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21 身分違い

 しばらくしてからロゼッタは控えめな水色のドレスに着替えて戻ってきた。少し、目が充血していて彼女が人知れず涙を流していたのが分かってしまった。


「マリナ様。さきほどは見苦しい光景をお見せしてしまって、大変失礼いたしました」


「ロゼッタは全然、悪くないんだから頭を上げて。それにしてもロゼッタは第二王子の幼馴染みだったのね?」


「はい。私の母が第二王子、レナード殿下の乳母だったのです。その関係で幼少期からレナード殿下と顔をあわせる機会がありまして……。乳母をしていた母が数年前に他界してからは、母を亡くした私をレナード殿下が心配して下さるようになり……。それが余計、リリアンヌ様の逆鱗にふれてしまったのでしょう」


「そういう事情があったのね……。ロゼッタ、あなたレナード王子のことを?」


 私の言葉を受けて、プラチナブロンドの侍女は力無く首を横に振った。


「もし仮に私がレナード殿下をお慕いしていたとしても、身分違いですから……」


「身分違いって……。ロゼッタも貴族で伯爵令嬢じゃない」


「さきほど、マリナ様もご覧になられた通り、私は貴族と言っても曾祖父の代では平民だった家系です。由緒正しい血統というわけではありません」


「そんなこと……」


 個人的にはそんな物に絶対的な価値観を見い出すことはできない。公爵令嬢リリアンヌが選民思想によって自分の主張を上から一方的に押しつけていたけど、血統で他者を蔑むような心を持つ人の方がさもしいと思う。


 ロゼッタが公爵令嬢の一方的な意見によってそういう思考にいたったと言うなら、あんな言葉は気にすることはない。そう自分の考えを述べようとした時、プラチナブロンドの侍女は視線を床に落とした。


「それにレナード殿下にはリリアンヌ様という婚約者がおられます」


「でも。庭園で見た感じでは、レナード王子は公爵令嬢リリアンヌのことが好きそうな雰囲気はなかったわよ?」


「マリナ様……。宰相閣下の一人娘である公爵令嬢リリアンヌ様と第二王子レナード殿下がもし婚約を解消することになれば、今度は第一王子ディルク殿下とリリアンヌ様が婚約する可能性が出てきます……。そうなれば、王位継承争いはデュルク殿下が有利になるのです。レナード様の将来を考えれば、このままリリアンヌ様とご結婚されるのが望ましいのです」


 水宝玉色の瞳に影を落としながらロゼッタは淡々と状況を説明してくれた。確かに王位継承問題を優位にすることを最優先に考えるなら、宰相の一人娘である公爵令嬢と結婚するというのは大きな意味があるのだろう。


 しかし、このまま公爵令嬢リリアンヌと結婚するのがレナード王子にとって本当に幸せなのだろうか? それにロゼッタのことを思えば、このままで良いとは到底思えなかった。

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