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君の尻尾をモフりたい3

もうなんか……すみません

 

 次の日の夜。


「え、くれるの?」


 風呂上がりに、宿の厨房の冷蔵庫で冷やしてもらっていたお茶を飲んで寛いでいたら、クロが自分の飲みかけの水を差し出した。


 もういらないのかな?

 コップに八分目まで水が入っていた。


「ありがと」


 何の疑いもなく、私はそれを半分ほど飲んだ。じっとその様子を見届けたクロは、私の目の前に小さな包み紙を置いた。


「何これ?」


 紙の表には、汚い字で『ヨルムンガンドの尻尾で作った薬』と記され、中には灰色の粉状のものが少しだけあった。

 ニヤニヤと笑うクロが、私が口をつけたコップを指差す。


「もしかして入れたの?」


 愉快そうに頷くクロ。いつの間にヨルさんの尻尾取ってたんだろう?


 蛇の魔族の尻尾は、確か精力が付くって聞いたことがある。精力ってことは、元気が出るってことだよね。


「クロ、ありがと!私のために……私、元気出すね!」


 にこっとして御礼を言ったら、驚いた顔をしている。

 厚意に応えて、更にヨルさんの尻尾エキスの入った水をごくごくと全部飲み干す。

 味は無味無臭。色も水の色。


 飲んだ後に、ふと思った。


「そういえば蛇の魔族の薬は、男の人向けだって聞いたことがあるけど、女の子が飲んでもいいんだっけ?……それに、これって普通の蛇の魔族じゃなくて、レアなヨルさんの薬ってことは、効果も違ったりするんじゃ……」

「………ワウン」


 いや、クロ君、今気付いたように腕組んで考えないでよ。なんでそんな焦ったような表情してるの?


 なんだか身体がポカポカしてきたなあ


 30分後……


「クロ、何か暑い……」


 長袖のパジャマが暑くて、上を脱いでキャミソールにして、下は下着の上に太腿までの丈のミニパンに着替えた。

 目が冴えて、眠れない。


 暑くて、脈と呼吸が速い気がする。クロの症状に似てる。


「く、クロ」

「…………」


 じっとりと汗をかいて、ベッドの上で耐えている。聖女の術で毒消しはあるけど、毒じゃなさそうだし、そもそも苦手な術だから、無理っぽい。


 うつ伏せになって、シーツを掴んで、無言のクロに目を向ける。

 ベッドに座り、じいっと私を観察するように見つめるクロの目が期待に満ちているようなのは気のせいだと思いたい。


「クロ…何を、考えて…」


 なぜかクロから目が離せない。生唾を呑み込んで、沸き上がる欲求に耐える。


 更に10分後……


「もう、ダメだ」


 はあはあと荒く呼吸をし、四つん這いになって涙目でクロに近寄る。


「ハアハア、クロ、私、もう、クロに触りたくて、堪らない!」


 クロの指が私の顎を掴み、くいっと上向かす。私を見下ろしながら尊大に笑うクロに、くらくらするほど欲望を掻き立てられる。


「く、クロ様!お願いです!」


 クロの腿にすがり付く。ちなみにクロは水色の子供用パジャマだ。


「クロ様が、欲しい!ハアハア」


 ギラギラしているはずの目は、クロのアレしか目に入らない。

 ぽっと顔を赤らめるクロは、満足そうにニタニタしている。


「お願い、クロ様!君の膵ぞ…ちがっ、君の尻尾を食べたい!!ハアハア」


 クロの目が点になった。


「へ?」


「だから!君の尻尾をモフって、モフモフハムハムモフモフモフモフモフしたい!」


 舌舐めずりをして、ガシッとクロの尻尾を掴む。

 このビロードのように光沢のある美しい黒毛を、私は汚してしまうだろう。

 だが、欲望に駆り立てられた今の私には、それがわかっていて留まることができないでいた。


 薬のせいで、今まで我慢していた欲求が爆発してしまっている。


 もう誰も止められない!


「ハアハア…クロ、ごめん…ごめんね、もう無理なの。自分が止められない。モフりたくてモフりたくて堪らない!ああ、クロのモフが欲しい!モフぅぅぅ!」


 ついにクロに飛びかかりうつ伏せにするや、尻尾を両手で抱えて顔を埋める。


「モフ!も、モフ!ああ!貪り尽くしたいぃ!!」

「うあ!ウアア……アウ、アウ」


 痛ましいクロの悲鳴が闇夜を切り裂いた。


 散々モフられ、舐められて、ハムハム尽くされたクロは、ぼろ切れのようにベッドに力無く沈んだ。


 次の日、なんとか正気を取り戻した私とクロは、もう二度と過ちを繰り返さないように、残った薬を売りに出して、大金を手に入れた。


 クロの尻尾が、(特に根元が)性感帯だと知ったのは、かなり後になってからだった。



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