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泰山に北辰尊星の桜吹雪を【解題】




 ふははははあぁー、と事務所で高笑いをするのは、百瀬探偵結社の〈魔女〉である、百瀬珠総長だ。

 珠総長はご機嫌そうに、自分の椅子に座っている。

 腕を組みながら、足を机の上に載せて、

「ふふーん。我が輩、プレコグ能力者だから、なにかが起こってそれがお金に変換できるの、わかっていたんじゃもんねー!」

 と、高笑いをやめない。

 幼児体型でエスニックな服を着こなしている女性、百瀬探偵結社の総長である百瀬珠総長は、今回も他方からお金が入ってくるのでウハウハだ。

〈プレコグ〉とは、予知能力の一種のことである。

 お金に関してにしか使わないようだけど、百瀬珠総長が、そのプレコグという超能力を有しているのは事実だ。裏の政府公認のESP能力者が、百瀬珠総長であり、〈魔女〉と呼ばれる所以でもある。


 事務机で表計算ソフトをカチカチ打っていた事務員の枢木くるるちゃんが僕に、

「うちも参加したかったわぁー、授業参観!」

 と、ふてくされながら言う。

「猫魔お兄ちゃんの講義、格好良かったんやろなぁ」

「いや、いつもの猫魔だったよ」

「もう! いつも山茶花は猫魔お兄ちゃんに嫉妬ばかりしてるんやからぁ。仲良くせなあかんよぉ」


 みんなに遅れて事務所の奥の自室からあくびをしてやってくるのは、破魔矢式猫魔だ。

「……おはよう」

「ローテンションじゃのぅ、〈迷い猫〉よ!」

「やめてくださいよ珠総長。その言い方はないよ。まあ、おれが迷い猫なのは本当だけどさ」


 僕はため息を吐く。

「朝からみんな、通常運転だなぁ」

 電話が鳴って、枢木くるるちゃんが受話器を取る。

 通話が終わり受話器を置くくるるちゃんがみんなに言う。

「事件やよ! また〈怪盗・野中もやい〉から予告状が届いたってぇ。予告の日付は今日の夜十一時。商店街の深津宝石店なんやそうやわぁ」

 ケラケラ笑う猫魔は、背伸びをする。

「またあいつか、怪盗・野中もやい。今日こそおれが捕まえてやる!」

 と、そこに。

「ちょっと待ちなさいよ、〈探偵〉! あたしを置いていくつもりじゃないでしょうねッ!」

 小鳥遊ふぐり登場である。


 北極星の神の次は怪盗騒ぎか。

 やれやれ。

 僕もストレッチを始める。

 今日も忙しくなりそうだ。

 この探偵稼業が、ね。

 それとも。

 猫魔が引用したように、『マクベス』の「人生は歩き回る影法師、あわれな役者だ、舞台の上でおおげさにみえをきっても出場が終われば消えてしまう。白痴のしゃべる物語だ、わめき立て響きと怒りはすさまじいが、意味はなに一つありはしない」っていうのが本当なのか?

 僕らはあわれな役者で、そこに意味はなに一つないのか。

 わからないな。

 それでも僕はただ、影法師となって人生を歩き回るだけだ。

 取って喰われるなんて、そんな運命に従順でなんて、僕はいられないからね。

 これまでも、そしてこれからも。





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