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「あの、お2人は、お知り合いなのですか?」
「いや、俺は知らない。初めて会うが、俺を知っているのか?」
「ええ、顔を合わせるのは、初めてですね。本当は、顔を合わせるつもりはなかったんですが・・・あなたが、あまりにも情けないというか、見ていられないというか・・・」
「なっ、何を言っている?おまえは、誰だ?なぜ俺を知っている?」
「私のことはノアと呼んでください。あなたの兄上であるレオン様の指示で隠れて護衛していました。」
「兄上の・・・」
「レオン様もフローラ様も、カイル様をとても心配されていました。ですが、アキラ様と知り合い、シャツをもらったとお知りになると喜んでいたのですが、まさか、あのような女を連れ歩き、婚約者に望んでいるとは・・・」
やれやれと首を振っている。
「はぁ?婚約者に望んでなんかいないっ!」
「本人は、言ってまわってましたよ?」
「いやっ、俺は望んでないっ!本当だ!俺が望むのはっ、その、・・望むのは、アキラだ!」
「はいいぃ〜〜⁈」
なんですとー?今なんていいました?
はぁーっとため息をついたノアさんが、
「ようやく言えましたねー。もっと早く伝えて下さいよ。こんな事は、私の仕事ではないのですが、あまりにもカイル様が不甲斐ないというか、レオン様が心配のあまりこちらにくるなどの暴走をされると困りますし、お役御免になる覚悟で、レオン様が安心するのならばと、勝手をしてしまいました。アキラ様、先程は、突然失礼しました。」
「いえ、びっくりはしましたけど、何がなんだか・・・」
「とにかく、2人で話し合って下さい。私はこれで失礼しますから。」
と、去っていく。
「アキラ、その・・話をしたいのだが・・・嫌ならいいんだ。無理「とりあえず、家にどうぞ?」
「いいのか?」
「ここでするような話じゃないですし、まだ本調子じゃないので座りたいんです。」
「すまない。」
「靴脱いで下さいね。」
キッチンで、お茶を入れて戻る。
「どうぞ。」
「あぁ、とりあえず聞いてくれるか?俺は、チェスター辺境伯の次男なんだ。兄上がレオン、姉上がフローラ。2人は本当に容姿も頭も優れているんだが、俺は見ての通り容姿も頭の出来も平凡だ。でも、うちの領地は、これと言って何もないからな。だから、何か新しい食材とかを探して、特産品を作れればと思って、領内をまわっていて、そのついでと言ってはなんだが、結婚相手も探していたんだ。いつまでも、あんなシャツは着たくないしな。」
ふぅと一息きついてお茶を飲む。
「アキラの家を出て宿屋に泊まることにした時、1週間分前払いしたら、宿屋の娘カリーナがついてくるんだ。最初は、俺の事を見てくれてるのかと思ったんだが、あれが欲しい、これを買ってとねだるばかりでな。俺じゃなく金目当てなんだと、やっぱり俺はダメなんだと落ち込んだ。だが、カリーナは言っても離れなくてどうしたものかと思っていたんだ。婚約者と言ってまわってるのも知らなかったし、アキラに手を出すとも思ってなかったんだ。」
「あなたが私に声をかけるたびに、睨んでいたのにも気付いてなかったんですか?」
「あぁ、すまない。」
「続けて下さい。」
「あの日、俺は森に行っていたから知らなくて、戻ってきたらちょうど警邏隊に連れていかれてるカリーナを見たんだ。カリーナとは、関わりたくなかったが俺の名前を叫んでいたから、警邏隊に行って話を聞いたんだ。アキラが怪我したって、男に送ってもらってたって聞いて気付いたんだ。アキラが好きだと。多分、最初から好きだったんだと思う。アキラの料理を食べて、シャツをもらって。俺の身長が低いのも、馬鹿にしなかった。
俺が気付くのが遅かったんだ。アキラを送るのも守るのも俺以外のヤツにさせたくないんだ。俺の隣にいてほしい。だけど、俺のせいで嫌な目にあったから、俺じゃダメだと思って。この街を出て次の街に行こうと決めて、最後にアキラを見れたらと思ったんだ。
街で見つけた時、男に何か渡して一緒に歩き出したから、気になってついてきてしまったんだ。すまなかった。」
・・・・・
「あの、ちょっと待ってというか、食事の準備しますね。えーと、とりあえず、はい。待ってて下さい。」
落ち着け、私!
深呼吸、深呼吸。
フゥーーー。
キッチンに行って、何か作らないと。
んー何かあったかなぁ。
パンだから、サラダと、シチューにしよう。
カイルさんは、物足りないかな。お肉・・・
生姜焼き、回鍋肉・・・ダメだ。ご飯が欲しくなる。とりあえず、ミートパイにしよう。
「お待たせしました。食べましょうか?」
「あぁ、うまそうだ。」
いただきますをして、食べる。
カイルさんは、おかわりしたので、満足そうだ。
片付けて、お茶を淹れて持っていく。
「あの、カリーナさんはどうなったんですか?」
「あぁ、カリーナは、親戚のいる街に行ってそこで、結婚する事になったよ。アキラの前に現れないから安心して。」
「そうですか。・・・あの、これ、お仕事休むのを、言いに行ってくれたお礼です。」
「いや、俺の出来る事をしただけだから・・・」
「はい。それでも、あんな顔じゃ恥ずかしくて家からでれませんでしたから。あなたが、言いに行ってくれて助かりました。ありがとうございました。」
「なぁ、聞いていいか?」
「なんでしょう?」
首をかしげてカイルさんを見る。
うっと顔を背けながら、
「なんで、俺の名前は呼ばないんだ?アイツの名前は、大声で呼んでただろう?」
ふぇっ⁈
「大声聞かれてた?忘れてー。」
「それよりも、俺の名前は?」
「えっ?知ってますよ。」
「なんで呼んでくれないんだ?」
「えっと、ナンデダロウネー?」
「まぁ、呼びたくないなら仕方ないか。じゃあ、帰るな。」
「あの、いつここを発つんですか?」
「あぁ、明日にでも発つつもりだ。」
「そうですか。・・・あの発つ前に、家にきてもらえますか。」
「わかった。じゃあ、また明日な。」
「はい、気をつけて帰って下さいね。」
翌日、
トントントン
「アキラー、きたぞー。」
「おはようこざいます。すみません。きてもらって。」
「いや、大丈夫だ。」
「仕事に行くので途中まで一緒に行きますね。」
「はは、あの時と一緒だな。」
「あの、これお弁当です。途中で食べて下さい。じゃあ、ここで。気をつけて行って下さいね!」
「ありがとう。」
街を発って、もうすぐ次の街に着くがその前に
アキラが作ってくれたのを食べようと木陰に座って包みを開けた。
サンドイッチに、唐揚げなど、カイルが食べた事のないおかずばかり。
食べ終わるころ、隠されていた手紙に気付いた。
読み終わると、顔が熱い。
まだ、まわる街はあるけど、サッサと終わらせて
アキラのいる街に戻ろう!
決意も新たに、足早に街に入っていった。




