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8 珍種妖精、冒険者ギルドを訪れる

シェーラとミリアムに連れられて無事に街へと着いた。

この街はローレアン王国のラサミアという街だそうだ。

街は壁に囲まれていて、入り口の門には多くの人が並んでいた。

「そう言えば、オレって普通に街に入れんの?」

2人に聞いてみると、通常は身分証明を見せるか金を払わないといけないらしい。

「ケンジの場合は使役妖精だとでも思われて素通りなんじゃないかしら」

とはシェーラ談。

使役妖精か、別に使役されてるわけじゃないんだけどね。

身分証明も持ってないし、金も無いからすんなり通れるならそれでいいけど。

オレたちの番が来て、シェーラとミリアムが門の兵士にギルドカードを見せて門を抜ける。

オレはその後をくっついていったわけだが、まぁこんな形(なり)だから凝視はされたけど、シェーラの言うとおり素通りだった。

街の中は、まんま中世ヨーロッパの街並みだ。

人も結構いてそこそこ大きな街らしい。

シェーラとミリアムがクエストの報告にこのまま冒険者ギルドに直行するということで、オレも一緒についていく。

冒険者ギルドは大通りに面した場所にあり、他の建物より一回り大きな建物だった。

斧を担いだマッチョで厳つい男、剣を腰に差したたくましい女性、ローブを着た魔法使いらしき男、弓を担いだ鋭い目つきの女性、まさに冒険者って感じの人たちが冒険者ギルドを行き来していた。

しかも、その中に少数だがエルフやケモミミも混じっている。

小説を読みながら想像していた冒険者ギルドそのままな感じでオレのテンションも急上昇だ。

「スゲー、想像してた通りの冒険者ギルドだー。リアルエルフにリアルケモミミいるし、ファンタジー世界最高! うぉー、あのケモミミ冒険者が持ってる剣カッケェ!!」

熊の獣人だろうか?身長2メートルはありそうなケモミミ冒険者が背中に担ぐ銀色の大剣をもっと近くで見てみたくて近くに行こうとしたら、シェーラに足を捕まれた。

「ちょっと、フラフラしないの。先に報告よ、報告。それに、アンタ冒険者登録したいんでしょ?」

「チッ、剣は男のロマンだろうが」

「でもぉ、ケンジの身体じゃ剣は持てないわよねー」

ぐぬぬぬぬ、ミリアムさんや男の夢を壊さんでくれよ。

ミリアムのツッコミにシェーラも「確かに」なんて言って笑っている。

クソー、確かにこの身体じゃ剣は持てないかもしれないけどな、オレには魔法があるんだからな。

魔力無限大だし、魔法は何でもござれの魔法チートだぞ。



そうこうしているうちに受付窓口に並んでいたオレたちの番になった。

シェーラとミリアムがクエストの報告とゴブリンの巣殲滅の詳細を話してた。

ちなみに受付は、ファンタジー小説にありがちな美人さんではなく、この道何年というベテランぽいおばちゃんだった。

おばちゃんはシェーラとミリアムの話を聞くと、「ちょっと待ってなさい」と言って裏に引っ込んだ。

少しすると、おばちゃんが50代半ばくらいのムキムキマッチョなおっさんを連れてきた。

「あ、ギルドマスター」

シェーラがマッチョおっさんを見て呟いた。

なぬ?ギルドマスターっつたらここのギルドで一番エライ人ではないか。

「ゴブリンジェネラルとゴブリンソルジャーを討伐したとのことだが、お主達が?」

シェーラとミリアムを見ながら少し疑わしげにギルドマスターが問い質す。

ゴブリンの巣ともなれば高位のゴブリンがいることも多く、ゴブリンジェネラルやらゴブリンソルジャー、ゴブリンながら魔法を使うゴブリンメイジ、まれにめちゃくちゃ強いゴブリンキングなんかがいることもあって、通常は冒険者数十人が集まって討伐に当たるのだと聞いた。

だから、シェーラとミリアムというまだ若い女冒険者2人からゴブリンジェネラルとゴブリンソルジャーを討伐しただなんて話が出れば、多少疑うのもわかる気がする。

「いえいえ。私たちだけでジェネラルやソルジャーの討伐なんてできませんよ。ジェネラルやソルジャーを含めたゴブリンの巣を殲滅したのは、彼です」

シェーラがオレを見てそう言った。

ミリアムもうんうんと頷いている。

「な、なぬ? そこの妖精はお前たちの使役妖精ではないのか?」

あいにくとオレは誰にも使役されてないぞ。

「違いますよぉ。私たちなんかじゃケンジを使役するなんてとてもできません。こう見えてケンジはめちゃくちゃ強いんですから」

ミリアムがまさかという感じでそう言った。

何かを使役する場合は、使役する相手に自分の強さを認めさせないと使役契約できないそうだ。

それから言うとシェーラとミリアムじゃ無理だわな。

というか、チートなオレを使役するなんて誰にもできないぜ。

「その妖精、そんなに強いのか?」

半信半疑のおっさんにシェーラが「ギルドにある鑑定の魔道具で鑑定してみては」なんて言っている。

「鑑定してみてもいいか?」

そう聞いてくるおっさんに、オレは「ちょっと待った」と待ったをかけた。

「オレを冒険者にしてくれるなら、鑑定してもいいぞ」

そう言ったら、おっさんが「エ?」ていうような顔をした。

「妖精が冒険者だと?長い冒険者ギルドの歴史の中でもそんなの聞いたことないぞ」

じゃあ妖精のオレは冒険者にはなれないのかと問うと、「いや、それは……」とはっきりしない。

「妖精が冒険者になったという話は聞いたことがないが、冒険者ギルドの規定では、ギルド規則を守れる者については冒険者登録できるとなっている。国によっては、エルフや獣人、ドワーフなどの亜人を人とは認めていないが、冒険者ギルドだけはそのような国においても登録を認めている。奴隷であっても主人の許可さえあれば登録できる。だが、使役妖精でもないお主が単独で冒険者登録となると……初めてのケースになるだろうから、本部に問い合わせることになる。1週間ほど時間をくれ」

ミリアムが言っていた「話が通じる者であれば制限はない」ってのは、要はコミュニケーションがとれて冒険者ギルドの規則を理解できて守れる者ってことなんだろうな。

だったらオレだって大丈夫なはずなんだけど。

妖精だから体はちっさいし、客観的に見れば冒険者には向いてないんだろうけどさ。

でもオレはチートだから全然大丈夫。

まぁギルドマスターのおっさんが1週間待てっていうならしょうがないか。

「それで、お主の鑑定だがしてもいいか?」

まだ冒険者登録できると決まったわけではないからどうしようかと思った。

けど、おっさんには手間掛けさせてるし、ステータスは隠した方がいいと言われるもののオレぐらいチートになると隠す意味があんまりないような気もしたのでOKした。

すると、鑑定の腕輪という魔道具っていうよりは宝飾品だろって突っ込みたくなるような、キラキラした石がたくさんついた銀の腕輪をしたおっさんがオレに向かって「鑑定」と唱えた。

「な、何だこりゃ……そんな、馬鹿な……こ、こんなことありえん…………」

オレを鑑定したおっさんが呆然としながらブツブツ呟いた。

どうよ?オレ。

なかなかの強さだろ?

ほんとチート様様だよな。



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