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30 珍種妖精、ダンジョンへと旅立つ

旅に必要というか、生活していくうえで必要なアレを注文しなくちゃな。

前々から欲しいとは思ってたんだよ。

布団がね。

やっぱりふかふかな布団で寝たいし、その方がぐっすり眠れるしね。

睡眠は大事だよ。

今はおっさんの部屋のソファー使ってるからまだましだけど、旅となればそんなのないからな。

地面に布敷いただけのところでなんか固くてとても眠れそうにないぜ。

今なら資金にも少しは余裕があるし、さっそく注文だ。

服を作ってくれた服屋に向かう。

前に聞いたときに布製のものなら注文受けてくれるみたいだから大丈夫だろう。

そんなワケで早速服屋に来た。

「すいませ~ん」

服屋の店主に敷布団と掛布団と枕の説明をしてお願いした。

まぁ似たようなものはあるから、すぐにどんなものかは分かったようだ。

特に敷布団の方にはたっぷり綿をつかうようにお願いしたら料金が全部で金貨3枚と大銀貨5枚もかかったぜ。

やっぱり綿がけっこうな値段するみたいだ。

まぁ布団はこれからの生活でも必需品だから注文したけどね。

急ぐようにお願いはしたけど出来上がりは3日後になるそうだ。

それから財布代わりの布のきんちゃく袋が欲しかったから(ここの人は財布代わりに布きんを使ってるんだ)ついでに店主に聞いてみたら、そういう小物類は布製でも服屋では取り扱ってないらしく雑貨屋で取り扱ってるとのこと。

こっちの金は硬貨ばっかりだからいい加減財布が欲しかったんだよ。

オレは雑貨屋に向かい、小ぶりな布きんを2つ購入した。

1つは貯蓄用でもう1つが普段使い用の財布代わりだ。

こっちには頼れる者もいないから何かあった時に使える金はあった方がいいからな。

貯蓄は大事だぜ。

あとは食器類を大量に購入した。

なぜかというと、旅でも美味い物が食いたいからだ。

旅だからって干し肉やら乾パンなんて味気なさすぎるし、とても満足できそうにないからな。

せっかくアイテムボックスがあるんだからこれを利用しない手はないだろ。

だから1食分ずつ皿にもってアイテムボックスで保存しておくつもりだ。

時間経過なしだから出来立ての温かいまんま中に入れておけるしな。

マスターに頼んでできるだけ用意してもらおうと思ってる。

それから屋台の串焼きなんかも買えるだけ買って保存しておく。

多くてもアイテムボックスに入れておけば邪魔にはならないし、全く困らないからな。

それからハムやチーズなんかもすぐ食べられるから買っておこう。

あとはパンも多めに買っておかないと。

飲み物は魔法で水が出せるからそんなに困らないな。

やっぱり食い物関係だな。

よし、布団ができるまでの3日間に食い物を集めよう。




□■□




服屋に行って布団を受け取ってきたところだ。

なかなかいい感じに出来ている。

これで旅の最中でもよく眠れそうだ。

それからこの3日間でできるだけ多く食い物も集めてある。

マスターにオークやらコカトリスやら卵なんかの材料を提供しつつ料理を作ってもらって、1食分づつ皿に盛ってアイテムボックスに収納してある。

ちなみにマスターへの支払いはオーク3体とコカトリス10羽だ。

最初は金で払おうと思ったんだが、マスターがオークとコカトリスがあるのならそっちにしてくれってことで現物でということになった。

なんでも『から揚げ』がメニューに加わってお客が増えてコカトリスはいくらあっても困らないし、客が増えたことでオーク肉の注文も増えたのだそうだ。

揚げ物料理の伝道師としては『から揚げ』が着々と根付いているようで嬉しい限りである。

串焼きも何件かの屋台を回りながらけっこうな数集めた。

ハムとチーズもでかい塊で買ってあるし、切り分けるナイフも購入済みだ。

パンも何件かのパン屋から買い集めたから十分な数がある。

旅の準備はできた。

あとは商隊の護衛のクエストがあればいいんだけど・・・。

冒険者ギルドの受付のいつものおばちゃんの窓口に行ってみた。

「ヴェーメル行きの商隊の護衛のクエストってないかなぁ?」

おばちゃんがちょっと待ってくださいって言って確認している。

「あるにはあるのですが、依頼主の方は5~6人のパーティーでの護衛を希望されているのですよね。」

あーやっぱ護衛任務となるとそうだよな。

「でも、妖精さんはブラックカードだしねぇ。ちょっと待っててもらえるかしら。」

そう言って奥に行ってしまった。

まぁいつもの通りおっさん呼びに行ったんだろうな。

「ヴェーメル行きの商隊の護衛のクエストを受けたいか。やはりダンジョンか。」

思ったとおりおっさんがやってきてそう言ったので、オレは頷いた。

「ちょうど依頼主が来てるから話を通してやる。ちょっと待ってろ。」

なんでも依頼主はヴェーメルに店を構える商人で、10日後に大事な商談があるとかで急いでいるのだそうだ。

少しすると、おっさんが依頼者の商人らしい40代くらいの中肉中背の人族の男を連れてきた。

「こちらは依頼主のヤンセンさんだ。」

オレがどうもと挨拶すると、ヤンセンさんはあからさまに不安げな顔をしていた。

まぁ当然そうなるよな。

突然、全長30センチの妖精の冒険者を紹介されりゃ。

「あの、失礼ですが、本当に大丈夫なのですか?」

ヤンセンさんがおっさんにそう聞いた。

「断ってもよろしいですが、ヤンセンさんのご希望である5~6人のパーティーとなると今は出払っておりましてな。ご希望に添えるのは3、4日後になってしまいます。」

そう答えたおっさんにヤンセンさんが「それは困ります」と顔を青くしている。

「それでは商談に間に合いません。準備もあるので、すぐにでも出発したいところなのに・・・。」

おっさんがヤンセンさんに「それならば彼に頼むのが一番手っ取り早いですよ」と言っているが、ヤンセンさんはどうしても心配なようだ。

「先ほどもお伝えしたとおり、彼はブラックカード冒険者なのですよ。ブラックカード冒険者になれる者は極わずかで彼も実に150年ぶりに出たブラックカード冒険者なのです。ですから一般にはあまり知られていない存在ですが、ブラックカード冒険者はある意味ランクSSSの冒険者よりも上の存在だと言っても過言ではないのです。」

そう言ってもまだ不安そうな顔をしてるヤンセンさんにおっさんが更に言った。

「ブラックカードを出している以上、その能力については冒険者ギルドが保障します。」

そこでようやく決心したのかヤンセンさんが「分かりました。お願いします。」と言った。

このクエストの報酬は大銀貨6枚とのことで、おっさんにもそれでもいいかと聞かれたがもちろんOKした。

だってこのクエストがなくたって1人でもヴェーメルに向かってたんだから、それに比べたら金までもらえるんだから儲けもんだぜ。

ヤンセンさんはとにかく急ぐというので、すぐさま旅立つことになった。

「おっさん、世話になったな。」

おっさんにはなんだかんだ世話になったからな。

「お主はとにかく面倒事だけは起こすなよ。」

失礼しちゃうな、今までのブラックカード冒険者と一緒にしてほしくないぜ。

「分かってるって。おっさん元気でな。またこの街に来ることがあったらよろしくな。」

こうしてオレはヤンセンさんの商隊の護衛としてヴェーメルへと旅立った。

アディオス、ラサミア!




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