日本語です…
臭い…
なんだろう…開けたてのレバーペーストの匂いがする…
それと生暖かい…
はっ!
っと目を開けると、コマの顔がどアップだった。
コイツ、ドッグフード食った口で顔舐めてやがったな、顔がベチャベチャだ…
そういえばなんで寝てたんだっけ?
確か朝飯食っててなんて考えながら起き上がると、全然知らない所のようだ。
辺りを見渡せば40メートル四方くらいの石造りの室内。
薄暗く、天井には光源がない。石の床には幾何学模様が組み合わさったような魔法陣らしきものが、ぼうっと淡く光っている。
「どごだべ?」
とコマをなでなから呟く。
コマの尻尾も不安そうに床に垂れ下がっている。
薄ぼんやりとした視界に三つほど判別不能な影がある。
家ではメガネをしない主義なのでいつもポケットに入っているソレを装着。メガネ男子の完成だ。
高校の頃に急に乱視になってからの付き合いだ。
当時の後輩には似合わないと言われ、コンタクトにしようとも思ったが、如何せん目に異物を入れるという行為が怖くてやめた。
だってコンタクト使ってる友人に聞いたらさー。初めての時はお医者さんに目にコンタクト突っ込まれるって言うんだもの、怖いじゃん?
よく見ると影は人間のようだ。
小学生くらいの男の子と背の高い女の子、兄弟だろうか?制服を着てる。学生か。
顔立ちはここからじゃ解らないがブレザー着てるし、たぶん日本人かな?
立ち上がってもう一つの影に近づくとこっちはなんか藍色のローブ?ポンチョ?を着た金髪の女性だ。年の頃はまー同じくらいかな。ローブはなんかの刺繍だろうか、模様が床の魔法陣らしきもののように光っている。よくよく見るとかなり豪華な服装だ。精緻な飾りが幾重にも施されている。
三人とも気を失っているようだ。
…なんかさっきから魔法陣とかローブとかファンタジックな物が目に付くけど…
いやいや、まさかな。
取り敢えず誰か目が覚めるまでコマでも弄ろう。うん、そうしよう。
「コマ、こいへ(おいで)」
コマに声をかけると部屋の角をスンスンかいでいた所、こちらに振り返りタタタと小走りに近づいて来る。
というか、いつの間にそんな所まで行ったんだコイツ。フリーダムだな。
そのまま撫でくりまわし、コマも乗ってきて「ヘイ!腹もなでなよ!」と言わんばかりにお腹を向ける。
ムツ○ロウさんばりによしよしと撫でていたが、周りは誰も起きる気配はない。
どうしよう…不安だ…
声でもかけてみようかなーなんて考えていると、制服の男の子がムクリと起き上がった。
辺りを見回している、俺が目に入ったようで声をかけてきた。
「すみません、ここは何処でしょう?僕はなんでここに?」
「わりーばって、わもわがんね。」
「あれ?外人さんかな…でも顔は日本人っぽいのに」
……方言がキツすぎたか。
まあ、俺の方言は爺ちゃん婆ちゃんが使うようなドギツイのだしな。
取り敢えず意識して標準語で喋ろう。うん、なんか緊張してきた。
「ごめんごめん。気が動転してて、方言が出ちゃって。俺は衿谷 太輔っていうんだ。俺も気づいたらここに居てね、何が何だかわかんない。」
「なんだ、そうだったんですか、一瞬外国の方かと。」
「まー若い子は地元の子でもわかんないみたい、俺は方言キツイ方だから。ところでお姉さんの方は大丈夫?」 「お姉さん?」
と、ここで少年は隣の少女に気がやっとついたらしく、はっとして慌てて彼女を揺さぶった。天然かな?
「彩生!彩生!」
「あー、少年少年。どこか身体を打ち付けてたりするかも知れないからあんまり揺らさない方が…」
「あ、そ、そうてすね…どうしたらいいんでしょう?」
「取り敢えず呼びかけるだけでいいんじゃない?あんまりそういう方面は俺も詳しくないし。」
「は、はい。彩生?彩生ー?」
少年がサキサキ言っていると、何故か金髪の女性のほうが会社に寝坊したっ!?って感じの顔でガバっと起き上がった。
キョロキョロ辺りを見回し、ヨロヨロと立ち上がり、こちらに向かって来るなり
「大丈夫です、召喚の儀式によって怪我をする事はありません。私はフレイ・織田・アートゥルム。ここは大陸統一国家サルザスの王都サルザス、王城アズチ城です。いきなりの召喚、まずはお詫びします。申し訳ありません。」
そう言って、金髪の女性はDOGEZAした。
な、なんて?