4 希望を見つけました
この世界に転生して初めての夜を、俺はただベッドに蹲り、絶望を抱え迎えようとしていた。
グーーッとお腹が鳴る。どれだけ絶望しようと怒ろうと人は腹が空くようだ。
「そういえば、この世界に来てからまだ何も食べてなかったな。」と言い立ち上がり、冷蔵庫を探す。
「「桃色コスモス」の世界観はエルフやドワーフ、魔法なんかはあるけど、プレイした感じ地球とそう変わらない文明だったしあると思うんだけどなぁ」
そう、この世界はそう言った一部のファンタジー要素こそあれど基本的に現実世界と変わらず電気もあればガスもあり、この世界に住む人々の暮らしは、俺の前世の暮らしと変わらない。寧ろ、魔法がある分この世界の方が豊かというものだ。
そうこう考えながらも、冷蔵庫を見つけると考えるのを一旦止め「よかった、あったか」と呟き胸をなでおろす。
食べ物が少しでもあればいいがと思い冷蔵庫を開ける。
「うげっ!飲み物しかないじゃん。というか冷蔵庫にほぼ何も入ってないじゃん」どうやら伊月 凛桜は自炊する事がないらしいことが一目で分かる。
「仕方ない外でなんか食べ物を買って来るか。」と言って外に出る準備をしようとすると、ふとあることに気づく。
「あれ、そう言えば俺って、今お金持ってんのか?」慌てて部屋を漁るとカバンを見つけた。そのカバンを開けるとそこには財布や筆記用具にいくつか教科書のようなものと、通帳が入っていた。
「財布か、それに通帳も入ってる」そして財布と通帳の中身を確かめる。
「おお、結構入ってるな。2万4千円か。流石は現代ファンタジー、通貨の表記も日本と変わらないな。それに通帳の方を見たところ1千万円程もあるし、寧ろ前世よりも持ってるな。まあ、通貨の価値が変わらなければの話だけど」とぼやき。携帯を開きコンビニが近くにないかを調べる。どうやらこの家を出て100m程のところにあるらしく、近いなと思いながらも携帯をしまい外に出る準備を終え家を出ると、2分程
でコンビニに着く。
コンビニに入ると、そこは東京にあるコンビニとさほど変わらない様子だった。商品の価格を見るに、この世界における通貨の価値は日本とそう変わらないものであった。『これなら当分は生活には困らなそうだ』と思いながら缶詰やサラダをかごに入れレジまで運んでいると、あるものが目に入った。
「ジャ○プ?嫌これは流石にアウトだろ!」そこには某有名少年誌ジャ○プによく似た雑誌が並べられていた。どうやら「桃色コスモス」でオマージュネタで出た少年ホップはこの世界では実際に存在するらしい。そしてここであることに気づく。もしかしたらこの世界にもゲームは存在するのかもしれないと。
興味本位でかごに少年ホップを追加して会計を済まし。家に帰る。
家に着いて直ぐに買ったものを開け、食べ終える。どうやら自分が思っていた以上に飢えていたらしい。
「明日は入学式か」携帯を見ると日付は4月6日。明日は「桃色コスモス」が幕を開ける入学式の日であった。幕を開けるコスモス学園での日々、そしてゲームがこの世界にあるかもしれないという事実に胸を躍らせながら。少しの希望を抱いて、ベッドに横になり、携帯でゲームを調べながら俺の異世界生活1日目が
終わりを迎えた。