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君と共に2

 

 うーん、長すぎて尻尾の終わりがよくわからないけど、私を50人分ほど食べないと、このヨルさんはお腹一杯にならないだろうなあ


 頭上から、ユラーリと垂れ下がりながら、音もなく巨大な顔を近付けてくるヨルムンガンド。略してヨルさん。


 まさか、出くわさないと思ってたのに、私達逆に運が良くね?


 詠唱を唱え、デュークさんとクロに結界を張りながら、精神は逃避していた。


 Γ本当にいやがった」


 剣を構えたデュークさんが呟く。あなたも半信半疑だったんだね。


 Γ凄いね、死ぬ前に一度レアが見たかったんだあ」


 和ませようと笑って言ったら、二人は虚ろに私に目を向けた。


 ヨルさんは、チロチロと赤い舌を動かしたと思ったら、ぱっくりと口を開けた。


 そのまま飛び込んだら、滑り台みたいに勢いよく滑って肛門から飛び出たりして…

 なんてアホなこと想像してたら、ジャンプしたクロがその口目掛けて魔力をぶちこんだ。


 ばくっと口を閉じると、魔力の残りが黒い霧状にヨルさんの口を締め付ける。クロが、糸を引くように両手の指を動かすと、呑みこんだ魔力が体の中で暴れて突き破ろうとして、ヨルさんが身を捩る。魔族でも他者の魔力は受け付けないのだ。


 真剣なクロの表情に、キュンと萌える。


 ドオオオン


 魔力を吐き捨てたヨルさんが、天井から降ってきて地面に落下すると、地響きがして砂煙が舞い上がった。地面が揺れるのを手をついて耐える。


 視界の悪い中をデュークさんとクロが突っ込んで行く。


 それを見て、必須科目じゃなかった運動神経を一時的に上げる術をデュークさんに、クロには禁断の魔力増強の術を掛けておく。


 禁断って聞くと覚えたくなるんだよね。聖女候補達の間で一時期流行ったなあ


「おお!?」

「ガル!?」


 二人とも力がみなぎるのを感じて、驚きながらも足は止めない。


 砂煙に二人が見えなくなるのを見送り、私は子供の頃家で読んだ本を思い出した。


 二人を戦いに送り出す感じ、本の話に似てるんだよね。


 あれは確か、マスターになるって夢を永遠に追いかける永遠の子供が、「君に決めた!行け!」とか叫んでカプセルみたいなのを投げて、モンスター同士を闘わす話だったなあ。


 または、メダルを腕に装着した時計に嵌めて「俺の友達!出てこい!」とか叫んで、この世界では自然現象でしか成立しない高度な召喚術を繰り出してモンスター?を闘わす話もあったなあ。


 ……どちらも男女問わず、子供の間で大人気の本だった。かくいう私も聖女候補に選ばれる前は、男の子に混じって、本の中の主人公の真似事なんかして遊んでた一人だ。


 さすがに何も呼べなかったけど周りにいた子の話では、決め台詞を言う時は、決まって私の体から金色の光が発せられて眩しくて見ていられなかったそうだ。聖女の素質のせいだろうなあ。

 なりきってて、自覚は無かったんだけどね。


 クロとデュークさんが、砂煙の中に消えて数分。


「………おかしいな」


 静かすぎる。心配になって目を凝らしながら、前に進んでみた。

 視界の悪さが少しだけマシになり、地面に鎮座するヨルさんの巨体が確認できた。


 ヨルさんは、小山のようにとぐろを巻いていて身体全体がぐねぐねと蠢いていた。僅かな日射しが、その灰色に赤い斑点模様の身体を艶々と輝かす。


「ああ!く、クロぉ!!」


 とぐろに顔だけ出た状態のクロとデュークさんが目に入った。

 今にも絞め殺されそうなクロの苦悶の表情に、私の中の沸点を越え過ぎた怒りが瞬く間に弾けた。


「このへびぃー!!うちの子に何してくれてんのよぉ!!クロを、クロを返せぇ!!」


「……じょ、じょうちゃん、ぐうぅ、俺を…忘れて、る」





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