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君を我が手に6

ちょっぴり休憩な話

 

 次の日の朝。


「あの…初めまして、レティシア様」


 黒いワンピースに白いエプロン、いかにもなメイド服を着たウサギ耳で丸尻尾の女の子をギル兄に紹介された。


「あなたの身の回りの世話のために雇いました。」

「よろしくお願いいたします。スリィーマアリシャ……スリィと呼んでください」


 おとなしそうなスリィちゃんは、ぺこりとお辞儀した。


「う、うさうさうさ……」

「レティシア様?」


 ふらりとスリィちゃんの耳に手を伸ばしかけ、我に帰って引いた。

 何なの!フワフワしすぎでしょ!

 可愛い触りたい。


「う……よろしく、スリィちゃん」


 衝動を抑えつつ言うと、彼女は春の陽射しのような柔らかい笑顔を見せた。

 て、天使ウサギ!


 その後ろで、ギル兄が冷ややかな眼差しを私に向けていたが、いつものことだったのでスルーしといた。


「一度言っておこうと思ったのですが」


 ギル兄はスリィちゃんを一旦下がらせて、周りをぐるりと見渡し誰もいないのを確認している。


「何ですか?」


 これから朝食の為に食堂に行こうとした私の前に、ギル兄は腕を組んで立ち塞がっている。

 レイは朝食前に執務室でお仕事をと、彼に連れて行かれていない。

 300年いなくても、どうにかなってたんなら仕事って別にいいのでは?と思うけれど、代理でギル兄がずっとしてたらしくて、レイは文句が言えないらしい。


 律儀に部屋の扉を開けて、一歩外に出た状態で部屋にいる私に向かうギル兄。


「今朝のレイ様の、あの疲れ切った顔……あなた、またヤリましたね」

「はい、私がヤリました」


 モフりを堂々と白状したら、ギル兄は口許を手で覆い赤い顔をした。


「あ、あなたは…」

「ん?」

「魔族の尻尾や耳は性感帯です。むやみやたらに触るなど言語道断です」

「へ、今なんと?」

「だから、レイ様の尻尾を触るのは、前のとこ触ってんのと変わんないって言ってんです痴女さん」

「………………………………………え」


 やはり知らなかったのか、とギルさんは溜め息を吐いた。


「どんなにモフリたくても、相手の了解無しに触るのは痴漢と一緒です。さっきのメイドは同性ですが、それでも触るのはマナー違反……いや、やはり変態で、痴女ですよ」


 私はレイをモフッた日々を思い起こした。

 喘ぐレイ。息を乱し、眉をひそめるレイ。赤い顔でびくんびくんと体を震わせるレイ。モフリ尽くした後の呆然と体を投げ出すレイ……


 舐め回し触りまくり擦りまくり言葉責めの数々……


 うん、痴女だね!


 よろよろと床に座り込む私に、ギル兄は憐れみにも似た目を向けた。


「ああ、本ありがとうございました。あの戦隊モノは少し幼稚でしたが、あのチュウニ病とかいうのは本を読んで理解しました……少々お恥ずかしいですね」


 慰めのように感想を述べて、へこむ私を見下ろすギル兄。


「………罪の深さを自覚したなら、封印を解いてレイ様の願いを叶えて差し上げて下さい」


 そう言って、背中を見せて去っていった。


 **************


「どうした?」


 食堂で朝食を摂りながら、レイは私の隣に座って覗き込んできた。


「……レ、ネーデルファウスト様」

「おい、どうした」


 ご飯に手をつけず項垂れる私の顎に指を掛け、レイはじっと見つめてきた。


「私、人じゃなかった……」

「いや、人……人だよ、な?」

「女じゃない」

「……女、だろ?え、女だろ、いや女でいてくれ」


 焦ったレイが胸を見て、ためらいがちに太腿をさわさわ触る手を叩き落として、私は半泣きで謝った。


「ごめん。尻尾をモフるのって、魔族ではイケナイことだったの知らなくて、ごめんね、レイ様」

「……ああ、なんだ。ギルから聞いたか……」


 目を反らし、恥ずかしそうにドリンクを飲んで誤魔化すレイに、私は謝罪の追い討ちを掛けた。


「ごめん、ごめんね!何度も何度も、レイを辱しめて!昨夜なんか、日が明るくなるまで散々いたぶって、レイをアンアン喘がせまくって、足腰立たなくなるまで気持ち良くさせてしまって、本当にごめん!もうお婿にいけない体にしてしまって」

「ぶほおおっ!!」


 ドリンクを吹き出し咳き込んだレイは、涙目で私の口を手で塞いだ。


「ん!んっむ」

「げほ、も、もやめっ」


 キョロキョロと周りを見回して、辺りに誰もいないのを確認してレイは手を離した。


「レイ君、ごめんね。もうしないから」

「…………しないのか」


 なんでがっかりした顔するのかな?

 でも直ぐにイタズラを思い付いたようにニヤリと笑って、レイは私の脇を掴むと自分の膝に私を乗っけた。


「お前になら、これからも俺の尻尾を触るのを許す」

「え、でもいやらしいことなんだよね」

「いやらしい……歓迎」


 私の顔に顔を寄せて、指は頬を撫でている。


「レイ?」

「ご褒美」


 囁かれて、私は以前の似たようなことを思い出した。

 ここで言うご褒美が何なのか。

 私は、そろそろと手を伸ばしレイの頬を包み、チュッと彼の唇に軽いキスを贈った。

 嬉しそうなレイを見て、罪が浄化され…るわけないか。


 彼は可愛いワンコな悪魔だ。

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