買いしてみた。
だが、何せ情報が取りにくいので日本からの参戦では売り買いが一歩遅れるのと、値段が動きやすい時間帯は時差の関係で日本の深夜や明け方になるので、自然と日経平均先物のみで勝負をするようになった。
日経平均、正式名称は日経平均株価、は東京証券取引所の第一部に上場する約2,000銘柄を代表する225銘柄の平均値で算出される。
とても有名なので国の指標なのかと思っていたのだが、どうやら日本経済新聞社が発表している指数ということらしい。
そして、俺はその先物を主戦場としていた。
先物と聞くと眉をひそめられることが多いし俺もかつてはそうだったが、実は日本発祥の歴史ある取引ということだ。
原理は簡単で、ある時点の商品(俺の場合は日経平均株価)の値段を決めて売り買いする、ただそれだけだ。
江戸時代はこれが米でやられていた。
例えば、3月の時点で9月の米の値段を決めて、それを売り買いする。
豊作になると思えば安値で商品購入を予約し、不作になると思うなら高値で予約する。
これが現代では米以外にもトウモロコシやじゃがいも、原油などの実在するものから株価指数なんて実体のないものまで売り買いできるというわけだ。
実体のないものを売り買いしてどうするんじゃい!なんて疑問はもちろんあるが、現物の株を持っているけど値下がりしそうな時に先物を売ることでリスクを最小化するというのが正しい使い方らしい。
これが投資。
俺の場合は現物株のリスクヘッジではなく、ただ単に金儲けの為だけに先物指数を売り買いしているので投機を行っていることになる。
そして、この投機は莫大な利益を生み出していた。
CFDを始めてからわずか一週間で100万円を俺は稼ぎ出していた。