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君が必要2

 

「その名で呼ぶな」

「真白」


 勇者として培われた俊敏な動きで、エドウィンは音もなく彼女の後ろに立っていた。

 そして、扉を開けるのを阻む為に、彼女を挟むようにして両手で扉を押さえた。


 仕方なく振り向いた真白は、至近距離で見つめるエドウィンを睨んだ。


「妙な真似はするなよ」

「しない。だが返事をくれなきゃ、わからん」

「……ったく」


 エドウィンの腕を払って抜け出すと、壁に背を付けた。


「今、この状況で私が答えると思っているのか?」

「今だから、余計聞きたい」


 扉を背にして、エドウィンは腕を組んだ。


「俺も君も良い歳だ。いい加減俺の妻になれよ」

「正妃が亡くなってまだ三年だぞ?どの口が言う」

「もう三年だ」


 何度も繰り返した攻防に、エドウィンは溜め息を吐いた。


「私はもう若くない。子は産めるかわからない」

「妃が遺した王子が一人いる。君にそれを望んだりしない」

「私には無理だと何度も言ったはずだ」

「俺が嫌いか?」

「嫌いも何も、お前は同志だ。私は何度も断ったはずだが?」



 うんざりしたように、白亜は俯いた。


「俺は、18年前から……旅をしていた時からずっと君を想っていた。国王として亡くなった正妃と結婚することになっても、その想いは消えなかった」


 はっ、と白亜は鼻で笑った。


「最低だな」

「何とでも言え。王としての義務は果たした。もうそろそろ好きなように生きても誰も何も言わんだろ?」

「私が言う」

「白亜」


 足を一歩踏み出すエドウィンに、白亜は動かない。


「……どうしてもダメか?まだ諦めきれないのか?」

「……そうだな」


 手を握られて、彼女は自嘲気味に唇を小さく上げた。


「自分でも何故かと思うよ。だが、私は……帰りたい」


 眉根を下げて、寂しそうな国王から顔を反らし、白亜は飴色の壁に視線を投げた。


 しばしの沈黙の後に、エドウィンが白亜の背に手を回そうと動いた。

 その途端、彼の前で強烈な光が炸裂した。


「うわっ」

「妙な真似はするな、と言ったぞ?」


 目眩ましの光に、目を庇うエドウィンの横をすり抜け、白亜は扉に近付いた。


「…っ、真白」

「その名で呼ぶな。それからいい加減諦めろ。後釜が欲しいなら、もっと若くて綺麗な女性にしろ」


 言い捨て、今度こそ扉は開かれた。


「真白でなくて、何の意味がある?!」


 扉を閉める直前に聞こえたエドウィンの言葉に、白亜は表情も変えなかった。

 ただ、少しだけそこに留まると、やがて頬にかかる髪を払って、長い廊下を歩き出した。



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