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秋の騎士として去る  作者: 天城らん


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第4話 黄金の外套《マント》


 そうして、うつうつとした気持ちのまま第一隊の隊長としての仕事を慌ただしく引継ぎをしながら過ごした。


 気が付けば、あっというまに論功行賞式の日になっていた。

 論功行賞式は、厳格な式ではあるがその後の祝賀会は無礼講の宴会だ。


「おう、銀閃ぎんせんやっと来たな!」

「グランツ先輩!! 待ってましたよ」

「なんだ、英雄。今日は男前だな?」


 すれ違う仲間たちが、口々に俺の肩を叩きながら声をかけてくる。

 宴会を楽しみにしているのだろう、ざわざわと空気が浮足立っている。

 今日をもって退団する、俺をのぞいては……。



 とりあえず、気が進まなくとも式典には出席しなければならない。

 騎士団長の命令だ。いくら秋の騎士は嫌だと言っても、それは俺の個人の問題であって四季の騎士に穴が開いていては騎士団の士気かかわる。


(これが最後の務めだ。『一番槍の銀閃(ぎんせん)』とうたわれた俺だが『秋の騎士』として去ることになるとは……)


 秋の騎士は、黄金色(こがねいろ)にも近い黄色の外套(マント)を羽織る。


(銀の髪で銀閃ぎんせんの剣と呼ばれる俺が、金を(まと)うとは夢にも思わなかったな)


 式典用の白い騎士服の上に、黄色のマントを身に着けると俺は、なんとも居心地が悪い気がした。


(最後まで騎士として死ぬつもりだった俺が、本当に生きていていいのだろうか? このまま、騎士以外の道でやっていけるのだろうか……?)


 帰る家などない俺は、騎士団近くの小さな家を借りただけで、まだ次の仕事は見つかっていない。

 足の治療を受けながら、ゆっくり仕事を探そうと思っている。

 仲間と時々飲みに行く程度しか金は使ってなかったため、それなりに蓄えはあった。


(何を感傷的になっているんだ。俺の足はもどらないし、騎士団からも去る。この事実は変わらない。なるようにしかならないだろうが!)


 俺は、自分の頬を強く叩くと戦場へ赴くように式典の壇上に歩みを進めた。



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