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「か、可愛い!」


「ありがとうございます、マスター」



 片膝を突いた状態で上げられた小さな顔がまた下がり戻ってくる。

 最高傑作と言えるほど時間をかけて頑張ってカスタムした甲斐がある素晴らしい出来だ。



「膝突いたままだと痛いでしょ? 飛んでいいよ?」


「寛大なお心遣い痛み入ります。それでは失礼致しまして」



 淡く発光している羽根を少し羽ばたかせるようにすると光り輝く粉が舞い、小さな体躯はゆっくりと舞い上がる。

 その様はまさに妖精。

 種族名に恥じない美しさだ。



「あなたの名前はリンだよ。これから私のお世話係を命じます」


「畏まりました、マスター」


「マスターじゃなくてシエリって呼んで」


「畏まりました、シエリ様」



 宙に浮かんだまま恭しく頭を下げるリン。

 光り輝く粉は宙に浮かび上がる時だけ出るようで、滞空している今は出ていない。

 羽根も動いておらずどうやって浮力を維持しているのかよくわからないけど問題ない。

 だってこの世界は前の世界とは違うんだから。



 そう、私はこの世界とは違う世界で生まれ、生き、そして死んだ。

 転生という言葉が相応しいだろうか。


 実際に色々あって今いるこのダンジョンでダンジョンマスターという種族として転生した。



「私はこの世界のことをあまり知らないから、いろいろと教えてくれるとうれしいな」


「畏まりました。それでは1日に数時間ほど勉強の時間を設けましょう」


「べ、勉強……するの?」


「はい、シエリ様はこのダンジョンのマスターです。それ相応の知識を持つべきです」


「う、うぅ……。お、お手柔らかに……」


「もちろんにございます。わたくしはシエリ様のお世話係にございますので、体調から食事まで全てを完璧に管理してご覧に入れます」


「う、うん……。よろしくね?」


「はい、よろしくお願い致します」



 カスタムで完璧に設定したとはいえ、ちょっとやりすぎてしまったかもしれない。

 カスタムで設定できる項目はDPを消費すればどんどん増やせる。

 それを利用して残りDPの全てをつぎ込んで完璧に作り上げた。

 その設定の中にはメイド知識から貴族、王族、庶民、奴隷に至るまで人族、獣族、魔族、亜人族など様々な種族の知識の全てと魔物関係に関する知識まで片っ端から設定してある。

 知識だけなら設定できる物のほとんどをいれてあるかもしれない。

 もちろんリンだけに全てをやらせるわけではないので武具や農業、鍛冶などの一部の生産系と戦闘系においての技術()省いてある。

 それでも料理から掃除までの家事関係の知識や技術も設定してあるので家庭教師兼秘書兼メイドさんといった役もこなせるスーパーフェアリーだ。


 そして完璧に作り上げた彼女のステータスを見ていたら設定した覚えのない項目がいくつかあることもわかった。

 これらは魔物を創造するとランダムで優劣が発生し、それに応じていくつかの追加項目がつくからだ。

 彼女――リンに追加された項目はかなりの数にのぼっている。

 その筆頭が武力超強化だろう。


 これは所謂戦闘系の技術。

 その中でも消費DPが極めて高いカスタム項目だ。

 戦闘系の魔物を作る際に追加するとそれだけでかなり大変なことになってしまうほどだ。

 だがリンはこれをランダム設定で取得してしまっている。

 主にお世話役として創造した子なのに戦闘系最強技術を持っているとは……。まさかの護衛まで出来るお世話役になってしまった。



「まぁ……。いいか」



 つい独り言が口をついて出てしまったけどさっそく側に移動し、控えるリンは特に何も言わない。

 目を閉じて静かにしている。

 だが主の言葉を一言も聞き漏らさないと言った雰囲気が滲み出ている。


 ……す、すごい。これがスーパーフェアリー……。


 とはいってもスーパーフェアリーなんて種族は当然ないんだけど。



「え、えっと……。じゃあ今日はもうDPがなくなっちゃったから何もできないし、お腹もちょっと空いたからご飯食べようかな」


「畏まりました。シエリ様、食堂の使用許可をいただけますか?」


「あ、うん。その他にもリンが必要だと思った事は許可とか取らないでいいよ?」


「寛大なお心遣いありがとうございます。それではさっそくお食事の用意をさせていただきます」


「うん。あ、私も一緒に行くよー」


「はい、シエリ様」



 移動するのもまったく羽根を動かさない様でちょっとあの羽根いるのかな、と思いながら食堂へと移動する。


 食堂はリビング側に6人掛けほどのテーブルと椅子も6脚置いてある。食堂というよりはリビングとキッチンがある部屋って感じだけどめんどいので食堂でいいや。

 転生したばっかりでおまけで3歳ほどの体にしてもらったとはいえ、大人サイズの椅子はちょっと大きい。

 操作部屋からせっかく買った踏み台を持ってくるのを忘れてしまったので面倒だけど取りに行かなければいけない。ついでにお風呂の腰掛も戻しておかないと。



「シエリ様、失礼致します」


「えっ」



 リンがそういうや否や私の体は宙に浮かびゆっくりと椅子に座らされる。

 あぁそうか、この子の追加スキルにはマナ制御技術があったっけ。

 マナ制御技術は魔法とは違い、マナと呼ばれる魔法を使うための力を第二の体として行使することができる技術だ。

 これが非常に便利で体の延長から単純にパワーアップにも使えるという万能技術だ。

 リンが側に居れば踏み台なしに高いところに楽勝でいけるというわけだ。さすがスーパーフェアリー、最高すぎる。



「ありがとう、リン」


「勿体無きお言葉」



 宙に浮いたまま優雅に一礼――カーテシーをしてキッチンに戻っていくリン。

 大きな冷蔵庫もリンにかかれば問題ない。マナ制御技術便利すぎ。

 しかし冷蔵庫を開いたリンの眉が顰められる。ここまで無表情だったリンの初めての表情の変化が微妙な表情なのでこっちも微妙な気持ちになってしまう。



「リン、どうかしたの?」


「申し訳ありません、シエリ様。冷蔵庫の中身を確認したところ中身がほとんど入っておりませんでした」


「ええっ!?」


「申し訳ありません」


「え、いや、リンのせいじゃないでしょ? それよりほとんどっていうことはまったくないわけじゃないんだよね?

 何が入ってたの?」


「はい、中身はケチャップのみです」


「……はい?」


「ケチャップのみにございます」


「……DPもうないよ……?」


「困りました」



 DPが残っていれば買い物で食料を買うことも出来た。でも残っていたDPは全部リンに使ってしまった。

 DPは毎日一定量追加されるがそれは0時にならないと無理だ。他にも補充方法はあるけど、今のところそれはできない。

 食堂に設置してある時計を見ると12時を示していた。

 DPが追加補充されるまで12時間はある。でもお腹は意識してしまったのもあり結構空いている。



「ど、どうしよう……」



 椅子で躓き、次に金欠で躓く。

 転生してまだ1日も経っていないのに、使いすぎには注意しましょうという教訓を得た私だった。



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