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39 珍種妖精、ダンジョンに潜る(その5)

ダンジョン12階は、11階とほぼ同じだった。

草原が広がるフロアで、出てくる魔物もほぼ同じ。

ただちょっと強くなってて、11階に出てきた魔物の上位種と思われるものがいくつか出てきた。

まったく問題なかったけどね。

で、12階も残念なことに宝箱は手に入らなかった。

近くにはあったみたいなんだけどね。

何とオレから少し離れたところで探索していた冒険者パーティーがあったんだけど、急に騒ぎ出したから何かと思えば宝箱を見つけたようだったのだ。

だけど、オレの索敵ウィンドウには宝箱は表示されていなかった。

索敵ウィンドウは万能だと思ってたけど、これに表示されるのは生物のみのようだ。

正に盲点。

宝箱の探索はより慎重にしないと見逃す可能性があることが分かった。

ドロップ品も少なくて、グラススネークの上位種であろうハイグラススネークってのから、ハイグラススネークの皮っていう緑の蛇皮があっただけだ。

あらかた12階の探索が終わったから(オレは索敵もできるうえに飛んでるからサクサク進むんだよね)さっさと13階にすすんだ。

ちなみに12階のボスはキラーマンティスだったけど数を大幅に増やして30匹くらいいたよ。


13階は、草原と森が半々くらいあるようだ。

まずは手前の草原を探索だ。

草原の方は、11階と12階に出てきた魔物とだいたい同じ。

ただ森の方から出てきたのか、フォレストウルフの群れに遭遇した。

ストーンバレットで攻撃してすぐに煙になって消えたけどな。

それから更に探索を続けてそろそろ森の方へ行こうかと思い始めたところにキラーマンティスの上位種っぽいクィーンキラーマンティスがいた。

鑑定したところ、魔物ランクCだった。

クィーンと言うからにはメスなんだろうな。

そう言えばカマキリのメスって交尾し終わった後にオスを食うって聞いたことがある。

そんなことを思い出しながら普通のキラーマンティスより一回りデカい上に更に凶暴な感じが増したクィーンキラーマンティスに対峙した。

やはり動きが素早い。

オレに向かって腕の鎌を素早く振り上げて切りかかってくる。

負けじとオレはレーザーブレードで切りかかった。

あっさり腕を切断。

片腕になったクィーンキラーマンティスが「キシャァァァッ」っと威嚇しながらもう一方の腕の鎌で襲い掛かってきた。

それをレーザーブレードが腕を切断しそのまま胴体ごとズバッと切り裂いた。

クィーンキラーマンティスは奇声を発しながら煙になって消えた。

レーザーブレード最強だね。

って、ドロップ品なしなわけ?

クィーンキラーマンティスが消えた後には何も無かった。

ドロップ品があるのをちょっと期待してたからがっかりだ。

森の方に期待だな。

さっさと森に行こうと進んだところ、長めの草に隠れてひっそりとあったそれを遂に見つけた。

ダンジョン初の宝箱である。

木の箱でできたそれをドキドキしながら開けてみた。

中には布に包まれた小さなものがポツンとあった。

布を開けてみると、小指の先ほどの大きさの紫色の宝石があった。

思わず「おおっ」と声が出た。

何の宝石だろう?

鑑定してみる。


 【 アメシスト 】


アメシスト、紫水晶か。

楕円形にカットされたそれはキラキラと輝きを放っていた。

なんでカットまでされているのかは疑問だけど、ダンジョン産だしね。

ダンジョンは不思議がいっぱいだから突っ込まないことにしとこう。

それにしても綺麗なもんだ。

ここはまだ13階だからそんなに価値があるもんじゃないかもしれないけど、こういう宝石とかってお宝って感じがしてテンション上がるね。

それに13階でこれなんだからもっと下の階に行けばダイヤモンドとかエメラルドとかルビーなんかの高そうな宝石が出てきそうで期待が持てる。

よし、森の方へ行ってみよう。

また宝箱が見つかるといいけど。

森で最初に出会った魔物は1メートルはあろうかという蛾の魔物だった。

うへぇ、何か鱗粉まき散らしてるぜ。

あの鱗粉はいかにも毒っぽいな。

とりあえず鑑定。


 【 デスモス 】

 【 魔物ランク : D 】


おぅ、名前にデスって付いちゃってるよ。

明らかにあの鱗粉吸ったらダメなヤツだね。

ということは、近くに寄ったらマズいな。

ならこれで潰れろ。

「ロックボール」

直径30センチほどの岩玉(ロックボール)が3個デスモスに向かって飛んでいく。

ロックボールがダンダンダンッと次々当たり、デスモスはべシャリと潰れて消えた。

その後はダンジョンの外でも見たことがある、フォレストウルフ、ワイルドボア、ビーストベアーと続いた。

ただダンジョンのフォレストウルフ、ワイルドボア、ビーストベアーは外のと比べると少し大きかったような気がするが。

探索を続けていると、また初見の魔物を見つけた。

角を合わせると1メートルを超え背中部分が岩のようなカブトムシの魔物だ。

鑑定。


 【 ロックビートル 】

 【 魔物ランク : D 】


ゲッ、こっちに突進してきてる。

なんかもの凄い好戦的な魔物なんですけど。

うおっ、来んな。

って、ヤべッ、羽広げそう。

「ライトニングニードルッ」

羽を広げて飛んでこっちに向かって来そうになっていたロックビートルにライトニングニードルを打ち込む。

ふー、ちょい焦ったぜ。

背中にあんなの背負ってても飛べるんだな。

まぁ一応カブトムシだから飛べるのか。

「グゥゥゥ」

ロックビートルを倒したところでオレの腹の虫が鳴いた。

索敵ウィンドウで時間を確認すると夜の7時を回っていた。

「もうそんな時間なのか。夕飯にするにしても、セーフティーエリア探さないとな。セーフティーエリアはっどこだ~っと」

索敵ウィンドウを確認すると、この近くだとちょうどボス部屋の手前にあるようだ。

ボス部屋の手前か。

うーん、どうしようかな。

まぁ、ダンジョン潜って初日だし、そんな焦って下に行かなくてもいいか。

そうすると今晩はそこのセーフティーエリアで休んで明日朝一番にボス部屋行って下に進むってことで。

さてそうと決まったら早くセーフティーエリア行こう。

腹も減ったしね。


セーフティーエリアに入ると、結構な数の冒険者が集まっていた。

オレの噂も割と広まったのかそれほど驚く人はいない。

空いてるスペースまで飛んで行って座ろうとしたが、さてどうしようかと思案した。

昼食を食べたときの11階の芝生の生えたセーフティーエリアと違ってここは土が剥きだしだった。

オレ素足だし、服もあんまり汚したくないんだよな。

・・・・・・あ、あれがあった。

ダンジョン初ドロップ品のビッグホーンラビットの毛皮だ。

オレはビッグホーンラビットの毛皮をアイテムボックスから取り出して敷いた。

うん、いい感じ。

座り心地もなかなかだ。

あんまり価値はなさそう何て言ってごめんよ、ビッグホーンラビットの毛皮あって良かったぜ。

夕飯何にしよっかな?

あ、これ宿の熊おっさんに頼んだヤツだけどまだ食べてなかったな。

夕飯は、ここヴェーメルの名物ワイルドバッファローを使ったシチューにした。

ワイルドバッファローのシチューに茶色いパン、そして水を用意。

「いただきまーす。」

まずはワイルドバッファローのシチューを一口。

味濃いめのブラウンシチューが体に染みる。

「はぁ、美味い」

次はワイルドバッファローの肉を一口。

よく煮込まれた肉が口の中でほろほろと崩れる。

「うん、うん、いいね」

パンをちぎってシチューに浸して一口。

「おぉ、美味い」

ワイルドバッファローのシチューを食べていると「ゴクン」と誰かが唾を飲み込む音がした。

周りを見ると、セーフティーエリアにいた冒険者たちがオレ(ワイルドバッファローのシチュー)を凝視していた。

おおう、またそうなるのかよ。

だが、やらんぞ。

・・・・・・・・・。

ちょっと、そんなに凝視されたら食ってられないし、いたたまれないってば。

何でこう冒険者飢えてるのかね?

クソ―、もうしょうがないな。

でもワイルドバッファローのシチューはやらないぜ。

仕方がないからアイテムボックスから串肉を出して「食うか?」と言うと、冒険者たちが我も我もと集まってきた。

集まってきた冒険者に1本ずつ串肉を配ると、あれだけあった串肉が半分近くになっていた。

あー今日はデールたちにも配ったからなぁ。

でも、串肉効果かいろんなことが聞けた。

ここにいるのは5パーティーなんだけど、下の階に行ったことがあるパーティーもけっこういた。

ここから下の階はずっと森林なんだけど、18・19・20階層にはその中に山とか川とかがあるらしい。

それに毒持ちの魔物がけっこういるから解毒ポーションは持ってた方がいいということだった。

何でも毒には回復魔法も効かないから、パーティーに回復魔法使いがいても解毒ポーションは必須なんだそうだ。

あれ?毒に回復魔法は効かないって、オレ、ジャイアントビーにやられた冒険者を回復魔法で治したことあるんだけど?

「ジャイアントビーくらいの毒なら回復魔法でもなんとか大丈夫だが、ここにいるのは致死性の毒持ちばっかりだからな。そういうやつは回復魔法でも治らねぇんだよ。」

なるほど。

って致死性の毒っておっかねぇな。

オレの回復魔法ならそれでもいけそうな気はするけど。

毒持ちの魔物で一番注意しなくちゃいけない魔物は何か聞いてみた。

「そりゃやっぱりキングデスモスだろうな。」

冒険者の1人がそう言うと他の冒険者も次々頷いた。

「あいつの鱗粉は肌に触れれば爛れるし、吸い込んだら20分以内に解毒ポーションを飲まないと確実に死ぬからな。」

わお、けっこう強力な毒なんだね。

「キングデスモスっていうと、デスモスの上位種だよね。デスモスにはそこで会ったけど、キングデスモスが出てくるのは何階からなん?」

やっぱりデスモスの鱗粉はヤバかったんだね。

キングデスモスの方が強毒ではあるだろうけど、デスモスもそれなりの毒ではありそうだ。

「ちょ、ちょっと待て。デスモスにそこで会ったって、この階で出たのか?」

1人の冒険者にそう聞かれたので頷いた。

すると冒険者たちがザワザワ騒ぎ出した。

何でも一定のサイクルでデスモスが出現し、11階層から20階層のどこかで出ると連鎖するように各階に出るようになるんだそうだ。

「デスモスが出るならヤバいな。俺たちは今回は解毒ポーションを持ってきてないから明日にでも街に戻るぜ。」

今回、解毒ポーションを持ってきていないパーティーと持っていたが使ってしまったパーティーがあり、その2つのパーティーは一度地上に戻るそうだ。

2つのパーティーの冒険者たちは「解毒ポーションは高いんだよな」とボヤいていた。

何でもポーションの類はみんな高いが(ファンタジーものによく出てくる回復ポーションやら魔力ポーション等あるらしい)、特に解毒ポーションは薬師でも一定のレベルに達していないと調合できないらしく他の物よりちょっと高いらしい。

そういうこともあって11階層以上を潜るなら解毒ポーションは必須と言われつつも、今回のパーティーのように持ってこないパーティーもあるんだそうだ。

ほーなるほどねぇ。

オレは何でも魔法でいけそうだからポーションの類は必要ないだろうけど。

それにしても、こうして冒険者たちといろいろ話すと勉強になるな。

やっぱ冒険者同士の情報交換は大事だね。




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