18 珍種妖精、回復魔法を使う
風呂から上がってギルドマスターのおっさんの部屋に戻ろうとすると、ギルドの入り口周辺で怒号が飛び交っていた。
「誰か回復魔法使える奴はいないかッ?!」
「回復魔法の使い手なんて滅多にいるわけないだろッ!神殿から神官を呼んで来いッ!!」
「それじゃ間に合わんッ!」
「誰か中級ポーション以上のもん持ってないかッ?!金は払うから持っていたら譲ってくれッ」
「中級ポーションなんてそんな高価なもんここで持ってる奴いるわけないだろッ!」
そんな怒号が飛び交う中、その中心を見てみると、全身が赤紫色に腫れあがった男の冒険者が横たわっていた。
「何があったんだ?」
近くにいた冒険者に聞いてみると、オレを見て一瞬「妖精かよ?」と驚いていたが教えてくれた。
狩りに出ていた冒険者のパーテーがジャイアントビーに襲われたのだと。
おっさんがやっかいな魔物だと言っていたあのジャイアントビーだ。
襲われたパーティーには6人のメンバーがいたが戻ってきたのは4人。
そのうち一人が今横たわっている男の冒険者で、見てのとおりかなり重症で今にも死にそうだ。
ジャイアントビーの毒のせいか全身パンパンに腫れあがって大変なことになってるぜ。
ここはオレの出番だな。
「ちょっとごめんよ。」
オレは人垣を抜けて重症冒険者の近くまで進んだ。
「何だ妖精ッ、あっち行ってろッ!」
重症冒険者のパーティーメンバーだろう男に怒鳴られたが、あんたこそ大人しくしとけって話だ。
「こいつ助けてやろうってんだから、あんたは黙って見とけ。」
今にも死にそうな重症冒険者に回復魔法をかける。
「ヒール(特+毒消し)」
回復魔法については、危険がいっぱいのこの世界じゃ需要も多いだろうし、ちょっと考えてはいたんだよ。
分かりやすさが一番ってことで、オレの中で考えてた回復魔法は
ヒール(小)・・・打ち身や切り傷等を治す。
ヒール(中)・・・縫う必要のある大きな切り傷や骨折等を治す。
ヒール(大)・・・手術が必要な大きな怪我や病気全般を治す。
ヒール(特)・・・四枝欠損や死期が近い人も治す。
ヒール(神)・・・正に神のごとき回復魔法。死後1分以内であれば全快で生き返
らせることができる。
こんな感じだ。
ヒール(神)はネタで設定した。
後悔はない(キリッ)。
魔法チートのオレならばこの設定もイケるはずだ。
毒消しはその名のとおり毒消しだな。
ジャイアントビーは毒持ちだっておっさん言ってたからな。
どんな毒かもわかんないし、とにかくどんな毒も消し去る感じでイメージしたからこれでOKだと思う。
オレが回復魔法をかけると、重症冒険者の体が光に包まれた。
光が収まると、全身が赤紫色に腫れあがっていた冒険者の体が腫れも引いて健康的な肌色に戻っていた。
「ん・・・」
重症冒険者が目を覚ました。
「おいッ、大丈夫かッ?!」
パーティーメンバーの男が問いかける。
「あ、あぁ。俺は・・・」
重症だった冒険者が少し混乱気味なようだが無事であることを確認してパーティーメンバーの男がへたり込む。
一連の流れを見守っていた外野が騒ぎ出した。
「す、スゲェ」
「ああ、こんな凄い回復魔法初めて見たぜ。」
「神官だってここまでの回復魔法を使える者は王都にしかいないさ。それもほんの数人だ。」
「それを神官でもない妖精が・・・」
「この妖精スゲェな」
「スゲェ妖精だ」
ふははははははは。
いいぞいいぞ、もっとオレを褒め称えてちゃっていいんだぜ。
オレは褒められて伸びるタイプだからな。
やっぱ魔法チートなオレ最高だな!