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君はペット2

 

「クロ。私ね、いろんなことから逃げちゃったの」


 時間的には、朝。でも夜中から起きている私は、今日1日眠ることにして布団に潜り込んだ。

 いろいろ必死だったから疲れた。


 お風呂から出ると、私が拭こうとしたら、クロはタオルを奪って体を拭いた。

 私は服を洗濯機に放り込んで、備え付けのシンプルな寝間着を着た。


「クロの服買わなきゃね」


 ペットでも、服を着る仔もいる。 いや、さすがに着せないとまずいか。クロは、目の色と尻尾以外は人間の子供と変わらない姿をしている。白い肌を晒すのは……お肌に悪いよね。


 クロは自分で体にタオルをグルグル巻いた。その間に、ドライヤーで髪を乾かしてあげたら……


「ク、クロ!」


 美幼児が現れた。私の目に狂いはなかった。


 短く少々乱雑な髪は、大きいが鋭い瞳によく似合う。野性味がありながらも、どこか気品のある美幼児は、まるで絵画から抜け出したようだ。


「はあ、可愛い。ちゅ」

「ワ、ワウ!?」


 抱き上げて、ついほっぺたにちゅうしてしまった。途端にほっぺたが、真っ赤に染まって更に可愛さがアップした。


「なあに?照れてるの?」


 泣いたのも忘れて、クスクスと笑い、クロを布団に連れていく。水差しの水を少し二人で飲んで、私は布団に横になった。


「クロ、おいで。一緒に寝よう。」

「…………グルル」


 何だろう、クロの嬉しそうな怒ってるような悔しそうな微妙な表情は?


「起きたら、ご飯にしよ」

「ウウ」


 迷うように、ベッドの側をうろうろしていたけど、やがて諦めたのか私の足元の辺りに上がってきた。


 丸くなるクロに布団を掛けると、私の足に尻尾が触れてふわふわしていて気持ちが良い。


 気分が落ち着いたところで、クロに自分がどうして逃げてしまったかを話した。


「私は臆病なんだよね」


 横向きになって、目を瞑りながら独り言みたいに気持ちを吐露した。


「私が聖女に選ばれるなんておかしいよね?だって、全然強くないし…魔王封じて世界救うなんて、大それたこと考えたこともなかったの」


 クロは静かだ。布団がゆっくり上下している。もう眠ったかもしれない。別に聞いていようが、聞いていまいがどっちでも良かった。

 ただ溜め込んだものを吐き出したかった。


「もっと相応しい人は、いるのにね。私なんか魔力吸収ぐらいしか取り柄無いし…」


 爪先で、尻尾を撫でるとクロは微かに身じろぎした。


「翡翠のように美人じゃないし、やる気無いし、橙みたいに優しくないし、気配りできないし…」


 自分の髪を一房摘まんでみる。目に痛いぐらいの強い色彩。


「赤毛だし、背は低いし、おっぱいでかいし、鼻は低いし」


 あ、自分で言って落ち込んできた。


「こんなに弱いし…」


 影が顔に掛かった。私が上を向くと、クロが私を見下ろしていた。


「どうしたの?」


 クロは、不思議そうな表情で私を見ていた。私が髪を撫でると、我に返ったように瞬きをして、また足元で丸くなった。


 慰めてくれたのかな?


「クロ、ありがとう。君を連れて来れて良かった」


 爪先で、また尻尾を撫でると、クロは再びビクッと体を身じろぎさせた。

 私は言いたいことを言って、すっきりして眠った。




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