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20 珍種妖精、ジャイアントビーを討伐する

「お主、本当に一人で大丈夫なのか?依頼をしておいて変な話だが、ジャイアントビーの討伐はかなりきつい仕事だぞ。」

あー、それね。

昨日散々聞かされたよ。

ジャイアントビーは単体ならそれほど強くなて、魔物ランクも下から2番目のFランクと低い。

それこそ冒険者になりたての初心者でも倒すことは可能だ。

しかし、集団になるととてつもなく危険になるってこと。

巣の討伐ともなると難易度はグッと高くなって最低でも冒険者ランクC~Bの者のパーティが3つは必要になってくるんだってことをね。

ここで昨日聞いた冒険者ランクと魔物ランクの整理をすると、


 【冒険者ランク】

   (低)G → F → E → D → C → B → A → S → SS → SSS (高)


 【魔物ランク】

   (低)G → F → E → D → C → B → A → S → SS → SSS (高)


とある意味冒険者ランクと魔物ランクは対になっていて、目安として自分の冒険者ランクと同じ魔物ランクの魔物(単体)を相手にできることになっている。

例えば冒険者ランクBの冒険者は、魔物ランクBの魔物(単体)を相手にできるということだ。

だが、これはあくまで単体を相手にした場合の目安であり、魔物の数や状況によってクエストの難易度(クエストランク)も変わってくる。

クエストランクは、各冒険者ギルド支部がその知識と経験を鑑みて決めることとなっているそうだ。

おっさんが言うには、このジャイアントビー討伐のクエストを出すときにラサミア支部として設定するクエストランクはBだということだ。

クエストランクSのクエストは20年前にあった地竜(アースドラゴン )討伐で、SSやらSSSとなると火竜(レッドドラゴン )やら古竜エンシェントドラゴン の類のほとんど御伽噺でしか聞かないような魔物の討伐となって、そんなランクのクエストがあったのは数百年も前の事だという話だ。

そうなるとクエストランクBは高難易度ランクに分類され、それをソロでこなすなど酔狂どころか死にに行くようなものだと言われた。

まぁ普通はそうだろうね。

でも、オレ魔法チートだからな。

昨日の晩にちょっと考えた魔法があるんだ。

少し実験もしてみたんだが、イケそうな気がするから大丈夫だ。

おっさんは未だにオレ一人で行かせていいのかどうか迷ってるみたいだけど。

「おっさん、そんなに心配しなくて大丈夫だって。おっさんだってオレのこと鑑定したんだから分かるでしょ。大船に乗ったつもりで待っててくれよ。」

オレはそう言い残してジャイアントビー討伐に向かった。




□■□




ジャイアントビーに襲われた冒険者パーティーから聞いた場所に来ている。

北の森を中程まで進んだ所だ。

この辺で100匹くらいのジャイアントビーに襲われたそうだ。

とは言うものの、オレはまだジャイアントビーの姿を見ていない。

辺りを警戒しながら探索していると、それを見つけた。

逃げ遅れて犠牲になった冒険者パーティーのメンバーと思われる2人の亡骸。

ジャイアントビーに捕食されて骨だけになっていた。

「昨日の今日で、これかよ・・・すごい食欲だな。」

亡骸の周りには剣と槍とボロボロになった皮鎧等が散乱していた。

オレは手を合わせた後、骨だけになった2人の亡骸と拾い集めた遺品をアイテムボックスに収めた。

生き残った冒険者に、もし2人を見つけたら連れ帰ってくれと懇願されていたからだ。

本当にこの世界は弱肉強食だよなぁ。

魔法チートで転生できて良かったぜ。

更に辺りを探索していると、ブーンという音が聞こえてきた。

音のする方を見ると、探していたジャイアントビーがいた。

「デカッ。」

思わずそう言ってしまうほど大きい。

全長30センチのオレと同じくらいの大きさで見てくれはスズメバチにそっくりだ。

そんなジャイアントビーが20匹近く飛んでいた。

ん?何かの肉抱えてるな。

食料を巣に持ち帰るところか?

オレは気付かれないようにジャイアントビーの後を追った。

ジャイアントビーが止まった先に巣を見つけた。

とにかくデカかった。

2階建住宅くらいの大きさの巣が巨木の根元にに張り付くように作られていた。

巣の出入り口から忙しなくジャイアントビーが出たり入ったりしている。

「ジャイアントビー自体デカいって聞いてたから、巣もデカいんだろうなとは思ってたけど、ここまでとはね・・・」

陰からデカ過ぎる巣を見上げながら呟いた。

さて、ジャイアントビー討伐といきますか。

まずは、大元であるあのデカい巣を処理しないとな。

オレは昨夜考えた魔法を使った。

「オーブン」

その言葉で、巣の周りに結界魔法が展開する。

そして、その中が徐々に熱せられていく。

昨夜、ジャイアントビー討伐にはどんな魔法がいいかって考えていて、昔見た某チャンネルの蜂の特集番組で蜂は熱に弱いと言ってたのを思い出した。

熱でどうにかするにしても、数が多いジャイアントビーを相手にするならまずは巣をどうにかしないけない。

巣を熱するにしても、森の中でファイヤーボールを放ったらそれこそ山火事になるし、といろいろ考えて、オーブンみたいに蒸し焼きにできないかと思ったのがきっかけだった。

それでいろいろ試してみた結果、オレが使う魔法はかなり自由が効くうえに○○みたいなとかこんな感じのとか曖昧なイメージでもある程度の魔法を展開することができることが分かった。

もちろん細かく設定してイメージした方がより正確に強力に展開できるが。

今までは、ファンタジー小説で出てきた魔法を参考にしながらやっていたけど、前世の知識からこんな感じの魔法でってイメージしながらやってみたらできちゃいましたぜ。

それでできたのがオーブンだ。

電子レンジでも良かったんだけど、巣が爆発しそうなのでやめておいた。

うーん、いい感じで蒸し焼きにされておりますな。

巣の入り口付近に居たジャイアントビーがボトボト地面に落ちていく。

「チンッ」

タイマー設定もできたからとりあえず10分で設定しておいたんだ。

10分加熱したんだからみんな死んでると思うんだけど・・・何か確認する方法ないか?

あ、オレ鑑定持ちだった。

って鑑定して分かるのか?

とりあえず、鑑定。


【ジャイアントビーの巣】

  ジャイアントビー(女王)の死骸   1匹

  ジャイアントビー(成虫)の死骸 1457匹

  ジャイアントビー(幼虫)の死骸  882匹


「おお。できた、けど・・・」

もの凄い数だな。

成虫なんて1000匹超えてるよ。

とりあえずさっさと回収してしまおう。

オレは巣と地面に落ちたジャイアントビーをアイテムボックスに収納していった。

あとは巣から出てたジャイアントビーの討伐だな。

それには打ってつけの魔法がある。

ジャイアントビーの巣を回収して、その周りを中心に生き残ったジャイアントビーを探していると、すぐに最初の生き残りを発見した。

オレに気が付いたジャイアントビーがオレに向かって飛んできた。

「殺虫剤」

プシューッ。

前に突き出したオレの手の平から薬剤の霧が勢いよく噴出した。

その霧を浴びたジャイアントビーがポトリと地面に落ちた。

自分でやって何だけど、効き目抜群だな、コレ。

やっぱ虫には殺虫剤だよな、と昨夜編み出した魔法だ。

プシュー、ポトリ。

プシュー、ポトリ。

プシュー、ポトリ。

ジャイアントビーを見つける度に殺虫剤を噴き掛けること数十回。

「ふぅ。もう、大丈夫だろう。」

この辺りを何度か回ってジャイアントビーの姿がないのを確認して終了とした。


それにしても、オレが魔法チートでホント良かったよ。

前世の知識も生かされたし。

1000匹越えのジャイアントビーだなんて、あんなのまともに相手にしてたらいくつ命があっても足りないもんな。

ってか、前世の知識もオレの魔法には大いに役立つことが分かっただけでも大きな収穫だ。

これからは前世の知識も大いに役立てつつオレは魔法チートでこの世界を渡り歩いて行くぜ。




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