確実に僕のルームメイトは寝ている最中に異世界転移して冒険している
息抜き
僕とルームメイトの友人は学校の寮で暮らしている関係で、同じ部屋で寝ている。
だから、互いの寝顔なんて見慣れたものなんだけど。
「むにゃ……や、やったぁ……聖剣だぁ……」
こんな寝言を言っている友人は初めてだ。
これだけなら明日揶揄う材料ができるだけなんだけど。
「…………ベッドに剣が生えてきた」
なんか友人のベッドに剣がゴロンと生えてきた。
なんぞこれ。
「アイテムボックス…………使わない物詰めて……」
しかも追加で瓶に入った液体やら食べ物やらがゴロゴロ生えてきた。
ははーん、さてはコイツ、アレだな?
「こいつ、寝ている間に異世界転移してるな? しかも意識だけ」
で、アイテムボックスの先がこの部屋って事。
なるほどなるほど。
「…………いやどういうこと!? えっ、これマジ!? ちょっ、起きろって!!」
急いで友人を揺すって起こそうとするけれど、友人は起きない。
このままじゃコイツの異世界の私物でいつかこの部屋が埋まる。
ついでに剣のせいで銃刀法違反で捕まる。
「うぅん…………ポーション……」
これどうしようか。そう思った矢先だった。
友人の手、にしてはヤケに無骨な鎧を身に着けた手が虚空に開いた穴から現れた。
しめた、この手を掴んで起こしてやれば!!
「おい、起きろ!! 何一人で異世界行ってんだ!! 羨ましいぞ!!」
あ、いかん。本音が出た。
僕は咄嗟にベッドに散乱する瓶を一つ掴んで引っ込もうとする手を掴んだ。
すると、僕の体は虚空に開いた穴に吸い込まれていった。
「へ?」
──気が付けば森の中に居た。
目の前には、ヤケに無骨な鎧を身に纏った友人が。
「うわぁ!? な、なんでお前がアイテムボックスから出てくるんだ!?」
「え? あ、いや、お前のベッドの周りがアイテムだらけで、なんか手が伸びてきたからそれを掴んだら……」
「えぇ…………?」
いや、僕が言いたいよその言葉。
「あーもう……明日学校だし早く帰ろうぜ。アイテムボックスとやらで」
「いや、俺のアイテムボックスって生き物は入れられないぞ?」
「へ?」
「え?」
「え?」
──こうして、僕達の長い異世界生活は始まった。
早くお家に帰りたいけど、帰った時のベッド周りの事と学校への説明が憂鬱だなぁ……