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16 政略結婚

「ディルク殿下が禁書を持ち出して『聖女召還』に踏み切ったのは第二王子、レナード殿下と公爵令嬢リリアンヌ様の婚約が決まった影響が大きいでしょうね……。このまま手をこまねいていては、宰相陣営が第二王子派に回るのは目に見えています。この劣勢を覆すために聖女を召還して、王位継承争いを優位にしたいという思惑があったと考えられます」


「なるほどね……」


 私を聖女として召還した第一王子の状況や思惑が分かると、こちらとしても思うところがある。さしあたって私に出来ることは、この世界で使われている文字の習得になるが、今後は言われるがまま唯々諾々と従うだけでなく情報収集をしたりすることも必要だと感じた。


 そんなことを考えていると公爵令嬢リリアンヌは後方で控えている侍女らしき茶髪の女性を呼んで、自身が花壇から積んだ複数の白ユリを渡す。大輪の白ユリを受け取った侍女は一礼して下がり、建物へと向かった。きっと摘んだ白ユリを花ビンに生けるのだろう。


 なんとなく茶髪の侍女が行った方向に目を向けると、私が滞在している客室と同じ方角だということに気付いた。まぁ、第二王子の婚約者である公爵令嬢付きの女性と一緒の方向に行くからといって別段、何もないだろうが。庭園では相変わらず第二王子が浮かない表情で、一方的に話しかける公爵令嬢に相づちを打つのに疲れている様子だ。


「ねぇ。もしかして、公爵令嬢リリアンヌと第二王子の婚約は『政略結婚』ってやつなの?」


「私も詳細は存じませんが……。宰相閣下の働きかけで、国王陛下がお決めになったと聞いております」


「ああ、やっぱりそうよね。第二王子はずっと公爵令嬢リリアンヌといても楽しそうじゃ無いものね。公爵令嬢の方は表情が明るいけど……」


 そこまで言った時、にわかに強い風が吹き雲が太陽の光をさえぎり、庭園に大きな影を落とした。さらに突風によって庭園の高い木々が波のような音を立て、花壇の花々や地上の芝生が激しく揺れた。


「マリナ様。そろそろ、戻りましょう。……風が強くなってきて危ないわ」


「え? ええ」


 私たちがいる渡り廊下は横壁こそ無いが、天井はある。仮に雨が降っても濡れることはない筈だ。しかし、プラチナブロンドの侍女、ロゼッタは険しい顔で歩を早めたので私も慌てて後を追った。


 もしかして、突然の落雷を恐れているのだろうか。異世界にある中世ヨーロッパの城といった雰囲気の建物に避雷針が設置してあるとは思えない。庭園やこの近くに落雷があれば、周囲にいる者達は感電によって大ケガを負ったり最悪、死んでしまうだろう。

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