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魔王とモフと結婚記念日と 2

 レティとレイは政務を無茶苦茶頑張った。本当はギルにさせた方が早いんじゃないかなと思いつつ、言うだけムダだと解っていたので夫婦で頑張った。

 全ては、1日のお休みの為に。イチャイチャの為に。


 そして結婚記念日当日の朝。


 レティシアは動きやすい濃い青のワンピースを着て、腰の後ろでリボンを結んだ。真っ赤な長い髪を三つ編みにすれば、普通の娘にしか見えない。

 この国は魔族と魔族と人のハーフが主に暮らしているが、最近は人間も移住してきたりしている。だから、魔族の特徴の黒髪黄色の目の色彩ではなくても、町中で浮いたりすることはあまり無くなったが、やはり赤い髪は目立つことをレティシアは自覚していない。


「デート久し振り」


 鼻歌を歌いながら、ご機嫌で部屋を出る。


「クロ君、用意で……………え、クロ!?」


 明け方近くまで書類仕事に追われていた元魔王は、疲れて扉の前で倒れていた。


「クロ!」


 驚いたレティが彼を上向かせると、その瞳は虚ろにどこか遠くを見ていた。


「は、はは、ふざけんな……………魔王だって仕事するんだからな…………誰だ、魔王は玉座にふんぞり返って赤ワイン片手に『待っていたぞ勇者よ』なんて言うのが仕事だと思ってる人間達、楽してると思うなよ…………俺だって叶うことならレティとベタベタするのが仕事でいたいし、ベタベタベタベタ…………」

「魔王しっかりしろ!」

「は!レティ」


 元聖女の呼び掛けに、彼の澱んでいた金の瞳に一筋光が射した。


「クロ君、デート行ける?」


 真の悪魔ギールバゼアレントの果てしない書類攻撃を、人間である嫁に替わり受けてくれていたのだ。

 ズタボロになったダーリンに、今更ながらにレティは同情した。同情だけだ、今まで彼女がデレデレの旦那に替わって頑張っていたのだから。


「こ、こんなことでへこたれるわけないだろ、俺を誰だと思ってる?」

「え、イヌ………………」


 ちらりとレイの半分魔族である証のフサフサの黒い尻尾を見ながら言えば、熱い視線を感じた彼は両手で尻尾を庇って黙った。


「それじゃあ行こっか」


 レイの手を握ると、途端に尻尾を振りながら嬉しそうに握り返して立ち上がった。

 立派に大きくなった竜型魔族に相乗りして、二人は城から離れた目的地に向かった。


「お前の行きたかった所って何の店だって?」

「そこは夢と希望の国だよ」

「は?鼠魔族のアレか?」

「少し違うかなあ」


 手綱も無しに竜を操るレイに、ニヘニヘしながらレティは答えた。


 高速飛行で30分ほどの町に降り立った二人は、ファンシーな可愛らしい小さな店の前に着いた。


「な!?なんだここは!」


 看板を見て青ざめる魔王。


「ついに、遂に我々は辿り着いたよ」


 うっすら涙を浮かべ、レティシアは尊さに両手を胸の前で合わせた。


 そこには、『モッフカフェ』と記されていた。







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