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03



 机に突っ伏してお腹を押さえる。

 でもきゅるぅ、と可愛くなるお腹は変わらない。

 傍らに浮遊するリンも申し訳なさそうにしているが、リンが悪いわけじゃない。

 最初に食料を確保しておかなかった自分が悪い。



「大丈夫……。大丈夫だよ……。0時になればDPは補給されるはずだし、それくらいならなんとか……。そう! 私にはリンがいるんだから! 可愛い可愛い私のリンを見ればお腹くらい!」



 顔をガバッと上げリンを見る。

 数時間かけてカスタムした甲斐がある素晴らしい出来。

 私の好みどおりの顔にすらっとしたスタイル。

 初期装備の妖精チックな例の服のためぴったりと体の線がでている。決して大きくなく、されど小さくもない鳩胸はその存在を仄かに主張していて、腰もキュッとしまっている。お尻は小さくこれも私の好みだ。

 趣味全開でカスタムしたのだから当然だけどやっぱり可愛い。


 あぁ……。私のフェアリーちゃん。最高すぎる。



「リン、可愛い……」


「ありがとうございます。ですが、シエリ様は大変麗しく神に選ばれた至高の存在。わたくしと比べるのもおこがましいことではありますが、比較などできないほどの美しさにございます」


「え、えっと。ありがとう?」



 妄想から零れた言葉にリンが律儀に返してくれるけど、食堂には鏡がないから自分の顔なんてわからない。それに自分の顔なんて正直興味ない。

 リンが可愛ければそれでいい。あぁリン可愛いなぁ。


 しばらくリンを眺めてニヤニヤしているとお腹の方も大分紛れたような気がする。



「よっし! リン、探検するよ!」


「畏まりました」



 椅子の上に立ち、ビシッと人差し指を斜め上に向けるとそう宣言する。

 恭しい態度で優雅に一礼するリンに椅子から下ろしてもらうと、さっそく探検開始だ。


 操作室で確認した時にはあまり部屋の数はなかった。

 でもさっきは踏み台を探していたのであまりよくみていない。なので探検して何がどこにあって何が必要なのかを確認しないといけない。

 0時になってDPが補充されたら食料と一緒に買っておきたい。



「まずはここ、食堂だね」


「リビングダイニングともいえますね」


「うん、それそれ。一通り必要そうな物は揃ってるかな……? 食料以外」


「はい、ですがもしよろしければいずれはオーブンなども購入していただければと思います」


「あーそういえばオーブンないね。レンジもないし。鍋とか食器とかはあるのかな?」


「はい、先ほど確認したところ調理器具は基本的なものだけですが揃っています。いずれ少しずつ追加していただければ十分かと思います」


「そっかそっか。とりあえずは必要な物だけ買うからちょっと時間かかるかなー」


「畏まりました」


「よっし、じゃあ次!」



 食堂を抜けて洗面所へ。

 大きな鏡に洗面台、隅のほうにドラム式の洗濯機と上には乾燥機。洗剤も柔軟剤もないようなのでこの辺も買わないとだめだろう。

 タオルはかけてあるが歯ブラシもなければドライヤーもない。

 コップもないのでその辺は食堂のを使えばいいんだけど出来れば専用のが欲しい。

 他にも髪をセットするのに必要な諸々も欲しい。まだ3歳の体だから化粧は必要ないけど乳液くらいは欲しい。

 パックはなくてもお肌は気にしないでも大丈夫だろう。

 化粧品よりもどっちかっていうと服が欲しい。アクセサリーの類はいらないけどもうちょっとマシな服が欲しい。

 まぁ今着ているのは安くて動きやすさを重視したから仕方ないといえば仕方ない。


 あとはリン用の服も欲しい。どこぞのパンが出てくるネバーなところの妖精が着ているような例の服しかないらしい。

 なのでリン用の服も買わないと。



「やっぱりメイド服かな。ひらひらのふりふりでふわふわなのが……ぐふふ」


「シエリ様……?」


「ハッ! な、なんでもないよ!?」


「そうでございますか」


「うん、大丈夫大丈夫! さぁ次次! といっても次はお風呂か。おっきいねー」


「はい、シエリ様なら30人は一遍に入れそうなほど広いですね。掃除のし甲斐がありそうです」



 無表情のリンの瞳が怪しく光る。

 さすが超1流のメイド知識と技術を持つスーパーフェアリー。家事仕事に関する熱意は並じゃない。



「おっきな浴槽のほかにも普通にシャワーがあるね。あ、そうだ。腰掛が操作室におきっぱなしだった」


「持ってまいります」


「うん、よろしくねー」



 すいーっと空中を滑るように移動していくリン。

 やっぱり羽根は動かない。いいなぁあの浮遊能力。欲しいなぁ。


 お風呂場には石鹸やシャンプーなどはなく、シャワーからお湯はちゃんと出るのでまだマシだろう。

 お湯の制限はないようでいつまで出してても問題ないけど必要もないので止めておく。

 あとでリンにお風呂沸かしてもらおう。一応保温機能とかついてるので今入れてもいいけどリンの仕事を取っちゃダメダメ。

 なんせ家事仕事に熱意を燃やすスーパーメイドさんなんだから。


 近場なのですぐにリンが戻ってきて腰掛をシャワー近くに置いて戻ってくる。



「じゃあ次いこうかー」



 次は洗面所の透明じゃない方のドアだが、もちろんトイレだった。

 ついでなので小さい方の用を足しておく。

 もちろん洋式で便座は保温機能付きでウォシュレット完備。トイレットペーパーも一応用意されているけど3ロールしかない。

 シングルタイプの再生紙ですって書いてあった。どうでもいいけど。


 これも買っておかないといけない。でもウォシュレットで洗って温風で乾燥もしてくれるのであまりいらないかもしれない。


 次は食堂に戻って奥のドアを開けると寝室だった。

 ベッドとクローゼットが置いてあるだけの部屋だ。食堂よりも小さい。

 でも3歳児には大きいベッドだ。



「リン、ベッドまでおねがーい」


「畏まりました」



 ベッドもちょっと3歳児には高いのでリンにお願いして移動させてもらう。

 あまり柔らかくないけど硬すぎることもなく、普通といった感じだろうか。

 部屋は寒くないので毛布が1枚と枕がおいてあるだけ。

 まぁ寝る分には問題ないか。


 あとはリン用に小さい籠と毛布が欲しいかなー。3歳でも一緒に寝たら潰しちゃいそう。



「リン用のベッドはDPが補充されたら買おうね」


「ありがとうございます。ですがそのお気持ちだけで十分にございます」


「だーめ。リンはよくても私がいやなの。ほんとは一緒に寝たいけど私寝相悪いから潰しちゃうからね。だからリンにはリンのベッドを買うよ!」


「畏まりました。シエリ様の春の日差しよりも暖かく美しいお心遣いに胸がいっぱいです」


「ふふ……。大げさだなー」



 リンも納得してくれたようなのでクローゼットを開けてもらったが、やはり中身は何もない。ハンガーの1本すらない。

 これも買わないとだめか。



「結構必要なもの多いねぇ。いくら補充されるのかわからないけど優先順位だけでも決めておかないとね」


「はい、最優先は食料にございます」


「うん、次は歯ブラシと歯磨き粉とシャンプーと石鹸かな」


「バスタオルなどの布類も出来れば欲しいですね」


「あーそうだねぇ。洗剤なんかは次の補充の時でもいいかな」


「着替えもなるべく早くほしいところです」


「リンの服も早く買わないとねー」


「いえ、わたくしの服の優先順位は最下位です」


「えー、リン可愛いんだからもっと着飾ろうよー」


「まずはシエリ様を優先させていただきます。わたくしの事に関しては余裕があるときで十分にございます」


「むぅ……。可愛いリンが見れれば1食や2食抜いたところで大丈夫なのにー」


「だめです。次は――」



 リンはお世話役だけど下僕じゃない。

 だから私の意見は尊重してくれるけど、しっかりとダメなことはダメっていう。

 でも私としては可愛い可愛い私好みのリンで色々したい。

 主に着せ替えの方向で。



「早くDPを溜めて色々できるようにしないとねー」


「はい、ですが無理は禁物にございます」


「はーい」



 まだまだ最低限の部屋に、最低限の物。必要そうな物資に至ってはほとんどないマイダンジョン。

 頑張って色々出来るようにしていこう。



 リンが一緒ならなんでも出来る気がするし、やりすぎる前にリンならしっかり諌めてくれる気がする。


 さあがんばろう!



 0時までまだまだ時間があるから何もできないけど!



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