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椿と山茶花

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

幻想奇譚でもいずれ書きたいこの話。


付き合っている女は何時も何処かぼんやりした、空想家だった。薄暗く、冷たい石造りの地下迷宮に降りた時に発した『古代エジプト』という単語は今でも鮮明に覚えている。

そんな彼女と喫茶店で食事をする事になった。此処の喫茶店の売りは庭先にあり、植えられた花々が燦燦と顔を上げていた。木の壁を彩る、赤い点々。美的感覚に疎い俺でも、忘れられぬ光景だった。

「私の家の近くに薔薇の鉢植えがあるのよ。それでね、凄いのが絶対に全ては散らないのよ。必ず何処か一輪は咲いていて、ゆっくり、ゆっくり花弁を落とすの。そうして全て無くなる時に、また新たな蕾が花開くの。世継ぎ見たいでしょう?」

彼女はローズティーを嗜みながら、何時もの夢見る声でそう言った。

「此処にあるのは、今も尚散らない花々だ」

「そうね。『不思議の国のアリス』」

また不可思議な単語をころりと一つ転がして、ぼんやりと庭先を見詰めた。

聖書の次に読まれているという童話。知っているのは空色のエプロンドレスを来た少女と、時計兎、それからにやにや笑う猫、斬首を宣言する赤の女王。専ら登場人物しか浮かばない。

怪訝な表情を見越してか、彼女は緩やかな笑みを一つ零す。

「不思議の国のアリスにね、薔薇が登場する挿絵があるのよ。丁度、こんな感じ。沢山の薔薇が此方を向いているの。此処にあるのは椿だけどね」

庭先を眺める。ころり、ころりと、床に頭部を落とすその様は間違いなく椿だった。

そんな会話があった数日後、彼女からの世間話でこんなチャットがあった。

――この間の喫茶店と同じような光景を、たまたま帰り道に見たの。ほら、椿。

添えられていた写真には、この間と似たような光景。葉で覆われた壁にフリルの様な花弁が幾重にも重なっている。床下に散らばるのは、その花弁のレース達。

それを見て、俺はただ一つこう返した。

――それ、山茶花。似ているけども、こっちの方が薔薇っぽいな。

――あら、違いはなぁに?

そう返す彼女の顔はこの間と同じように綻んでいる事だろう。

椿と山茶花の違いは散り方です。

頭ごとぽとりといくのが椿、レース散らすのが山茶花です。


そういえば、幻想奇譚でも椿の話を書いたことを思い出しました。

また書きたいです。


庭先に灯る幾重もの光が綺麗なこの季節です。

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