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38 珍種妖精、ダンジョンに潜る(その4)

ダンジョン11階。

一面が草草草のだだっ広い草原だ。

聞いてたとおり、こりゃ広い。

11階から20階層にいる冒険者が一番多いとのことだったけど、それは本当のようだ。

遠目に冒険者がいるのが確認できた。

さて、この広い草原を探検といきますか。

ドロップ品や宝箱も多くなるってことだしな。

草原を飛んでいると、最初の魔物を見つけた。

デカい芋虫だ。

大型犬サイズで見た目は少し黄色っぽくてカブトムシの幼虫に似ている。

それがムシャムシャ草を食っていた。

これもラノベとかネット小説では初期の雑魚魔物として出てくるね。

実物はキモ過ぎだけど。

初見だから一応鑑定。


【 ジャイアントクロウラー 】

【 魔物ランク : G 】


やっぱし雑魚だね。

そんなことを考えながらジャイアントクロウラ―の周りを飛んでいると、白い物が飛んできた。

「うわッ」

もちろん回避したけど、雑魚だし動きも鈍そうだからって余裕ぶっこいてたら攻撃されちゃったよ。

なんかネバネバした糸出してきやがった。

まったく失礼しちゃうぜ。

手の先に光の剣(レーザーブレード)を出すと、ジャイアントクロウラーの胴体の真ん中あたりをスパッと切りつけた。

ギィィっと小さな鳴き声(?)を上げて煙となって消えた。

索敵ウィンドウを確認すると、この辺にはジャイアントクロウラ―がそこかしこに点在していた。

ジャイアントクロウラ―を屠ること20匹目、煙となって消えた後にドロップ品がポツンと残っていた。

白い糸の束だった。

鑑定してみると【ジャイアントクロウラ―の糸】と出た。

そのまんまやんけ。

まぁ小金にはなるだろうと、アイテムボックスに放り込む。

遠くから叫び声がした。

「ウ、ウォォォッ」

見ると冒険者パーティーが何かの魔物に襲われてるようで、剣や魔法で応戦していた。

でも、周りに魔物らしきものは見えないんだけど・・・。

索敵ウィンドウを確認すると、青い点の冒険者の周りが赤い点滅で埋め尽くされていた。

赤い点滅の正体はキラーバイトグラスホッパー。

グラスホッパーっていうとバッタの魔物か。

どうも苦戦しているようなので、近くまで行ってみた。

近くまで行くと、キラーバイトグラスホッパーがどんな魔物だかが分かった。

20センチくらいの大きいバッタだ。

それが無数に飛んでいた。

無数にいるキラーバイトグラスホッパーが次々と冒険者たちに襲い掛かっている。

冒険者が剣や槍をめちゃくちゃに振り回して、魔法使いがやけに自分たちの近くに魔法を放っている理由が分かった。

小さいから剣や槍をふるっても中々当たらないし、魔法を放っても数がいるから1回や2回ではどうにもならないのだ。

こりゃ数の暴力だね。

昆虫型ってのは1匹1匹の強さはそれほど強くはない分数で勝負って感じなのかね。

ジャイアントビーもそんな感じだったし。

このキラーバイトグラスホッパーも1匹当たりの強さはそれほどでないというか子供でも殺せそうなほど弱いけど、それが何千と襲ってきたらね。

冒険者も今はまだ大丈夫そうだけど、戦闘に時間がかかり過ぎると危ないかもしれない。

「ちょっと、どうすんのよッ?!」

「こいつが出るなんて聞いてないぜッ」

「誰か虫除け草持ってないのッ?!」

「アレは高いからもう少し稼いでから買おうって話になってだろッ」

「おいッ、どうすんだよッ、このままじゃヤバいぜッ!!」

あー、皆焦ってるね。

一応助けた方がいいのか?

「おーい、助太刀するか?」

そう声をかえてみると「助けてくれッ!」と返事があったので助けることにする。

これから冒険者としてやってくんだから、冒険者同士の助け合い大事だよね。

「すぐ終わるから、目を閉じて鼻と口を手で覆っておいて。」

昆虫型の魔物にはこれに限る。

「殺虫剤」

冒険者がジッとしているのを横目に、プシューっと無数にいるキラーバイトグラスホッパーに向けて殺虫剤を掛けていく。

殺虫剤に対する耐性はあまりないのか、かけたそばから煙となって消えていく。

プシュー、プシュー。

プシュー、プシュー。

プシュー、プシュー。

キラーバイトグラスホッパーがあらかた消えると、辺りが殺虫剤で白っぽくなっていた。

さすがに息苦しく感じたから風魔法で殺虫剤を飛ばした。

よし、これで大丈夫だな。

「終わったぞ。もう目を開けて大丈夫。」

そう言うと冒険者たちが恐る恐る目を開けた。

最初はやっぱりオレを見て驚いていたけど、ここでもオレの噂を聞いていた奴がいて何とかオレが冒険者だってことは理解してもらえた。

「俺は『グリフォンズウィング(グリフォンの翼)』のリーダーのマティアスってもんだ。助太刀感謝する。」

『グリフォンズウィング』はマティアス含めて男3人女2人の5人の冒険者ランクDのパーティーだった。

「怪我は大丈夫か?」

5人とも深い傷は見当たらないが、キラーバイトグラスホッパーに齧られて血が滲んでいる箇所が多々ある。

「ああ。みんなそれほど深い傷はないから大丈夫そうだ。あの状態が長く続けばどうなったかはわからないけどな。」

何でもマティアスたちは普段から11階から13階層を中心に探索しているのだが、今回は不運にもキラーバイトグラスホッパーの大発生に当たってしまったとのことだった。

「キラーバイトグラスホッパーってあんまし会いたくない手合いの魔物なのか?」

そう聞いてみると、やっぱり強さというよりあの数で襲ってくることを考えると、この階層で出会いたくない魔物ナンバー3には入る魔物とのこと。

本当は虫除け草(その名のとおり虫除け効果のある草を乾燥させたもの。それを焚くと、虫除け効果+今回のキラーバイトグラスホッパー程度の魔物であれば動きを鈍くすることが可能だそうだ)があればこんなことにはならなかったのだが、虫除け草は産地が限られる上にダンジョンに潜る冒険者にも人気の品で手に入りにくくなっているそうだ。

しかも、値段も高値になっていてダンジョンで購入資金を貯めてからでないと購入できないそう。

「それにしても、よくあの数を相手にできたな。白い煙みたいなのを出してたけど、アレは何なんだ?」

あー、あれはね、オレの特殊魔法だよ。

まぁ詳しく言っても信じてもらえなさそうだしね。

「ところで、あれだけの数のキラーバイトグラスホッパーを倒したなら、ドロップ品があると思うんだが回収したのか?」

キラーバイトグラスホッパーのドロップ品はなんと大銀貨だそうだ。

ドロップ品を落とすのは稀ではあるのだが、あれだけの数がいたからには20枚近くあるだろうとのことだった。

大銀貨、1万円って微妙だな。

でも、もらえるものはもらっとくぜ。

とは言っても、『グリフォンズウィング』がいなかったらキラーバイトグラスホッパーには気付かなかっただろうし、ダンジョンに専念してるとは言っても金に余裕がありそうでもなさそうな上に襲われ損ってのもちょっと可哀そうな気がするな。

「ドロップ品は半分ずつにしよう。」

そう言ったら、最初は固辞してたけど、拾うのが大変だから手伝ってほしいからその代金だよって言ったら渋々納得してくれた。

大銀貨を拾いながら、リーダーのマティアスから「実を言うとうちはそんなに余裕ないから、あんたの申し出は本当にありがたい。ホントありがとな。」とお礼を言われた。

まぁ今のところ懐も温かいし、これからダンジョン下階層にどんどん挑んでいくつもりだからね。

ドロップ品の大銀貨は22枚あったので、11枚ずつ分けた。

『グリフォンズウィング』のみんなは傷はたいしたことはないが、さすがに疲れた(今日でダンジョンに潜って6日目だったらしい)ということでこれで引き上げるとのことだった。

「それじゃ気を付けてね。」

『グリフォンズウィング』のみんなに手を振って別れた。

オレは基本ソロだけど、こういう冒険者同士の触れ合いもいいもんだね。

さて、探索の続きと行きますか。

草原を探索していて遭遇した体長3メートルくらいありそうな緑色のヘビの魔物のグラススネークというのをレーザーブレードで首ちょんぱして、50センチくらいのこれまた緑色のクモの魔物のグリーンスパイダーというのを十数匹ライトニングニードルで屠ったところで、オレの腹が空腹を訴えた。

「そう言えば、昼まだ食ってなかったな。」

索敵ウィンドウで時間を確認すると(あったらいいなと思って時間も表示するように設定済だ)昼を大分過ぎていた。

1階1階クリアしてくのが楽しくて夢中になってたな。

セーフティーエリアが近くにあるみたいだし、そこで昼食にするとするか。



セーフティーエリアは思ったより広く、テニスコートくらいの広さがあり芝生が生えている。

そこには3パーティーほどが思い思いに休憩していた。

オレがセーフティーエリアに入っていくと、やっぱり少し驚かれたけどオレの噂を聞いていた冒険者がいたみたいですぐに収まった。

さてと、今日の昼食は何にしようかなー。

けっこう魔法も使って腹も減ったから、大好物のこれにしよっかな。

オレはから揚げとパンをアイテムボックスから取り出した。

コップに魔法で水を注いでと、これでよし。

「いただきます。」

揚げたてのままの熱々の塩から揚げにかぶりつく。

あ~やっぱりから揚げは正義だね。

美味い美味い。

から揚げを食っていると、熱い視線を感じる。

セーフティーエリアにいた冒険者たちがオレの食っているから揚げを凝視していた。

やっぱそうなるのねん。

あーはいはい、しょうがないね。

揚げ物料理の伝道師(自称)だし、普及活動しますか。

「食う?」

から揚げが山盛りに盛られた皿を差し出すと、わっと冒険者たちが集まってくる。

山盛りのから揚げはすぐに消えた。

食い終わった冒険者が再びこっちを見ている。

おいおい、そんなもの欲しそうな顔して見んな。

視線に耐え切れずに、仕方がないから追加のから揚げを差し出した。

再びわっと集まる冒険者。

何で冒険者ってこんなに飢えてるのかねぇ。

男も女も夢中になって食ってるよ。

から揚げが美味すぎるのせいなんだろうけどさ。

ってか、人数増えてね?

これ以上集られるのもあれなんで、山盛りのから揚げを3皿ほど置いてセーフティーエリアをそっと抜け出した。


それから、赤と黄色の毒々しい色をした1メートルくらいのチョウの魔物その名もポイズンバタフライをレーザーブレードでサクッと切り捨て、再び出てきたグラススネークをレーザーブレードで首ちょんぱした。

中型犬サイズのデカいモグラの魔物リッパーモール(これがなかなか姑息な奴で、地下の穴から出てきて冒険者の足をその鋭い爪で切りつけるのだ)を見つけて、その通り道に魔法で大量の水を流し込んで溺死させたりもね。

そんなことをしつつ宝箱がないかくまなく探した。

でも、残念なことに宝箱は見つからずドロップ品もなかった。

キラーバイトグラスホッパーのドロップ品があったし、こんなもんなのかもね。

とりあえず、索敵ウィンドウで確認したボス部屋らしきところに行きますかね。



この階のボス部屋らしき場所は、草原の窪地にあった。

円形状になった窪地には、見るからに凶暴そうなデカいカマキリの魔物が8匹ほどいた。

その奥に石の扉が見えた。

下の階に行くには何にしろあの狂暴そうなカマキリを撃破しないとね。

カマキリを鑑定してみる。


【 キラーマンティス 】

【 魔物ランク : D 】


ランクDの魔物だ。

それにしても聞いてたとおり、11階からは魔物ランクGからこのキラーマンティスのランクDまで種類も多いしランクも様々だ。

12階層からはもっとランクも上がっていきそうだし、もしかしたら最下層にはドラゴンとかいるのかもしれない。

わくわくが止まらんね。

さっさとキラーマンティスを仕留めて次の階行くとしよう。

鎌状の腕を振り上げながら素早い動きでオレに近づくキラーマンティスをヒョイっとかわして魔法を打ち込む。

「ウィンドカッターッ」

旋風の刃(ウィンドカッター)がキラーマンティスを切り刻んだ。

キラーマンティスが消えた後に一振りの刀が残っていた。

おお、ここにきてドロップ品が出たぞ。

早速鑑定。


【 曲刀蟷螂(きょくとうかまきり) 】


うん、何の捻りもない名前だね。

とりあえず回収だ。

さて、12階行くぜ。




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