8 「桃色コスモス」始まる ②
黒木 百合が壇上から発する一言一言に、俺は引き込まれていた。
話の内容はありきたりで、普通なら途中で余所見の一つでもしてしまいそうなものだが、話し手が彼女であればどうだろうか。
余所見をする者は誰一人としておらず、皆が彼女の言葉を聞き逃すまいと壇上に熱のこもった視線を向けている。
流石は、発売前人気投票というヒロインのキャラがいまだ断片的な中で、他の6人のヒロインを押しのけ1位を勝ち取り、見た目の存在感と魅力はヒロインの中でも群を抜いてると多くのエロゲ紳士に評されるだけはある。
俺も思わず『この世界で彼女以上に美しい存在などないのではないか』などと考えててしまうほどに美しい。
そうして、彼女に見惚れながら話を聞いていると、彼女の話が終わり、壇上を降りる彼女に代わって、ヒロインの一人にして隣国オステオの王女、太陽の輝きを秘めたかのような金色の長い髪に雪のように白いカチューシャを添え、空のように透き通った蒼の瞳を持つ色白のエルフ、セレナ=オステオが新入生代表として立っていた。
セレナ=オステオは先ほどまで壇上に立っていた黒木 百合の妖艶な雰囲気とは打って変わって、とにかく清楚な雰囲気を醸していた。
作中でもよく対の扱いを受けていた彼女たちだが、こうして「桃色コスモス」の世界が現実となり、その存在を間近に感じる今では、彼女たちの性格や醸す雰囲気だけでなく、存在そのものが対局であるように感じ、この世界が現実であることを改めて証明されたかのような気分であった。
そうして考えごとをしている内にどうやら話が終わったらしく。セレナ=オステオが壇上を降りようとしていた。
「これで長ったらしい入学式も終わりか、まっ、俺は可愛い子を見て目の保養ができたから、もう少し続いてほしかったぐらいだけどな」と、翔が声を掛けてくる。
「いいから外出ようぜ、隣の席ってことはクラス一緒だろ、これから、クラスごとに教室に移動だから遅れるとどやされるぞ」と言って立ち上がる。
案内をする教師の声に従い、先輩に座席を案内された際に渡された紙に書かれていたクラスである主人公と同じ1年A組の教室に向けて
「可愛い女子が多いといいなぁ」
「清々しいぐらいに煩悩に塗れてるな」
「いや、男は、むっつりすけべかオープンすけべ、二つに一つだ!煩悩に塗れてない奴なんて男じゃない」
「謎に、含蓄のあることばだな、それ」などと、少しばかり下世話な会話を交わしながら、主人公の友人キャラの翔と教室へ向かった。
少し会話を増やしてみました。良し悪しなどのご意見いただけると参考になります。