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聖女候補は、イヌ(悪魔)を飼う  作者: ゆいみら


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君が一番護るもの2

 

「俺に頼み事があるんだろう」

「え、ええ」

「魔王を頼るとは、よっぽど切羽詰まっているようだな、神官長ネーヴェ」

「は、はあ」


 玉座に座り、足元に膝を付くネーヴェ達を見やり、レイはニヤニヤとヒトの悪い笑みを浮かべた。


「ちょっと!偉そうに言ってるけど、あなたね!深紅嫌がってんでしょ!」

「そうだぞ、恥ずかしいんじゃないか?いや、見てるこっちが困るんだがなあ」


 橙とデュークさんが抗議の声を上げてくれて、私も頷く。


「レイ、ほら離して。隣座るから!」


 私はレイの膝の上に横座りさせられていて、お腹に手を回されて抱き締められた状態でもがいた。


「俺はこれでいいの。ふっ、一度やって見たかったんだ。いいから大人しくベタベタしてろ」

「いやあ、皆見てるから!」


 レイは、見せつけるように私の頬をペロリと舐め、キスをした。

 ディメテル国のタリア様と王様が、こんなだったね。レイ君、羨ましかったんだね。


「ネーデルファウスト様、事態は深刻です。いずれこの魔界も」

「うちはうち。よそはよそ……はあはあ」


 ネーヴェ様が、眉を下げて話しにくそうにしているのに、レイ君……なんで私の耳元ではあはあ息を荒げてきてるのかな。あ、足触ってるよ。スカートに手を入れるのはあかんでしょ!


「………深紅、大丈夫?本当にこんなヒトと結婚して平気なの?」


 橙が真面目に心配してくれて泣きそう。


「う、ありがと。平気じゃないけど大丈夫」

「おい、こんなヒトって…え、平気じゃない?」


 レイは不服そうだけど。


「……嬢ちゃん、幸せか?そいつのこと、ちゃんと好きか?」


 デュークさんが優しく聞いてきて、鼻がつんとなる。


「うう、幸せです……レイが好きで好きでたまらないよお」

「はううっ!レティ!俺も俺も!」

「うわあん、余計離してくれなくなったあ」


 どうしてだろう。何がいけなかったのか、レイはでろんでろんにベロベロに私の顔を舐め回しちゅうしまくる。


「すまねえ、嬢ちゃん。余計なこと聞いちまったな」


 激しいレイのスキンシップに、デュークさんは、そう言ってそっと目を逸らしてしまった。


 **************


「はあはあ……よし、俺は満足だ。本題に入ってやる」


 しばらくしてから、最後に頬に何度目かのキスをして、レイは私を持ち上げて隣の豪華な椅子に座らせてくれた。

 橙達の視線が辛い。


「だいたいのことは把握しているが、お前の口から状況を聞いてみたい。今アテナリアはどうなってる、ネーヴェ?」


 足を組んで、片肘をついて、レイはキリッとした表情をした。片手は私と繋いでいるけどね。


「アテナリアは……もう国として機能していません。異世界から再び来た護により、国は力ずくで乗っ取られました」

「え!?」


 確かに気にはなっていたが、まさかそんなことになっているとは……!


 驚いたのは私だけで、橙達は拳を握りしめて項垂れるばかりだ。


「アテナリア王は、どうなった?」


 淡々と聞くレイだが、ネーヴェ様を鋭く見て、口調も厳しいものとなった。


「エドウィン様は、現在幽閉されています。人質として利用価値がある為に、拘束されて自害も叶わぬ身……」


「白亜様は?白亜様はどうしたの?!」


 思わず立ち上がり私が聞くと、橙は悲しそうに顔を歪めた。


「白亜様は、あの護という人の命じるままに動いているわ」

「なんで……どうしてそこまで」


 呆然と呟く私に、橙は黙ってしまう。


「あの子は……白亜は、護に最初抵抗したのですよ。もう止めてと説得しようともしました。しかし……」


 ネーヴェ様が、白亜様のことを「あの子」と、娘のように呼ぶ。そこに慈しみのような気持ちを感じ取って、私は胸を突かれた。


「……エドウィンを守る為か?」


 レイの問いかけに、ネーヴェ様が苦しげに頷く。


「白亜はエドウィン様を守る為に、護の命じるままに他国の侵略を開始しました」

「へパイストース国は既に落ちた。俺は家族と国を脱出して逃げる途中、神官長さん率いるアテナリアの難民達と合流してここに来た」


 デュークさんが辛そうに話す。


「お、お父さんお母さん………ディメテル国は?!どうなってるの?!」

「まだ無事なはず。守護竜とタリア様率いる騎士団が抵抗を続けているわ」

「あ……」


 走り出そうとした私をレイが捕まえる。


「レティ」

「助けに行かないと!!離して!」

「大丈夫だ。お前の両親はさっきギルが迎えに行った。人間が設置していた転送魔法陣は奴によって停止しているが、魔族の施した転送魔法陣はまだ使用可能だ。直ぐにこちらに来るだろう」


 落ち着き払ったレイの顔を見て、力がやっと抜けた。そのままやっぱり膝の上に座らされて、レイの肩に顔を付けて泣き出したら、頭を抱いて私を腕に包むようにして抱き締めてくれた。


「大丈夫」


 ネーヴェ様達は、黙って私とレイを見ていた。

 だけど私が涙を拭いて、再び彼らを見た時ネーヴェ様は深く頭を垂れた。


「どうかお力添えを。このままでは人間界は滅ぼされかねません」

「はあ、どうするかな」







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