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5 銀髪の騎士、アルベルト

 金髪碧眼の侍女、ロゼッタにうながされ部屋を出ると、祖父の遺品が入ったダンボール箱を持ってくれている銀髪の騎士アルベルトと共に、何故か赤髪の騎士ヴィットリオも嬉しそうについてきた。もはや、突っ込む気力も無いのだろう。ヴィットリオの存在を無視しながら銀髪の騎士は無言で私の左横を歩く。


 プラチナブロンドの侍女に先導され、等間隔で美しい白柱がそびえ立つ長い回廊を歩いていると一番後ろからついて来ていた赤髪の騎士が私の右横に来た。


「聖女様のことは何て呼べば良い? やっぱり『聖女マリナ様』とか呼んだ方が良いか?」


「いえ、そういうのは遠慮して頂ければ……。私、今まで生きていて『聖女』とか呼ばれたことありませんし……。普通に呼んで頂いた方がありがたいです」


「そうか……。じゃあ『マリナちゃん』で良いか?」


「はぁ、構いませんけど」


 聖女と呼ばれるよりは名前で呼ばれた方がいいと考え頷くと赤髪の騎士は、銀髪の騎士を見てニンマリと笑った後、私の顔をのぞきこんだ。


「マリナちゃん」


「なんでしょうか?」


「アルベルトくらいの年齢で童貞ってマリナちゃんも、ヤバイと思うだろう?」


「ッ! 貴様、ヴィットリオ!」


 再び、童貞ネタを持ち出された銀髪の騎士は怒りで目元をヒクリと引きつらせたが何分、アルベルトさんは私が持って来た祖父の遺品がたっぷり入っているダンボール箱を持っているせいで両手がふさがっていて、口以外は出すことができない状態だ。そんな状況を完全に把握している赤髪の騎士はアルベルトさんに対してドヤ顔を浮かべている。


「マリナちゃんからも言ってやってくれないか? アルベルトは堅物の奥手だから、いつまで経っても童貞を卒業できないんだ……」


「貴様、マジで黙れっ!」


 ひたいに青筋を浮かべて怒気を隠せない銀髪の騎士をチラリと見やると、赤髪の騎士は芝居じみた大げさなリアクションで、ため息を吐きながら哀しげに顔を横に振った。


「俺はアルベルトが娼館に行って、玄人のお姉さんに童貞を卒業させてもらうのが一番てっとり早いってすすめてるんだが、コイツは頑として娼館に行かないんだ。困った奴だよ……。俺は親友としてアルベルトが童貞をこじらせてるのが心配なんだ」


「……娼館というのは女性が男性に、性的なサービスを提供する所ですか?」


「そうそう! 色々とサービスしてくれる場所だよ!」


「ヴィットリオさん……。もう、それ位で……」


 先頭を歩いていたロゼッタが眉をひそめて赤髪の騎士をやんわりと注意したが、当のヴィットリオは全く意に解する様子もなくウキウキとしている。


「……私の世界にも、そういうサービスを提供するお店はありました」


「お、そうなの!?」


「もっとも、中に入ったことはありませんので詳しい内容まではよく分かりませんが……。有史以来、酒とそういう性的なサービス業というのは廃れたことがないと聞いたことがありますが、やはりこの世界でもそういう職業があるんですね」


「うんうん。やっぱ男はどの世界でも女性のお世話になるもんだよな! ほら、聖女様もこう言ってるんだし、アルベルトもさっさと娼館に行って童貞を捨てるべきだって! マリナちゃんだって童貞より、俺みたいに経験豊富な男の方が良いって思うだろ?」


「いえ……。私は、必ずしも経験豊富な男性が良いとは思いません」


「え」

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