遠雷
中学生の2人のお話です。
「雨だね、一緒に帰ろう」
彼女はそういって帰り道に僕を連れ出す。
小学校からの腐れ縁で、特別仲がいいというわけでもないけれどこうして雨の日彼女と帰るのは、退屈は感じない。
通り一遍の授業、そこそこキツい部活、友人関係、そんなありきたりな中学生活を送ってるぼくには、雨の日彼女と帰ることが唯一の僕らしいと思えるものなのだ。
「それにしても急に降り始めたね、置き傘使う羽目になったよ私」
「光ってはなかったけど、雷なってたしな。
あと置き傘はこういう時に使うものだから、文句はおかしい」
「いちいちそんなこと気にしてんの?
雷のことといい器狭いんじゃない?」
全くもって失礼なやつだが、この小競り合いのような会話が心地いい。
そして、この会話がもう少し続けばといつのまにか差ができた歩幅を彼女に合わせる僕はやはり器が小さいのかもしれない。
「もう梅雨だねぇ、夏の前に一回雨挟むあたり神様はセンスないね」
「まあけどよ、梅雨もどんどん短くなってきたし、神様もそろそろ自分のセンスが恥ずかしくなってんじゃない?」
「神様の黒歴史だ」
「黒歴史だな」
こんなしょうもない話をしているとふと彼女が言った
「やっぱ、黒歴史といえば恋だよね」
「いきなりどうしたんだ」
「いやね、やっぱり私も花の女子中学生なわけでこのジメジメした季節に、ジメジメ恋愛をしているのだよ」
驚いた、決してそんなふうには見えなかったがやはり彼女も女の子なのだろう。
「そうなのか、意外だな」
「ふふふ、まあね。
まあでも、恋をしてみるとこのジメジメした季節も悪くないわけさ」
「天がなくと私もなくみたいなね笑」
彼女の調子を見てると天も神様もやはり梅雨なんて無くしそうだ。
そんなことを思いつつ、聞いてみることにした
「ちなみに誰なの?」
「誰だと思う?」
「ウザぁ」
想像以上にこの女との恋バナは精神力が要りそうだ
「じゃあさ、そいつのどんなとこが好きなの?」
「うーん、まあ好きだし顔とかそう言うのも好きだよ?
まあでも、あれだね。
なんか、話聞いてくれたり色々話してくれたりするのが嬉しいなぁ、もっと知りたいなぁとかなっちゃうところがあるんだよねぇ」
なるほど、想像以上にゾッコンらしい。
話を聞く限り、クラスのイケメン森田くんとかその辺が好きなのだろう。まあ彼はいい人だが、こいつにも意外と面食いなところがあるのだなぁとどこか寂しいような気持ちが湧き上がる。
「だいぶ好きそうだな、そんないいやつがいるなんて知らなかったぞ」
「ま、少年にはわからないさ」
なぜか少しイラッとした、まあ恋は人を変えるのだろう。
しかし僕をガキ扱いしたのは度し難いというかそんな感じなので、少しこづいてみる
「そんな本命のやつがいるのに、僕と帰っていいのかよ。
勘違いされるかもよ?」
若干の間をおいて彼女は言う
「それに関してはなんの問題もないね、だって君だもの。
勘違いのしようがないよ」
その言葉は思った以上に深く僕にささった。
雨の日だけとはいえ、一緒に帰っていても僕はみんなからも彼女から何も思われないような奴なのか。
男としてみられるほどのやつではないのかと。
「そっか〜」
うまく言葉が紡げない。
なるほどそう言うことか。
つまり僕はこいつを少しいいななんて思っていたのかもしれない。
気がおけないこいつとの会話が楽しいのではなく、こいつだったから楽しかったのだ。
我ながら遅いなぁ気づくのがと後悔していると
「傷ついてんの?」
彼女がなぜか少し不安そうにそう言う。
最後のプライドだ、ここは一つ強がってやろう
「あぁうん。結構ね」
そういうと彼女は、なぜか頬を緩ませて走りこっちを見て
「傷ついてやんの!
ウチこっちだから!
また明日ね!
明日も雨らしいから!!!」
6月のやや不快な温度の雨の中彼女だけはきらめいてそう言った
そんな彼女をみて呆気に取られながら、この時期らしい雷鳴を僕は聞いた。
光は見えなかったからいつかずっと前に落ちていたことを悟った。
読んでくださってありがとうございます。
この短編は遠雷という単語からイメージを膨らませて書いたものです。
初めてなので、1500字ほどとまだまだ短いものですがこれからも同様の形式でどんどん長くできたらと考えています。
もしよかったらまた見にきてくださると嬉しいです。
改めて読んでくださってありがとうございます。




