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衆生済土の欠けたる望月【第十六話】




 それにしてもあんたの集めた情報。

 空回りの空振りだったってわけでもなさそうね、山茶花。

 だけど、かなり錯綜してるみたいね。

 整理して、一本の線に還元しましょうか。

 あんたのためってわけじゃないけど、こんがらがってると支障を来しそうだから。

 祇園御霊会の成功のためってだけでなく、あんたの阿呆な思考がこんがらがってたら、解決できるものも情報の錯綜で邪魔されちゃって、解決できないことが起こるかもしれない。

 支障というか、あたしたちの邪魔にならないようにしてほしいってわけ。

 わかった?

 この唐変木。


 絶望に絶望してる暇なんて、あたしたちにはないのよ。

 数ヶ月を無駄に過ごして任務失敗したら、未来はないわよ。

 明日も青空を見たいでしょ、星空だって見たいでしょ?

 そのために、情報を整理するわよ。

 この国が滅びるかどうかが決まるパーティ。

 滅亡へと繋がる瀬戸際のパーティが始まる、その前に、ね。




 軍事研究のため、祇園サマ、すなわち牛頭天王の〈ご神体〉である〈玉〉の、疫病神としての機能が現在、利用されているわ。

 病気を起こす生物兵器のプロトタイプを、学園都市に住む研究者たちが祇園の〈玉〉を依り代にして、呪術的に利用している、ということね。

 その呪術作用によって瘴気の磁場が生まれ、交通事故が多発したり、ここ震源で地震が起きている。

〈玉〉を利用しているうちはいいけど、政府はこの実験の予算の打ち切りを決定した。

 実験のサンプルは採れたから、〈玉〉の呪術作用に耐えきれず学園都市が壊れたら、学園都市を封鎖、隔離して蓋を閉めて終了、と政府は考えている。

 政府のお偉いさんにとっては国家鎮護が重要で、自分らは採ったサンプルを元にした〈呪術〉で極楽浄土への道を開き、ここ、常陸国の学園都市を八大地獄にも似た〈穢土〉とし、犠牲になってもらおうとしている。

 MC西口門が言う、権力と既得権益が生んだ〈堕落〉と〈腐敗〉というものの帰結が、これにあたるわ。


 御座みざに鎮座する〈あの方〉の取り巻き、つまり政府の連中は、テロリスト・孤島の組織にとっては大抵〈国賊〉扱いなの。

 孤島の組織にとっては、だけどね。

 だから、ご神体である〈玉〉を破壊すること、つまりその調伏を反転することによって、今の政府をひっくり返すつもりなのね。

 日本という国が気に入らない外国の連中や、さっき話した生物兵器の研究をしていて海外にいた連中は、孤島のシンパ、つまり協力者、内通者になっているの。

 孤島は国賊を倒す契機が欲しいし、海外のシンパは日本が潰れて欲しいし、出戻りの研究者たちは現政府が潰れて欲しい。

 この三者の考えは全く違うことを意味するわ。

 でも、繋がりがある。

 その上、自分らのために実行するミッションは同じ。

 それは三ツ矢八坂神社の祇園祭を壊し〈祇園御霊会〉を失敗させることと、ご神体である〈玉〉の破壊。

 隔離政策の無効化。

 日本という国家全体の破壊。

 破壊後にやってくるのは〈選ばれた民のみが入れる王国〉ってわけ。

 祇園祭には、一番力を持つご神体だからこそ、破壊するには祇園祭のときじゃないとならない。

 孤島が言ったという『疫病神である八坂の牛頭天王。地震によって眠りから覚めた牛頭天王がその疫病を起こし病原体をばらまくなら、地震で避難してる学園都市の、〈この国屈指の頭脳たち〉の上にばらまく、というのはどうでしょうか』ってのは、最大限の〈皮肉をこめた言葉〉ね。


 国内外の軍事部隊は、百瀬探偵結社の東京支部にいる舞鶴めるとと、百瀬珠総長が指揮して、殲滅をはかっているわ。

 祭りが制圧されることはないし、もちろん一般のひとたちは知らない。

 奥の院は相当、その手の〈異能力者〉でもなけりゃ近づけないようになってる。

 十年前の〈厄災〉で、将門の力にやられたからね。

 と、すると、術者である人間がやってくるわ。

 孤島自身がけりをつけにくる可能性が大きいわね。


 そういうことで、一番輝いているときの〈玉〉が潰されたら疫病が爆発的にこの国を覆うわ。

 そうなったらジ・エンド。

 いいかしら?

 あたしたちは、このミッションをクリアするためにここにいるの。

 このふぐりちゃんでも冷や汗をかくこの事件、どうにかするわよ。

 わかった?

 この阿呆雑用係?

 でもね、大切なことなので二回言うけど、このふぐりちゃんの手にかかれば、お茶の子さいさい!!






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