16 ゴミなんかじゃない
「何言ってるのぉ、私なんかのためにぃムキにならないでよぉ」と七嶋 ナズナが俺に縋り付いてくる。
それを躱して「別にムキになってるわけじゃないですよ」と答えると同時に部室棟から、彼女に今回の嫌がらせをした三人が出てきて「おいおい、うるせぇから来たら、面白れぇことになってんなぁ」と口を開く。
どうやら、先ほどの会話は聞かれていたようだ。
「あのぉ私は、そのぉ」と彼女がたじろぐと「別にお前のこのゲームなんてゴミだろ。なら俺が処分しといても問題ないよな」と言って、三人組のリーダーらしい男がゲームのディスクを折り曲げて壊す。
それを見て彼女は「そうだねぇ、ゴミだからぁ問題ないよぉ…」と俯いて言う声は震えている。
彼女のその声を聞いて、笑い声をあげながら「ハハハッ、そうだよなぁ。きもい奴がきもいの作ってんじゃねえよ。ゴミが増えるだけだ」と言って、折り曲げたディスクを彼女の足元に捨てる。そして彼の言葉に反応して「本当だよな」「おい、泣いてんぞ、見ろよ」と取り巻きの二人が言う。
「おい、」と彼女が我慢しているのを見て耐えていた翔が口を挟もうとするが、それより大きな声量で俺が「おい、ふざけんなよお前ら。俺の話聞いてたんじゃなかったのか」と言うと「なんだよ、さっきそのゴミに価値がどうこう言ってた奴か」とこちらに睨みを利かしてくるが、気にせず続ける。
「聞いてたんだろ、だったら分かんないかな。お前ら三人も七嶋先輩も。俺はそれに価値があることを証明するって言ったんだ。それはゴミじゃないって言ったんだ。なのにお前らはゴミだなんだ言って、壊しやがって。決めた、お前ら全員ゲームを舐めてるみたいだから、教えてやるよ。俺が、ゴミだって捨てられたそれを、多くの人から認められるものにして、見せてやる。ゲームの凄さを」そう言い切ると
「なんか、お前のせいで白けたわ。帰るぞ」そう言って三人組は帰っていく。
三人組が去って、少しして翔が口を開く。
「お前どうすんだよ、あんなこと言って」
「そうですぅ。どうするんですかぁ」
「まぁ少し言い過ぎたかなぁと思うところもあるけど、俺は本気だ。まず先輩が作ったゲームってどんな感じか知りたいんですけど、仕様まとめたものとかありますか」
「仕様書ならぁ。バッグにぃありますぅ」
「今日一日借りてもいいですか?」
「はいぃ。これですぅ」
「ありがとうございます。じゃあまた明日話しましょう」
「今日はぁ、ありがとうぅ」
「じゃあ、翔帰るか」
そう言って、学園を出ようとすると「リオ君たち大丈夫?」と主人公藤咲 百花が来る。
「藤咲君、何時から居たんだ」
「百花でいいよ、リオ君たちが部室棟から出て来る少し前から居たんだ」
「部室棟になんか用があったのか?」
「いや、リオ君たちと一緒に帰りたいなと思って、探してたんだ」
「そうか俺たちも今から帰るから一緒に帰るか」
「うん、ありがとう。それにしても、意外だね。リオ君があんな風に言うなんて、あんまり怒らなそうなイメージだから」
「まぁ、人に向けてあんな風に怒ったのは初めてだな。それにしても、そんな風に思われてたのか」
「うん」
「おい、お前ら俺を無視するな!」
そう話しながら俺たちは帰路についた。




