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君を破滅へ導く明日2

残酷描写、暴力描写有ります

 

 真白とは、高校一年の秋から付き合いだしたんだ。


 僕は自分で言うのもなんだけど、顔は良いようで結構女にはモテた。でも、そいつらと付き合って、向こうが僕のことをよく知るようになると長続きしなかった。

 皆逃げていく。

 理由はわかっていたよ、僕は普通じゃなかったから。


 両親は再婚同士で、僕は父の連れ子だった。でもそれなりに家族してたんじゃないかな。義理の母とは会話した覚え無いけど、まあよくある話だ。


 別に不良じゃなかったし、成績は良い方だったし運動も得意だった。学校だって休まず行って授業も真剣に聞いていた。


 時折、小さな命を握り潰したい衝動に駆られて実行したけどね。


 その日も夜、公園で可愛い野良猫を餌でおびき寄せてカッターで遊んでいたら、真白に見つかった。


 制服で同じ学校の子だってわかって、クラスは違うけど廊下とかで何度かすれ違った覚えがあった。


「……あ、河野、君」


 怯えた顔をして、でも逃げずに立ち竦む彼女に、どうしようか考える。

 血のべっとり付いたカッターを、チラリと目の前に見せてやると、息を呑んでそれを凝視している。


 僕はその表情に、ゾクゾクと嗜虐心が擽られて堪らなくなった。街灯の白っぽい光に照らされた彼女は、やけに扇情的で艶めいて綺麗だった。


 僕は殊更優しい笑みを浮かべてカッターを捨てた。彼女の首を絞めたら、どんな声と表情を見せてくれるだろう?


「ねえ君、僕を知ってるの?」


 立ち上がって彼女に近付くと、びくりと体を震わせながらも頷く。


「大丈夫……誰にも言わないわ。私、河野君のこと守るから」


 その真剣な表情と言葉に、僕に気があることが直ぐにわかった。

 だったら利用しないと。


 僕は彼女に普段は優しく接した。たまに暴力で捩じ伏せ支配して、その後は優しく抱いてあげた。


 そうすると益々彼女は僕にのめり込み、僕の与える全ての行為を愛だと疑うこともなかった。

 可笑しいね、僕は愛なんて知りもしないのに。


 真白は祖母と二人で暮らしていて、多分彼女も愛がよくわからなかったのかもしれないな。


 真白は他の女共と違い、逃げることもなく、逆に追い縋るようにして僕を求めた。僕無しじゃ生きられないように操作してたから当然だ。


 そんな時、異世界に墜ちてしまった。

 まさかこの僕が勇者とはね。

 魔族は敵だからと、合法的に命を奪ってもいいなんて気分が良かった。だけど、僕は帰りたかった。


 なぜかな……この世界に僕は違和感と疎外感を常に持っていた。本能的にここは僕の生きる場所ではないと。


 元の世界に帰った時は、たいした世界じゃないくせにホッとしたものだ。

 真白は付いて来れ無かったみたいだけど正直飽きてたし、僕へ向ける気持ちが重すぎて鬱陶しくなっていたから清々したぐらいだ。


 僕は高校を卒業し大学を出て、有名な企業に就職予定だった。真白ほどではないが美人な彼女もいて婚約もしていた。

 趣味は以前よりは程々にして、彼女には内緒だった。ただし彼女も僕の支配下に置いていたけど。


 それなのに……


「謝れよ!!」


 顔を殴ると、泣きながら「どうしても逢いたくて」と弁解する女。

 見て直ぐにわかったけど、僕よりずっと年上の真白なんて触りたくもない。殴りはしたけど。

 真白がこれほどに僕に執着したのは、誤算だったかも。


「やめろ!」


 真白を庇うように抱き、こちらを激しく睨み付けるエドウィンに嗤える。


 こいつ、まだ生きてたのか。それでもって、真白をまだ好きらしい。


 斬りかかるエドウィンの剣を素手で弾き飛ばす。遠くの石の壁に突き刺さったのを見て、自分の手をグーパーして確かめる。


 わお、僕チート健在!勇者万歳!


「気にくわないなら戻ればいい!」


 エドウィンが激しく泣く真白の頭を抱えて言うが、何なの?何勝手なこと言うわけ?


 勝手に呼んどいてムカつくんだけど。


 辺りには覚えがある。あの魔族の女を刻んだ場所だが、双子の兄貴の姿は無くなっている。おそらく、そいつに僕を呼び寄せたのだろうから、またそいつを刻んだら帰れるんだろう。


「………いいや、別に」


 最近自分が出せなくて、向こうの世界も窮屈だったんだよな。帰るのはいつでも帰れる。

 だから折角だし、このチート面白おかしく利用してみるのもいいかも。


 そう、ここは違う世界。

 どうなっても、僕にはどうでもいい世界。


「メチャクチャにしてみるのも有りかな……」


 よくあるよね、チートで世界の覇者になるって。

 僕はこの世界の住人じゃないから、何してもいいはずだ。


「ごめん、なさい……ごめんなさい」


 真白が謝ってるけど、誰に謝ってんだろ。

 もう遅いんだよ、ばぁか!


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