二
館丸がやってきたその夜、遊羅はアヤメを傍らにおいて酒を飲んでいた。
遊羅の真横男が一人座って、供に酒を飲んでいる。
容姿からして歳は20代前半のとても美しい美男子だった。
青を基調とした服装でとても涼しげだった。
アヤメはさっきからずっと下を向いている、顔を上げたとしても上の空だ。
遊羅にはアヤメに何があったかすぐに悟った。しかし、遊羅はけっして何もしない。
遊羅はだいぶ酒に酔っているようだ。
相手も男もよっているようだ。
この男、名前を倉徒という。
倉徒は遊羅の肩を自分の方へ引き寄せた。
そして、耳元で囁いた。
「永久にこうしていたい。私は確信してるんです。私達は運命の二人だと・・・。」
遊羅は苦虫を噛み潰したような顔をして倉徒の手を払った。
倉徒はその遊羅の行動に焦った。
「どっ、どうかしましたか?」
遊羅は倉徒から顔を背けて扇子で顔を扇いだ。
そして、口を開いたのは控えていたアヤメだった。
「倉徒様、お引取りを・・・。主は今宵を永久の別れと決意しておりますゆえ。」
そうアヤメが言い終ると、遊羅は屋敷の奥に引っ込もうと立ち上がった。
すると、すかさず倉徒が遊羅の腕をつかんだ。
「何故なんです!こんな当然に・・・。理由を聞かせてください。私はこんなにあなたを愛しているのに。」
遊羅は決して口を開こうともしないし、顔を合わせようともしない。
口を開いたのはまたアヤメだった。
「主は一つの恋の終りを悟られたのです。どうか、お引取りを。」
そう言って、アヤメは倉徒との手を払った。
「私は終わったとは思っていない。」
倉徒はそう言って遊羅の唇を強引に奪った。
「私はこの身が焼けんばかりに貴方を愛して・・・・・・・・いるんだ・・・・・。」
遊羅は彼の言葉を聞かずして去っていってしまった。
そして、その後をアヤメが行った。
その場に置き残された倉徒はうなだれて、涙を流しながら姿を消してしまった。
「アヤメ。」
遊羅は部屋の中で就寝の準備をしていた。
寝巻きを着させているアヤメは遊羅の掛け声にビクリと反応した。
「はい・・・。なんでございましょう。」
アヤメは声を潜めて答えた。
「おまえ、館丸と情を交わしただろう。」
「まっ、まさか。悪い冗談はやめてください。」
アヤメは作業の手を止める。
「お前の顔はそう言っている。」
遊羅がアヤメの目を見て言った。すると、アヤメは土下座をして喋り始めた。
「お許しください。きまりは重々承知です。ですが・・・。」
「お前、あの男になんと言われたんだい?」
遊羅は自分で寝巻きを着て、枕に寄りかかって座り、アヤメを見た。
アヤメは俯いて答えた。
「遊羅様が御気に召しているお前ならきっと好きになれるだろうから・・・と。私はお断りしたんです。ですが・・・。」
「強引に・・・。というわけか。」
「はい、遊羅様私は誓います。もう二度とこのようなことはやりません。どうかお許しを・・・。」
そう言って、アヤメは額を床にこすりつけた。
遊羅はアヤメに歩み寄り、優しく微笑みながらアヤメの顔を上げさせて言った。
「お前があの者に心奪われたのなら、あの者のところへ行くと良い。だが、もし私のところにいてくれるなら、明日から私はしばらくここを離れようと思っている。だから、旅の支度をして出発を待っていなさい。お前は賢い子だどちらを選ぶかは自分で決めなさい。さあ、もう御休み。」
アヤメは何も言わす頭を下げて遊羅の前を後にした。




