第四回 パクリとオマージュ【盗作】
2014/9/3
今回からこのエッセイを書き始めた本題のパクリとオマージュについて3回に分けて私なりの考えを述べさせてもらいます。
今回は盗作がメインです。
ついでに、小説を書く練習の仕方についても触れます。
【パクリ、パクリって言われてるけど、パクリって何がいけないの?】
法的な問題で言えば、「著作権法」に抵触している(またはする恐れがある)のが問題になります。
また、他人の作ったものをあたかも自分のものであるかのようにしているため、世間的なイメージも悪いものになります。
【具体的に盗作って何よ?】
盗作は、ウィキなどで書かれた内容を要約すると『他人のアイディアを自分のアイディアであるように発表する』ってことです。
上記の文章を広義でとれば、前回《第三回 設定》で紹介したように設定が似通っている作品が多い「なろう」にある作品の大部分に当てはまりそうなものですが、実際には盗作だと思える作品は多くないと考えられると思います。
設定が似通っているのになぜ盗作だと思う作品が少ないのかと言えば、少なからずオリジナリティを加えているからです。
【オリジナリティってなんぞ?】
例えば、「なろう」の日間ランキングで上位によく位置している多くの作品には魔法という設定があるでしょう。
その魔法が誰でも使える世界、特定の人物しか使えない世界、失われた技術として扱われる世界などがあります。また、主人公が魔法を使う作品、魔法を使わない作品、魔法意外の魔法に似た能力を使う作品などもあります。
魔法という現実には存在しない技術や世界の法則についてその作者オリジナルの設定を用いる作品も多いです。
魔法で例を挙げましたが、魔法以外にも既存の作品と差異化を図って自分なりの設定という+αを加えることで盗作ではないオリジナルの作品として発表できるわけです。
とは言っても、それだけでは弱いですし、魔法の異世界ファンタジーは「なろう」にて跋扈しすぎな感じですから、オリジナルの作品ではあっても、オリジナリティには欠ける印象しか与えられないとは思いますが……
また、『他人の考えたアイディアを自分のアイディアのように発表する』という盗作の裏を返せば、『他人の考えたアイディアを他人の考えたものだとわかるように自分の作品で発表する』というやり方でなら盗作ではない。と言うことになります。
そして、これがネタやオマージュと言えるわけです。
ネタやオマージュについては次回以降に詳しく書くつもりなので、今回は割愛で。
【オリジナルとオリジナリティって違うの?】
自分で0から考えて、他の作品の影響を受けて作られた作品は、影響の度合い次第ですがオリジナル作品ではあっても、オリジナリティのある作品ではありません。
具体的に言えば、《第三回 設定》で例に挙げたように
『異世界に召喚された主人公が冒険者になって美人の奴隷を買ってキャッキャウフフ』
『神様のミスで死んでしまったのでチート貰って異世界転生』
のような作品は基本的にオリジナリティに欠けます。
あくまで基本的にです。
どうやればその「基本的」な作品じゃないオリジナリティのある作品にできるかを簡単に言えば
「最初にやれ」
ってことです。
でも、前にあんたがいろんなアイディアが出し尽くされたから完全なオリジナル作品なんて無理って言ってたんじゃん。と思うかもしれませんが、別に完全にオリジナルじゃなくていいんです。
異世界転生した……けど、ゴブリンだった。
異世界転生した……けど、特典のチートないから自前の知識だけで内政チートした。
異世界に召喚された……のに、やることがなにもないからまったり日常生活をする。
などなど、最初に誰かが考え付いて、その作品が面白いから真似る人が増えているわけです。
この回を書いている間に思いついたオリジナリティのありそうな設定をいくつか書いてみます。
・魔法のある世界から魔法のない世界に異世界トリップして世界中に魔法を広める話
・ヒロイン全員がヤンデレで主人公が刺される度に死に戻りする学園ラブコメディ
・世界最強の王と言われた主人公が神のミスで死んだから転生のチャンスを与えられたけど、あえてそれを拒否して「この神の世界を我のものにする」と言って天国で神様相手に大暴れする戦記
・異世界トリップの特典でなんでも創造できるクリエイト能力を手に入れた主人公が、異世界で異世界そのものを作って異世界無視して自分の作った異世界を箱庭的に運営する異世界創造記
・異世界転生で未来のSF世界のしかも宇宙支配を目論む銀河帝国の王子様に転生する話
などなど、転生やトリップなどのありきたりな設定でもあまり見かけないオリジナリティと言うのは出てきます。(5分で思いついた端からテキトーに羅列しただけなので、見たことのある設定だったらごめんなさい)
今までに見たことのある設定でも、余人が考え付かない組み合わせなどでオリジナリティを生み出すことも可能なわけです。
【文章コピペで盗作だから出版停止になった(以下略)】
ここまではアイディアを設定として書いてきましたが、なにも設定だけがアイディアではありません。
小説で肝心要の文章もまたアイディアに含まれます。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、何年か前にも某ラノベ新人賞で出版社から販売されている他者の作品から丸まる1ページだかを登場人物以外ほぼそのままの文章で使い、その新人賞で賞を受賞したことがありました。
当然、新人賞で賞を受賞したのでその作品も販売されたのですが、文章のコピーが発覚して販売停止とという事態になってしまいました。下手をすれば訴えられて損害賠償などえらいことになります。
文章も個人の創作物であり、アイディアに含まれるため盗作にあたるわけです。
具体例を挙げて説明しますと
☆
昇る朝日を見つめながらガイは今までのことを思い返していた。
共に戦ったレナ、スクルド、アリア、仲間たちの姿が浮かんでは消えていく。
「俺、諦めないから……見ててくれよ」
決意を新たにガイはそう呟いた。』
☆
という文章があったとします。
また、
☆
昇る朝日を見つめながらパクリは今までのことを思い返す。
一緒に戦ったテキ、トー、デスやたくさんの仲間たちの姿が思い浮かぶ。
「絶対あきらめたりしない……だから、見ててくれ」
小さくつぶやくパクリの言葉には新たな決意が宿っていた。
☆
と、こんな文章があったとします。
前者の文章と後者の文章を読み比べてみると、少し違いはあるもののほぼ同じですよね?
ここまで一緒だとパクリと言われても言い訳できないと思います。
まぁ、今回の例で挙げる文章が短いので判別できない可能性もなくはないですが、はっきり言って上記2つの文章は似すぎです。
同じような場面を描くのでも、ここまで文章が似かよることはそうそうある話ではないでしょう。
では、同じような場面でも盗作ではない文章とはどんなものかと言いますと
☆
水平線の向こうからゆっくりと太陽が昇るのを見つめながらガイはこれまでのことを静かに思い返していた。
長い戦いを共に戦った仲間たちの姿が浮かんでは消え、また消えては浮かぶ。弓を引くレナの姿が、果敢に大きな魔物に挑んだスクルドの姿が、柔らかな微笑みを向けてくれたアリアの姿が、走馬灯のように頭の中を通り過ぎる。
「諦めない。だから、みんな……見ててほしい」
朝日を見つめながらガイは決意を固めた。
オレンジ色の空から3人が自分を見ていてくれる。そう思えばこのままあきらめることなど選べるはずもなかったのだ。
☆
と、こんな感じです。
情景描写が細かくなっただけですが、同じ場面を描いていても表現は違います。
ここまで文章が違えば、文章というアイディアについてパクリとは言えないものだと思います。
この他にも、描写を三人称ではなく一人称にするなどで同じような場面でも違いは出すことは可能です。
文章が似ないようにという話にも聞こえるかと思いますが、文章はその人の癖がありますから、意図しない限りパクリと疑われるような文章を書くことはないと言うのが私の考えです。
自分の意志でコピペからのパクリ行為をしようとでもしない限り、それほど心配しなくてはいいでしょう。
何が言いたいかと言えば、文章の引用はたとえそれが個人的な趣味で書いている作品だとしても、公表してはいけないってことです。
【盗作と練習と公表】
他者の書いた文章をそのまま使用するのは盗作だと言いましたが、文章の練習において自分が目標とする作品を真似て書くことは非常に有効な方法です。
まずは、その人の文章をそのまま書いてみる。
そうすることで、気づかなかった言葉の使い方に気づくこともできますし、語彙を増やし、小説の書き方を学ぶこともできます。
次に、目標にしている作品を自分なりに表現してみる。
似たような設定の話を考えるのではなく、同じ登場人物、世界観、設定、展開をそのまま利用し、1から目標にしている作品を書き直してみるわけです。
プロの作品などでも自分なりの書き方をしてみると雰囲気が変わって面白いこともありますし、自分の作品を書くときの表現の幅を広げることができます。
そして、目標にしている作品の書き方を真似て小説を書いてみる。
今度は、人物などの設定などは変更して文章だけを真似るやり方です。
前述したとおり、小説の文章には個人の癖があります。その(作者の)書き方が好きだから自分も真似ると言うのは悪い話ではありません。漫画やイラストを描くときに自分の好きな作品(作者)に絵柄が似るのと同じです。
文章や設定はアイディアであり、作者個人の財産ですが、技法に関してはその限りではないのです。
昔の人は言いました。
「技術は習うものではない。盗むものだ」と。
念のために言いますが、作品の設定や展開などを似せるのではありません。
文章を似せるのです。この意味が分からない人は、はっきり言ってこの方法を試してはいけません。
と言っても、ちょっとわかり辛いかと思いますので、例を挙げましょう。
作中で『ドカーン』などの音をそのままの形で表現するのは小説ではよくないこととされています。しかし、ラノベなどではそれも表現方法の1つです。
目標としている作品がそういった表現を使う作品だとします。
書き方を真似るとは、音をそのままの形で使うという方法を真似るわけです。
そのほかにも、動物の鳴き声だけは「bowwow」と言った風に英語で表現する作品があったとします。
この表現を真似るわけです。
表現だけに偏っていますが、地の文章や会話の書き方など作者ごとに違いがあり、その表現を学び、自分のものにできれば1つレベルアップできるわけです。
これを2つ3つといろいろな作品で繰り返して行けば、より高いレベルになれるでしょう。
と、ここまではタイトルの【盗作と練習と公表】の「盗作」と「練習」だけに偏ってきましたが、「公表」についてです。
この方法で練習したら思いのほか面白い作品になった、人の意見が聞きたいから「なろう」で公表しよう。
ダメです。
思いのほか面白い作品になるのはある意味当然です。だって、あなたが面白いと思うプロの作品をパクッた作品なんですから。
それじゃあ、この方法で練習してたらいつまでたっても公表できる作品なんて書けないじゃないか。と思うかもしれませんが、盗作に該当し、公表してはいけないのは2段階目の「他者の作品を自分なりに表現したもの」までです。
3段階目の「書き方を真似たもの」であれば、書き方は似ていてもあなたのオリジナル作品ですから、問題ありません。
気を付けなければならないのは、他者の作品をほぼそのまま真似た作品はあくまで個人の目に留まる練習の作品であり、出来に関わらずインターネットなどの不特定多数の目に留まる場所で公表するのは盗作に該当するということです。
自分なりの表現に書き換えた作品を友人などに見てもらう程度であれば問題はないですが、他者の作品であるとわかる形にしていてもそれをそのままインターネットにアップしてはいけません。
ネタやオマージュなどはどうなのだ。と考える方もいるかと思いますが、その辺の詳しいところはまた次回以降と言うことで。