不潔勇者、世界を駆ける
掲載日:2025/11/23
森の薄暗い光が苔むした地面に差し込む中、一人の男がゆっくり目を開けた。
「……ここは……?」
体が妙に軽い。しかし、鼻を突く異様な悪臭。
フケや垢、皮脂の混じった汗の匂いが充満している。
――俺の体が、臭すぎる。
小鳥は飛び去り、リスは枝の陰に隠れる。
森の小道に差し掛かると、人間の旅人が現れた。主人公に気づいた瞬間、顔をしかめ後ずさる。
「う、うわ……な、なんだこの臭い!」
「近寄るな!」
村人や狩人も次々に現れたが、全員が同じ反応。
誰も近づかず、肩を落とす主人公。
「……やっぱり、俺は一人なんだ……」
生前、初めて体を洗った瞬間、体内の不潔エネルギーが逆流し死んだことを思い出す。
そして今、異世界で目覚めたのだ。
⸻
森の奥に、小さなゴブリンの群れが現れた。
「……戦えるのか、俺?」
序盤の主人公にできることはたったひとつ。
•臭さを放ち、近づいた敵を
軽く気持ち悪くさせる
戦闘力はほぼゼロ。
ゴブリンは少し顔をしかめる程度で、攻撃を加えてくる。
主人公は必死に逃げ、枝や石にぶつかりながら距離を稼ぐ。
⸻
茂みに隠れ、息を整える主人公。
「……誰も味方はいない……でも……この世界に認められたい……!」
臭さだけの弱小転生者。
孤独の中で、生き抜く力をまだ知らぬまま模索する――。




