お犬様の可愛らしさは異世界なんぞ関係ないようです
現役JKに指名された、当店ナンバーワンお犬様のコマは、何故か俺のズボンのポケットに紛れていた犬用ジャーキーをみて熱い視線を向けている。無論ジャーキーをもっているのはサキちゃんだ。さながら「君のためならなんでも(芸を)する」といった面持ちだ。
「コマちゃーん、お手!」
コマはふん!と鼻を鳴らして右手をポンとおく。
「コマちゃーん、おかわり!」
コマは反対の手をポンとおく。そろそろヨダレが絨毯に落ちそうだ。
サキちゃんはジャーキーを床に置き、待てをさせて頭をナデナデ。
うん。コマそこ変われ。
「コマちゃんよし!」
コマはヒャッハー!という声がしそうな勢いでジャーキーを貪る。尻尾はハリケーン常態だ、ちゃんと噛めよ。
「コマちゃんは偉いですねー」
「躾ば頑張ったはんでなー、食い意地ばっかし張ってらはんで、芸の覚えばしはえがった。」
数秒の間があいて、理解した!という顔のサキちゃんがコマに「食いしん坊さんなんだねー」とコマを抱き上げる。
トントンとドアがノックされ、DOGEZAさんことフレイ姫がやってきた。今度はローブではなくドレスだ。サマードレス?ドレスの種類なんぞわからん。その背後から白衣を着た如何にも信楽焼!という感じのお腹の大きなおっさんが1m四方の箱を抱えてやってきた。白衣って異世界にもあるのか…
「失礼します。この方は王立魔剣研究室の室長、ヌキータ・ハフマンといいます。皆様にはこの箱の中にある異形の者の一部を見ていただき、その上で今後の身の振り方を考えていただきたく。もちろん送還の魔法陣が完成するまでは最低限王家の庇護の下保護させていただきます。」
ヌキータって、まんまじゃないか。
取り敢えず質問だな。
「倒せたんですか?」
「辺境武士団の半数が犠牲になりなんとか一体だけ倒したようなのてすが、異形の者は事切れたあと爆発してしまい、この箱の中の部分だけしか回収出来ませんでした。」
「危なくないの?で、ですか?」
サキちゃんは敬語苦手っぽいな。
おもむろに狸のオヤジが口を開く
「研究室での解析の結果、これ単体で動いたり爆発したりはしないと確認しております。」
俺はポンポンと膝を叩きコマを膝の上に呼ぶ。きちんとコマが座り直してから二人の顔を見合わせ、頷いて口を開く。
「で、では見せてください。」
狸のオヤジがテーブルを退かし、俺たちの真ん中に箱を置いて蓋を開けた。
すると中には所々配線の飛びたしたガントレットの様なものが鎮座している。
「触っても?」
「ええ、どうぞ。」
「カズマサ君、コマを預かって貰える?」
「は、はい。」
なにやらサキちゃんが残念そうな顔をしているが、まー気にしない。別にコマばっかり良い思いをしてるからカズマサ君に預けた訳じゃない。ないったらない。
俺は立ち上がってそのガントレットの様なものに触れる。滑らかな触り心地で、金属の上に陶器のような薄いコーティングでもしてるかと思うくらいのツルツル感。
材質はわからん。続いて持ち上げて断面を見ようとするが、持ち上がらない…
なんだ、これ?見た目の割にスッゲー思い。
俺の様子を見て狸のオヤジが箱を分解して横から断面を見れる様にしてくれた。
中には透明な物が線になってギッシリ詰まっており、5本の配線の様な物が違う材質で飛び出している。
これはもしや…ロボット?
この透明なのが筋肉の役割をして、配線が神経かな?
いやまてよ?じゃあ骨はどこだ?
考えても拉致があかないのでコマをカズマサ君から引き取り、残り2人に順番を変わる。
するとドゲ…フレイ姫が真剣な面持ちで
「あ、あのエリヤ様、その…コマ様を抱かせていただけませんか?」
コマよそのモテ力を俺にも分けてくれ。