カワイイ女の子たち
×Woman Side×
「みんなちがって、みんないい。」
一つ年下の従姉妹である千秋は私が嫌うこの詩を、今でも机のマット下に挟んでいる。
小学校の国語の時間に皆で音読するそれを、純粋な希望と期待を込めて読めなくなったのは、おそらく高学年の頃だろう。
ちょうど、仲間の中での容姿の評価基準が変わった頃だ。それまで、その場で「××ちゃんがちょっとかわいい」「○○君がかっこいい」というだけで済んでいたそれが、れっきとした「地位を決定づける基準」となったのである。
今までは、友達やクラスメイトに優しい子やドッジボールでよくボールを取る子が人気者になっていた子供の世界の色が変わってしまった。特に女の子の間では、カワイくて(少し派手な方向に)おしゃれで、率直に周囲にものを言える子がもてはやされるようになっていった。
私は運動は得意ではなく、人あたりもよくなかった。大してカワイイわけでも、金に糸目をつけずにおしゃれができるほど裕福なわけでもなかった。当時の私は、少々学業成績が良く、読書好きなおとなしい子だったのである。
田舎の公立小学校で座学の成績がちょっとやそっと良くても、教室の中で主導権が握れるわけではない。クラス内で幅を利かせるのはいつだって、ヒラヒラした短いスカートとラメ入りの柄入り靴下と、ブランド物のシャツを着ている女の子たちだった。
中学生になってもその状況はなかなか変わらなかった。そのカワイイ子たちはさらに派手になり、ろくに勉強もしなかったし真面目なところなど何もない。ただノリだけはよくて行事の時や楽しい時間に周囲を盛り上げるので、華やかさのない私よりはずっと尊敬された。
……話がだいぶ脱線したが、あの詩が嫌いな理由を……いいや、今はいい。
背中が痛い。きっと、少し疲れているのだ。