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今日もパン屋さんに出勤。
はわぁ〜。焼きたてのいい匂い。
「おはようございまーす。」
「おはよう、アキラ。ちょっと試食してくれないかしら?」
ふおおぉ〜。これは、マルガリータ⁈
教えてないのに、この組み合わせにたどり着くなんて・・・おそるべし、ザックさん。
一口食べて
「おいし〜い。やっぱりこの組み合わせ最高〜!」
言いながら食べてると、
「味は悪くないと思うが見た目がなぁ。葉っぱがのってるようにしかみえないからどうにかできないかと思うんだが・・わかんなくてな。」
「あぁ、そーですねー。バジルもソースにしましょう!」
「できるのか?」
確か、バジルと塩とオイルだっかな?ニンニクもいったっけ?なんかの実があるようなないような・・覚えてないからいーや。
ただ、ミキサーがないからなぁ。
「できるかわからないけど、試してみましょうか。」
バジルの葉を刻んで、すり鉢で擦り潰していく。擦り潰したバジルに塩とオイルを少しずつ入れていく。分量がわからないので、見た目や味を確認しながら作る。サラッとしてると、上からかけた時に流れて、味も色もなくなりそうなので、少しもったりしたとこでやめる。
うーん。こんな感じかなあ。
「ザックさん、これで試してみてください。」
「あぁ。」
早速、バジルソースをかけて焼いていく。
いい匂い。
焼き上がったのを見て、
「これなら、見た目もいんじゃない?」
「そうだな。アキラ、ありがとう。」
「この組み合わせを考えたザックさんが凄いですよ!尊敬します!」
「ふふふ、よかったわね、ザック。新しいパンもできたし、お店開けましょう!」
マーサさんがニッコリ。
「はい!」
新作パンを楽しみにしていたお客様が、買っていってくれる。噂をきいて買いに来る人も多く、とても忙しい。お昼を食べる時間もなく、夕方早めにお店を閉めた。
「はあー。忙しかったですねー。マーサさん大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ。」
椅子に座った途端固まった。
「どうしました?」
「ごめんなさい。粗相したみたい。恥ずかしいわ。」手で顔を覆ってる。
「えっ?粗相?」
見ると、椅子の下に水たまり。もしかして、
「マーサさん、粗相じゃなくて、破水じゃないですか?着替えましょうか?ザックさん、産婆さん呼んで下さい!」
固まってたザックさんが慌てて、
「すぐ戻るから、マーサを頼む。」
出て行きます。
どうしたらいいんだっけ、保健の授業で習ったけど、覚えてない。とりあえず、着替えて、横になってもらってたらいいかな?
ここも掃除しなくちゃ。
「アキラ、ごめんね。」
「大丈夫ですよ、マーサさん。階段上がれますか?横になっててくださいね。すぐ産婆さんもくるし、ザックさんがいますからね!安心して下さい。もうすぐ赤ちゃんに会えますね。」
不安にならないように、話しかけます。
ザックさんが、産婆さんを連れて2階に上がっていきました。
あとは、おまかせして、掃除をします。
私にできることは、
母子とも無事でありますように。
安産を祈ること。
気になるので、家に帰れないなぁ。
お昼食べてないから、お腹空いてるし、ザックさんは食べるどころじゃないだろうから、このままお店の厨房で、スープでも作ってよう。
勝手にある野菜を使って多めに作ります。
産後で疲れてても、スープぐらいなら食べれるよね?
作って食べて片付けて・・することがなくなると、落ち着かない。
それでも、待つしかできない。
どれくらい経っただろうか。
オギャーオギャーと声が聞こえてきた。
産まれた!
よかったー。
安心したら、そのまま厨房の机に突っ伏して寝てしまった。
不覚・・・
朝まで寝てしまい、ザックさんに起こされました。
「おはようございます。すみません、寝てしまって・・あっ、ザックさん、おめでとうございます!マーサさん大丈夫ですか?男の子?女の子?
」
「おはよう、アキラ。男の子だ。マーサも元気だ。」
「よかったぁ。あっ、スープ作ったんです。マーサさん疲れてても、スープぐらいなら飲めるかと思って・・勝手して、ごめんなさい。」
「いや、助かるよ。ありがとう。今日は、休みだ。2人に会ったら、家でゆっくり休んでくれ。」
「はい。ありがとうございます。」
スープを持って2階に上がります。
「マーサさん、おめでとうございます。お疲れ様でした。スープ飲めますか?」
「アキラ、ありがとう。昨日から、食べてないから嬉しい。見て?ソラよ。」
ソラくんは大人しく寝てます。
「可愛い〜。ソラくん。はじめまして、アキラだよー。よろしくね!」
プニプニしてる〜。
長居してもいけないから、お暇します。
「そろそろ帰りますね。ゆっくり休んでくださいね。」
お店を出て、家に帰ります。
はぁ〜、可愛いかったなぁ。赤ちゃんってあんなに可愛いんだー。
いつか私も・・・って、相手いないんだわー。
考えてもしょうがない。
家帰って、もう一眠りしよう。