異説鬼退治Ⅲ③
そこには予想外の人物がいました。
何がどう予想外って、桃太郎の高校で化学を担当している虎山先生が白衣姿で玄関の前に立っているのです。身長百六十センチと男性にしては小柄で恰幅のいい彼は、学校では敬意と親しみをこめて『マッドサイエンティスト』と呼ばれています。
「先生、一体どうしたんですか?」
桃太郎が驚くのも当たり前でしょう。
何せ、先生の両の手にはニトログリセリンの入った試験管が握られているのですから。
「ニヒヒ、ニトロの入った試験管がある」
見ればわかります。
「これを……」
「これを?」
「振る!」
「振るなぁ!」
玄関一帯が吹き飛びました。
これが、『マッドサイエンティスト』たるあだ名の由来なのです。彼は既に七十七回、理科の実験室を焼却した経験を持つ猛者です。いっそのこと『テロリスト』にあだ名変えた方がいいんじゃないでしょうか。
ところどころ白髪を焦がした虎山先生はよろよろと立ち上がりました。
「ところで、桃太郎。ワシの失敗作はおらんか?」
髪の毛がチリチリになった桃太郎もふらふらと立ち上がります。
「何ですかそれは。自爆する杏仁豆腐でも開発したんですか?」
「いやいや、人間兵器じゃ!」
ため息しか出ません。とりあえず、玄関の修理費は後でこの教師に請求しようということを頭に留めて、桃太郎はロボお爺さんとロボお婆さんを呼びに行きました。ついでに、ダイゴロウとポアロに虎山先生の監視を命じました。放っておいたらダイナマイトでもばらまきかねません。
桃太郎が二体を連れて戻ってくるやいなや
「おお、我が失敗作よ!」
どう見ても、ロボに喧嘩売ってるとしか思えないのですが、ロボ二体は素直に反応しました。
「コード認識、我ラガ主」
「うむ、良い」
虎山先生は満足そうに目を細めています。
「ところで、聞いていいですか? 一体何を開発しようとしたんですか?」
桃太郎の問いかけに虎山先生は
「美少女アンドロイドじゃ。実はの、ある筋から注文が入ったんじゃ。五千万円で美少女アンドロイドを作れないかと」
「はあ、そんな変態……もとい特殊な性癖の方がいるんですね」
「うむ。それでの、開発を進めていたら、この通りジジババになってしもうたんじゃアッハッハ」
これ多分、クライアントへの嫌がらせとしか思えません。
料理でコーヒーと醤油を間違えるとかいうレベルをとうに超えています。
「で、このロボは引き取ってもらえるんですね?」
「うむ。研究せねばならんでな。何せ、ブルマを履かせてピー(以下自主規制)なことが出来るようにとの注文も受けておる」
「誰ですかその致命的なセクハラ野郎は」
「とある富豪じゃ」
まさか世の中にお爺さんと似た性癖を持つ指名手配レベルの危険人物がいようとは。
「ピーピー! 高速デ熱源ガ接近中! 危険度S!」
突然鳴り響いたロボ二体の警報は今回の事件の始まりを告げるものでした。
こんばんは、jokerです。
久方ぶりの更新です。
ノリと勢いで書いています。
ちなみに本文中の醤油とコーヒーを間違えたネタですが、僕が自分で料理した時に間違えた経験からです。一人の時で助かりましたが(笑)
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




