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◇くりかえしの一日:1◆

 で、なんで俺たちみたいなやつらを集めてる酔狂な組織があるのかって。

 そりゃもちろん、毒には毒を、というもんで。


 俺たちのいるところが警察だとしたら、犯罪者も能力者を利用しようと考える。

 それはそうだ、命を削って宝石を作りだせるような奴もいるし、


 どんな毒薬でも作れるようなやつも、相手の先の行動を読み取って行動できるようなやつもいるんだからな。

 普通の人間が対処しようと思えば、悲惨な結末になるのが最初から見えてる。


 それは食事が終わったあとのことだ。

「んー……なぜなのかしら、何度やっても見えませんのよね」

 金色のゆるく巻いた長い髪に、青い目をした、車椅子に座る透視能力者の女、アンナが言う。


「なにが?」

 俺が質問すると、アンナはこっちを見て困りはてたように言う。

「最近、植物が巨大化したり、動きだしたりするおかしな事件が続いていますの。

 間違いなく能力者関係なのだけど、なにも見えないの、もやがかかったように。

 もしかしたら、一人ではなくて、複数の能力者がかかわっているのかも」


 植物が動き出すってなんだ、サツマイモやニンジンが動いたり喋ったりするってことか?

 と、考えていると、ウィリアムも困り顔で言う。


「あぁ、それか。私も困っているんだよ、家庭菜園の野菜まで毒物に変わってしまっているようでね、幸い死者こそでていないが……」

「それって……まずくないか?」

 俺が言うと、赤く長い髪に、紫色の目の女、転移能力者のレニが口を開いた。


「まずいに決まってんじゃない! あたしもイロイロ情報収集してるけど、ぜんっぜんダメ! 手がかりさえつかめないの、ていうかなんでアズサだけ知らないの?」

 レニの純粋な疑問、俺はなんとなく察しがついていたが、アンナがかわりに言う。


「アズサの能力は、今回のことにはまだ役立ちませんもの」

 まだ、ってのは、仮に敵側の誰かしらとっつかまえることができれば、俺の能力で相手が白状しようがしまいが頭の中身を抜き取れるからだ。

「とにかく、ひとりでも相手の関係者を捕まえられれば良いのですわ。そうすればあとはアズサに任せて芋づる式にずるずると……」

「いや、そんなに大変なら俺も今日から手伝うよ」

 ほっとけないしな。


 ……。

 …………。

 ビル街を歩きながら、俺は周囲に注意をはらう。

 いつものことだが、能力者がらみとなると、どこに手がかりがあるか分かったもんじゃない。

 とはいえ、自分への注意が散漫になっていたせいか、少年とぶつかってしまった。


「あ、わるいっ! 大丈夫か、少年」

 俺があわてて謝ると、目深に帽子をかぶった少年は首を横に振った。

「ううん、大丈夫、ぜんぜんへーき」

 それだけ言って、その子供は走り去って行ったのだが……。


 あれ?

 おいちょっと……。

 妙にポケットが軽いぞ。

 

 急いで手をつっこむと、そこにあったはずの財布がない。

 ない、ない、ない――……。

 今月の生活費のことを考えて一瞬で真っ青になる。

 いつ落とした?

 いや? 落とした?

 さっきの子供とぶつかるまではたしかに重みがあった。


 ……。

 つまりだ。


「スられたっ?」

 いまさらふりかえっても遅い、あの子供の姿はどこにもなかった。

「クソっ……」


 べつに俺は金使いが荒いわけじゃあないが、こういう仕事をしてるんだ。

 危険も多いし、我が身は自分で守らなきゃならない、そうなると必然的にナイフや薬を買う金がかかってくるわけで。

 その分、給料もいいし、財布に全額いれてるわけじゃあないが、いつなにが起きるともしれないと思えば、痛手であることに変わりない。


 俺がイライラにまみれていると、突然目の前にレニがあらわれた。

「アズサ、はいこれ」

「あ?」

 さしだされたのはなくなったはずの財布だった。


「アンナがスられたみたいっていうから取り返してきてやったの! んじゃないと、あの女の子、サツに捕まってえらい目にあうし」

「――女の子?」

 財布より気になる発言があって、俺はレニに聞き返す。


「いや、俺の財布をスったのは子供で、男だったぞ?」

 たぶん。

 男装しているとかでなければ。


 するとレニは不思議そうに首を傾げた。

「え? なに言ってんのよ、十代後半くらいの女の子だったわよ?」

「はぁ?」


 十代後半じゃあ、全然俺の見たやつとは違う。

 俺がぶつかったのは十歳かそこらの少年だった。

「んー? とちゅうで誰かべつのひとに渡したとか、かしら?」

 可能性としては妥当なところだが、この短期間に……?


「ま、いいわ。とにかくあたしは仕事に戻るから」

 そう言うなり、レニの姿が目の前からぱっと消える。

 いつも思うが、俺のと違って便利な能力だ。

 あれがあれば乗り物酔いもしないだろうな、なんて考えながら、俺はまた街を歩きだしたんだが。


「いやぁねえ、異常者が街を平気で歩いているなんて。おそろしいわぁ」

 道端で会話している主婦の声だった。

「ほんとうよねえ、あんなもの、処分してくれればいいのに」

 あぁ、そういや今日は手袋忘れちまった。

 右手の痣を見て、俺は憂鬱な気分になった。

 レニのことも言っているのかもしれないが、俺の右手の痣についても言ってるんだろう。

 俺のことは勝手に言えばいいが、レニのことを言われているのは腹立たしい。


 ……。

 結局、その日はなんの収穫も得られずに、寮に戻ることになった。

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