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株破滅日記  作者: ロン・イーラン
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第2話 2020年3月13日 ストップ高

予想通り3月13日朝の寄り付きは大幅安になりそうだった。

俺は朝ご飯のトーストを食べつつも、スマホから目が離せなかった。


朝8時から株の各銘柄の気配値(けはいね)が出て、9時になると開場して取引が始まる。

俺の資金の大半を投じているダブルインバースはストップ高になるかもしれない。

ストップ高とは、相場の過熱を防ぐ為に値幅制限があるのだが、それの上限いっぱいまで株価が上昇することだ。

ほぼ勝ちは確定しているのだが、実際に値段が確定するまでは安心できない。

もう食事の味がしなくなってきた。

これが味覚障害って奴か。


「ハル、テレワークって何時から始めるの?

 スマホばっかり見てるけど、9時には始めないといけないんじゃないの?」

妻の美奈が仕事に行く準備をしながら言う。

ベージュのパンツスーツを着て、鏡を見ながらセミロングの黒髪を整えている。

年齢は俺と同じ35歳だが、見ようによっては20代後半でも通じるかもしれない。


俺が「んん」みたいな生返事をしていると少し呆れたような声でこう続けた。

「テレワークって言っても仕事なんだから、首にならない程度にやんなさいよね。

 私、そろそろ仕事に行くから。

 茂のことよろしく。」


息子の世話を頼まれたが、最早それどころではない。

ダブルインバースがストップ高になれば、今日一日だけで100万円の利益が出る。

買った時の値段からすると200万円の利益だ。

月給とは比較にならないくらいの大金を手にすることになる。

息子のことは、本当であれば保育園に放り込んで一人優雅に過ごしたいところではあったが、昨今のコロナ騒ぎでテレワークの時は家で過ごさせることにしたのだ。

隣の和室にいる息子に目をやるとプラレールで遊んでいた。

しばらくは放っておいて大丈夫だろう。


9時になった。

開場だ。

値が動き始める。

俺のダブルインバースは板情報(いたじょうほう)に『特』の文字が点灯した。

大量の買い注文が入っているという意味だ。

まだ、始値(はじめね)が付かない。

9時1分、2分、、、9時5分を過ぎた頃、始値が付いた。

前日より+1,000円、ストップ高だ。


俺はスマホを握りしめながらダイニングテーブルから立ち上がり雄叫(おたけ)びを上げた。

一撃、100万円だ!!

いつの間にか(そば)にいた息子が俺の雄叫びにビックリして泣き始め、俺は現実に引き戻された。

息子をあやしつつ、会社のノートPCを開いて社内ネットワークにアクセスし、かつスマホで株価をチェックするという忙しい朝をスタートさせた。

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